「内部統制があるから外部監査は不要」なのかーー信頼は検証可能性から生まれる【第2回】
前回は、地方自治法がなぜ外部監査制度を設けたのか、その背景や制度趣旨について整理しました。
今回は、小平市議会総務委員会において審査された「外部監査制度の検討を求める請願」について整理します。
請願が求めたのは「導入」ではなく「検討」
今回の請願は、「直ちに制度を導入せよ」というものではありませんでした。
あくまで、
外部監査制度について調査研究すること
他自治体事例を踏まえ検討すること
を求めたものです。
つまり、「導入ありき」の請願ですらありません。
それにもかかわらず、議会多数により否決されました。
賛成したのは、一人会派と維新の会、共産党。
反対したのは、自民党政和会、公明党、フォーラム小平、生活者ネットワークでした。
理事者側の答弁
審査の中で、理事者側は概ね次のような趣旨の答弁を行いました。
内部統制の整備を進めている
自浄作用の確立こそ重要
事務執行の適正性は確保できる
よって、外部監査は必要ない
しかし、伊藤はこの説明に強い違和感を覚えました。
なぜなら、「内部統制」と「外部監査」は、本来、対立する概念ではないからです。
地方自治法そのものが外部監査を前提としている
地方自治法では、
都道府県
政令指定都市
中核市
に対し、包括外部監査を義務付けています。
つまり国自身が、
「内部統制や監査委員制度だけではなく、第三者による外部監査も必要である」
という前提で制度設計しているのです。
もし今回の理事者側の
「内部統制があるから外部監査は不要」
という主張をそのまま認めるのであれば、地方自治法が包括外部監査を義務付けている制度趣旨そのものを否定することにもなりかねません。
民間企業では普通に並立している
これは民間企業を考えると分かりやすいと思います。
民間企業でも、
内部統制強化
内部監査
外部監査
は普通に並立しています。
しかも、そもそもの目的が違います。
内部監査は、主に経営改善や内部統制のために行われるものです。
つまり、経営層や組織内部のための監査です。
一方、外部監査は、株主や金融機関、取引先などのステークホルダーに対し、「第三者としての客観性」を担保する役割を持っています。
つまり、
「内部統制を強化しているから外部監査は不要」
という関係では本来ありません。
むしろ、内部統制・内部監査・外部監査が、それぞれ異なる役割を担いながら並立することで、組織全体の信頼性を高めているのです。
自治体も同じです。
監査委員制度や内部統制を否定する必要はありません。
しかし、それとは別に、市民に対する第三者的な検証可能性を制度として持つかどうか、という論点が存在します。
「検討」にすら反対した議会
今回、伊藤が強い違和感を覚えたのはここです。
請願が求めていたのは、「導入」ではありません。
あくまで、
他自治体事例を調査し
制度として研究し
小平市において必要性があるか検討すること
でした。
それにもかかわらず、議会多数は「検討」そのものに反対しました。
しかも、小平市ではこれまでにも、
総務委員会による調査研究
先進地視察
前市長による公約化
など、外部監査制度の必要性についてとりあげられてきた経緯があります。
また、複数の議員が外部監査制度の必要性について言及してきました。
会議録を検索すれば今回反対した会派の議員も複数含まれていることが分かります。
つまり、突然出てきた話ですらありません。
それでもなお、「検討」にすら反対した。
これは非常に重い判断だと思います。
「内部で適正」と言うだけで良いのか
外部監査制度というと、
「行政不信」
「不正追及」
というイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、本来の趣旨はそこではありません。
むしろ、
「問題がないのであれば、第三者監査によってそれが確認されること自体が、市民からの信頼向上につながる」
という考え方です。
行政が「適正」と説明し、議会多数がそれを追認する。
そこに第三者的な検証を加えることすら否定されるのであれば、市民から見た検証可能性は極めて限定的なものになります。
内部統制は重要です。
自浄作用も必要です。
しかし、それだけで十分だと言い切れるほど、人間も組織も万能ではありません。
だからこそ、民間でも外部監査が存在する。
そして地方自治法もまた、外部監査制度を制度として用意しているのだと思います。
次回
「内部統制で十分」
「適正性は確保されている」
そうした理事者答弁が行われる一方で、教育委員会では“内部だけでは説明しきれない問題”が次々と浮上しています。
次回、教育委員会に関する請願審査を通じて見えてきた「第三者検証の必要性」について整理します。
