夏の夜空に、何かを探していたあの日 ~ 「A Day in the Life」ザ・ビートルズ
夏の夜。
昼間の熱気が少しずつほどけ、湿り気を含んだぬるい風が首筋を通り過ぎる頃になると、なぜか昔の事を思い出してしまいます。
幼い頃、夏休みに祖父母の家へ泊まりに行った夜のことを。
庭先に置いた小さなバケツ。その中で燃え尽きていく花火。最後まで消えることを拒むように、かすかな光を放ち続ける線香花火。
そして、火が落ちたあとに訪れる静けさ。
ふと顔を上げると、そこには昼間には決して見ることのできない、深く暗い空が広がっていました。
街の明かりから離れた場所で見る星は、まるで空の奥からこぼれ落ちてきたかのようでした。
そのとき、一つの光が目に入りました。
星とは違う。飛行機にしては妙に静かで、ゆっくりと、どこか不思議な動きをしている。
「あれは何だろう?」
子どもの僕は、胸を高鳴らせながら空を見つめていました。
もちろん、それが本当に未知の存在だったのかは分かりません。今なら飛行機や人工衛星だったのかもしれないと思います。
でも、そんな答えは、さほど重要ではなく、大切だったのは、夜空を見上げていた、その数十秒間。
いつもの庭が、いつもの夜が、突然、宇宙への入口に変わったような感覚でした。
大人になった今、我々は多くのことを知っています。
空を飛ぶ仕組みも、星の正体も、遠い宇宙のことさえ少しずつ分かるようになりました。
けれど、分かることが増えるほど、昔のように「これは何だろう」と純粋に驚く瞬間は少なくなっている気がします。
スマホの画面から目を離し、少しだけ立ち止まる。
首が痛くなるほど夜空を見上げ、その先に広がる果てしない宇宙を想像する。
その瞬間、我々は忘れていた子どもの頃の感覚を、ほんの少し取り戻すのかもしれません。
今年も夏がやってきました。
冷房の効いた部屋を少しだけ抜け出して、夜空を見上げてみませんか。
もしかすると、あの日、祖父母の庭で見つけた光のように、名前のつけられない何かが、静かにあなたの前を横切るかもしれません。
そしてその瞬間だけ、我々はもう一度、世界がまだ不思議に満ちていた頃へ帰ることができるんです。
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