ジャッキー・チェンと勝負する・追撃戦(31)
2010年の「ベスト・キッド」の続編である「ベスト・キッド レジェンズ」(Karate Kid : Legends) 原題も邦題も「レジェンド(Legend)」ではなく「レジェンズ(Legends)」と複数形な理由は後述しよう。
それにしても、前作「ベスト・キッド」を本欄で取り上げたのが第7回だから、もう12年前(作品そのものは2010年だから16年前) 月日の経つのは速いもんですな。当時どんなことを書いたのかもすっかり忘れたので、読み返す必要があったくらい【こちら参照】

いまさらだけど、この前作(2010年版)自体が1984年製作の「ベスト・キッド」のリメイクなのだから、じつに息の長いコンテンツではある。
ただ、そもそも前回の2010年版はオリジナルの1984年版とはかなり設定が変えてあった。舞台がカリフォルニアから中国に変えてあったし、空手がカンフーに変わっている。大筋のストーリーは同じでも、それでリメイクといっていいのかというほど大胆な改変だろう。
とはいえ、ストーリーの背骨である「ヘタレの少年が鍛えられて強くなる」がブレていないからいいのか。この少年ジャンプ系のシンプルな背骨が貫かれているのが成功の秘訣だったのは間違いない。だから1984年版はその後に3本の続編映画とテレビ市リースまで作られたのだし、2010年版もそこそこ成功したわけだ。
で、そこからまた15年もの月日を経て、またまたこのストーリーを復活させようというんだから、これまた大胆というか安易というか(笑)
さすがにそこにひと工夫必要と思ったのか、それが冒頭で書いた「複数形」の答えだ。
基本的な構造は2010年版の焼き直し。ただし舞台は中国からニューヨークへ変更され、ジャッキー演じるハン師匠は前作に引き続いて冒頭から登場する。いっぽうで主人公たる少年リー・フォン(ベン・ウォン)は最初からある程度以上のカンフーを身につけており、その身辺のドラマに、たとえば武道をすることに反対する母親とかを配してある。それでも、ストーリーの芯は前作までと同じなだけに、先の展開が容易に読めてしまうのは、リメイクや続編の宿命。
そこで「ひと工夫」が発動する。
フォン少年が武道大会に取り組む決意を決めると、後押しするジャッキーのハン師匠はいきなりもう一人のコーチを招聘する。それがダニエル・ラルーソ。そう、1984年版の主人公なのだ。そしてそのダニエルを演じるのは、もちろんオリジナル版と同じラルフ・マッチオ。
つまり、いままで2010年版の続編と思っていた「ベスト・キッド レジェンズ」が、じつは1984年版とその続編シリーズの続きでもあったことが突然判明するのだ。
いささか強引ながら、これはなかなかの妙手ではある。
いささか強引で、少々ツッコミどころもあるものの、スンナリとふたつのストーリーが統合されて、編中のセリフを借りれば「ふたつの枝が、ひとつの幹になっている」のだ。
こうなると、リメイクであった2010年版が、もとの1984年版にいくつかの変更を加えていたことすらも活かされているわけで、いやはや上手いことやったもんだ。結果オーライだけな気もするが。

そんな映画の中で、ジャッキー・チェンの役割はいかに?
じつは、本欄で前作(2010年版)を取り上げたときに、私はそこに不満を記している。
「ジャッキーに師匠役は似合わない」
当時のジャッキーはまだ若く、伝説の師匠役にはまだ早い気がしたのだ。というのも、そこまでのジャッキーはどんな映画でもほとんどの役は、弟子やそれに相当する役回り、映画のストーリーの中で成長してゆくのが持ち味だったからだ。
そんなジャッキーが「師匠」だって? そりゃあ似合わないだろ。
だから当時は、この映画でのジャッキーは魅力を発揮できていない。だから「ジャッキーが出ている映画だけどジャッキー映画ではない」と思っていたのだ。
2010年版から15年、私が見てから12年が経った今回はどうだったか?
今回のジャッキーは、見事に「伝説の師匠」で「レジェンド」だった。ジャッキーはこの作品までの時間を無駄に生きてはいなかった。きちんと積み上げ、成長してきた。そして、その間のジャッキーを見てきた私も、師匠役のジャッキーをすんなり受け入れられた。
ということで、今回の「ベスト・キッド レジェンズ」は、ジャッキーが出ていて、きちんとジャッキー・チェンを見せている、ちゃんとした「ジャッキー映画」だった。
なんか、ちょっと安心したよ。
でも、正直いって、ジャッキーには師匠役に安住してほしくない。ジャッキーという多面体のひとつの面としてはアリだろうが、全体としての多角形ジャッキーの形は、これじゃない。かといって、いまさら若き弟子訳ばかりというわけにもいくまい。
21世紀も4分のⅠが過ぎた今、ジャッキーの現在地はどこなのだろう。
すでに日本で公開されたこの後の2作品、そこでのジャッキーは、どんな形を見せてくれるのか? 人生の楽しみがひとつできたよ(笑)
ジャッキー・チェンと勝負する 目次
