ジャッキー・チェンと勝負する・追撃戦(32)
「パンダプラン」(中国語題「熊猫计划」英語題「Panda Plan」)は2024年10月に中国などで公開され、アメリカはじめほとんどの国でも2025年中には公開されていたのだが、日本では大きく遅れて2026年1月になってから劇場公開された。
ジャッキー映画の日本公開が、ここ数作は遅れ気味。かつてはドル箱だったジャッキー映画の動員力も商品力も低下傾向にあるのを象徴しているのかもしれない。
ただ、この「パンダプラン」の各国での公開状況を見てみると、ロシアやヨーロッパの各国では、ネット配信のみの公開やDVDスルーでの発売もあるようなので、小なりとはいえ劇場公開→DVD発売というプロセスを堅持できている日本は、まだマシなほうかもしれない。これからもこの針路を維持してほしいというのは、年寄りの繰り言なのかな。

さて肝心の映画のほうだが、このジャケットデザインを見ればおわかりのとおり、ひさしぶりでいやに明るいコメディ・アクションだ。
ジャッキー本人が齢を取ったせいか、ここ数作は明朗さが減ってきているような気がしてた。もちろんジャッキー映画でコメディ色ゼロなんてのはそうはないんだが、それでも本欄でここ数作みたのはいずれもここまでコメディ志向ではなかった。うーん、「カンフー・ヨガ」とか「ナイト・オブ・シャドー」あたり以来かな。
上掲のデザインでは、かわいらしいパンダが「主役」の位置にあるかのようにめだっている。これ、ジャッキー映画ではけっこうめずらしいかも。
ふだんならば、もちろんジャッキー・チェンが一枚看板の主演俳優としてドーンと真ん中で目立つものなのだけど。まぁそうはいっても、今回のストーリー上からは妥当な選択か。
世界的大スターであるジャッキー・チェンが子パンダの名付け親になるというイベントで巨大動物園を訪問。その時も時、アラブの大富豪に子パンダ強奪を依頼された傭兵部隊が強襲してくる。ジャッキーは飼育係の女性と協力して、子パンダを魔の手から守ろうと奮戦する。
というストーリーなので、当然ながらCG製の子パンダが目立つ仕組みになっているから、まぁやむを得ないだろう。もちろん、ジャッキーは全編出ずっぱりで奮戦してるんだが。
ただこのパンダ、CGなのはいたしかたないが、少々遊びが過ぎる。さすがにお金をかけたCGだけあって、ヤスモノ映画のモンスターのような平板かつ動かないものとはグレードが違うが、それが嬉しかったのか、パンダにピクサーのアニメ映画のキャラクター的な、擬人的表情を持たせ過ぎたのだ。この判断はどうだったのか?
全編CGのアニメ映画とか、ディズニー作品ならともかく、これはいちおう実写のアクション映画じゃないか。なのに、パンダに人間のキャラ並みの表情変化をさせてしまったので、そこだけが浮いてしまっている。この子パンダのイメージが、アクションのリアリティを損ねていると受け取るのは、ヒネたジャッキー・マニアだけなのかな。
まぁ、実写アクション映画と書いたが、基調はファミリー向け映画。お子さま連れでどうぞ。だからシビアな危機も少ないし、グロもエロもなし。もともとジャッキー映画には、そうしたテイストは少ないんだけどね。だから、正直このCGパンダちゃんにも、さほどの違和感はないかもしれん。
これがファミリー向け映画であることの証拠は、物語の最後にいたるまで、銃弾が飛び交うような、けっこうハードなアクションが展開するわりには、一人の死者も出ないのがなによりだ。かなりの憎まれ役のはずの傭兵のボスも、ヒドイ目には遭うものの死にはしない。だから最後まで、お子さまでも笑って見ていられる。これはこれで、アリだな。

それとも関連するのが、ジャッキーの今回の役。
あらすじにもあるように、ジャッキー・チェンが今回扮するのは、ジャッキー・チェン。といっても、本人の特別出演ではない。ジャッキー・チェンという名の世界的人気スターに、ジャッキーが扮するのだ。当然ながら、それはリアルのジャッキーではない。あくまでフィクションとしてのジャッキーなのだ。そこはしっかりクリアされている。
とはいえ、ここに登場する映画版ジャッキーには、実際のジャッキーを巧みにカリカチュアライズしたジャッキーだ。むしろ「ライド・オン」でジャッキーが扮した老スタントマンのほうが、リアル・ジャッキーに近いだろう。
敵である傭兵隊員たちにも、いやその大ボスすらも、じつはジャッキー・チェンの大ファンだったりする。世界的スーパースターなんだから、そんなのは当然。だから重武装した傭兵たちも、ジャッキーを銃口で制することはせず、敢えて拳を交えてジャッキー・チェンに勝とうとしたりする。
それに対するジャッキーが、「おれは映画スターであって、武道家じゃないんだよ」などと口走るのがいい。これまで再三書いてきたように、実際のジャッキー・チェンは武道家ではない。ブルース・リーはリアルな格闘家であり、自ら考案した武術である截拳道(ジークンドー)の主宰者だったが、ジャッキーのベースは武術ではなく、子どもの頃から学んでいたのは京劇で、実践の武術ではなく映画のアクションとしてのクンフーのマスターなのである。
そのへんを活かした設定なのは、なかなかツボを心得ているといえよう。
ちなみに、ジャッキーがジャッキー・チェンを演じるた例としては過去に「アラン・スミシー・フィルム」と「カンフー・キッド」くらいか。そしてこの両作品で登場したジャッキー・チェンは、出番も少なく、ほぼ特別出演あつかいだった。
その意味では、ジャッキーが全編主人公のジャッキー・チェンを演じるこの「パンダプラン」は貴重な作品といってもいい……のかな?
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