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高市訪米の舞台裏と官邸の不協和音

はじめに

月刊誌「選択」4月号に掲載された記事「高市が退陣を口にした日」が波紋を広げている。同記事の生々しい描写は、政権内部の深刻な事態を的確に描写しているように見受けられる。前回の投稿を補足する意味でも、この記事から透けて見える現政権の危うさについて改めて考察したい。

● 自衛隊派遣を巡る「幻の約束」

今回の日米首脳会談において、高市首相はトランプ大統領の要請に応じる形で、自衛隊の派遣を確約する腹積もりだったようだ。

しかし、この動きを土壇場で制止したのが、かつて安倍政権を支え、現在は官邸参与を務める今井尚哉氏だったという。「あんた、何を考えているんだ!」「これは国難になるぞ」――。今井氏の激しい叱責に近い諫言(かんげん)により、高市首相は直前で翻意を余儀なくされたとされる。怒鳴り合いに近い状況が目に浮かぶようだ。

だが、ワシントンからの帰国後も首相の怒りは収まらなかった。3月24日夜、官邸幹部を集めた席で高市首相は激昂し、「あいつに羽交締めにされた」として今井参与の解任を強く主張したという。

この経緯を前提とすれば、訪米時の不可解な振る舞いの合点が行く。今井氏に止められ、ホルムズ海峡への自衛隊派遣を確約できなくなった高市首相は、ワシントンへ向かう政府専用機の中で、いかにトランプ氏を懐柔するか苦悶したのではないか。会談冒頭で飛び出した「世界に平和と繁栄をもたらすのはドナルドだけ」という、これ以上ない「媚び」を含んだ発言は、その苦肉の策であったと解釈すれば非常に整合性が取れるのである。そして、トランプ大統領への徹底した媚びた態度の連発も同様である。

● 浮き彫りになった三つの問題

今回の報道が事実であれば、そこには深刻な問題が少なくとも三点浮き彫りになる。

第一に、法理的な認識などの不足。 高市首相は事後の説明で「日本の法律でできること、できないことを詳細にトランプ大統領に説明した」と述べている。しかし、実際には戦地への自衛隊派遣という憲法・国内法上の極めて繊細な是非、さらには(戦時下の)自衛隊の派遣が今後の日本にどれだけ甚大な影響を及ぼすかもを、首相自身が十分に理解していなかった疑いが生じた。

第二に、官邸の統制不全。 官邸内の機微に触れるやり取りがこれほど生々しく外部に漏れること自体、官邸の規律の緩みを露呈している。あるいは、高市首相が官邸スタッフを掌握できていない証左とも言えよう。本来、首相の側近として官邸を仕切るべき木原稔官房長官(旧茂木派)が、側近というよりも「監視役」として振る舞っている現状が、この不協和音を助長しているのではないか。

第三に、党内の「反高市」の加速。 こうした情報が流布すること自体、党内での求心力低下を物語っている。高市首相が国会質疑で見せる、都合の悪い質問者に対して睨みつけたり、顎肘で質問者を小馬鹿にするような高圧的な態度からは、非公式な場での振る舞いや党内での態度をも推認させる。

さらに深読みすれば、今回の報道は今井参与側によるリークの可能性もある。つまり、参与更迭の動きを察知し、あえてこの機微な情報をリークすることで、「今井氏を切れば、自衛隊派遣を約束しようとした首相の暴走が事実として確定する」という状況を作り出すことで、高市首相による更迭を封じ込めたのではないだろうか。

● 迷走する経済安全保障への対応

以前から指摘していたナフサ不足への対応も、ようやく動きを見せた。3月31日、高市首相は経産相に対し、医療製品を含めた重要物資の安定確保を指示した。

しかし、これはイスラエルと米国による対イラン攻撃に起因する構造的な問題であり、国内で号令をかけるだけでは解決しない。首相自らがイラン、イスラエルを含む各国首脳と直接協議し、外交的な道筋をつけた上で閣僚に指示を下すのが本筋だろう。場当たり的な調達先の変更の強行は、コストの増大は避けられず、いずれ国民負担へと跳ね返ることになる。さらにこのような場当たり的な対応は、中長期的に継続できるものではない。

高市首相、医療製品の安定確保指示 代替調達急ぐ 中東情勢会議」
(https://news.yahoo.co.jp/articles/80230f20ac727db7b5825045514bd90dbaa1ace3/images/000)

● 結び

「選択」の報道のように高市首相が実際に辞意を口にしたかどうかは定かではない。しかし、官邸内に大きな亀裂が生じていることは間違いなさそうだ。

今後、党内の反高市の動きにどう対処するのか。トランプ氏からの「訪米成功の対価」として自衛隊派遣や多額の戦費負担を迫られるのか。イラン攻撃による日本への様々な悪影響をどのように凌ぐのか。引き続き高市政権の動向を注視していきたい。

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