『“いらない”と思っていたのは、僕のほうだった― 青海苔が教えてくれた未来への光』
捨てていたのは、青海苔じゃなくてーー
“未来をつなぐ命”だったのかもしれない。
小さな一言で変わった、僕の価値観の話です。
漁の過程で混じった小さなエビや貝殻片が残っていると、「見た目が悪い」と市場では敬遠される。
自然のままの証なのに、“売れない”という理由で、僕はそれらを迷いなくいつも廃棄してきた。
ある冬の日、手伝いに来ていた20代の女性が、ごみ入れに入れていた青海苔を見て言った。
「これ、もらえませんか?」
「こんなの、いいの?」
彼女は笑った。
「……香りがすごくて。買いたいくらいです」
驚いた。僕が“いらない”と思っていたものに、誰かが“ほしい”と言ってくれた。
その瞬間、心が冷たい海から、初めて引き上げられたようだった。僕が「汚れ」だと決めつけた小さな命は、彼女には“海の息づかい”として輝いていたのだ。
それから、行動を変えた。
都内で開いた漁師飯イベントで、B級品の青海苔を使った料理を出してみた。
ふりかけるだけで、潮の香りがふわりと立ちのぼり、会場のあちこちから「いい香り」「おいしい」と声が上がった。
使いきれなかった青海苔は、北海道・帯広の【おびひろ子ども食堂】にクリスマスの贈り物として送った。

後日、サイトに「本物の青海苔を分けていただきました。」と紹介され、こんな一文が添えられていた。
『すごくいい香りがします』
捨てていたのは、青海苔じゃなかった。
誰かの笑顔や、未来へつながる小さな希望を、僕は見落としていたのだと思う。「いらない」と決めていたのは、僕のほうだった。
あの日、“ほしい”と言ってくれた彼女の一言が、僕の価値観を変えた。もう一度、目をこらす。捨ててきたものの中に、まだ光は残っているかもしれないから。
きっと、あなたのすぐそばにも。“いらない”と切り捨てられたものの中に、未来を照らす光が眠っている。その光を拾うことこそ、僕たちが未来へ贈れる、小さな航海図なのだ。
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