「また、いこうね」
8月。夏だ。
と言っても、ここ最近はずーっと曇り空か雨ばかりで、気温もパッとしない。
「あちー、あちー」と文句を言いたくなるような夏が、少しだけ恋しい。
そんなどんよりとした曇り空でも、僕たちが住んでいる街にお祭りの季節がやってきた。
初日に上がる花火を見ようと、家族三人で向かう。
霧雨がまだ降っていて、気温も低い。
だから今年は車の中から見ることにした。
打ち上げ花火の時刻が近づいてくると、集まった人たちも空を見上げながらそわそわし出す。
「ねー、まだー?」と、娘は暇を持て余す。
どーん。
少し離れた場所から上がる花火。
始まった。
どーん。
バラバラバラ。
どーん。
パチパチパチ。
小高い丘の上から眺める花火は、真下から見るより好きかも。
「赤だね!」「黄色だね!」と、娘を抱っこしながら三人で空を眺めた。
「にじいろー!」と娘も楽しそう。
すると、ドーン!と今までで一番大きな音。
特大の打ち上げ花火はきれいな模様を描き、バラバラバラッと散っていく。
すると、抱っこしている娘の手に、ぎゅっと力が入った。
「……こわい」
娘は大きな音が苦手なのかもしれない。
「ねぇ、かえる」
「うん、帰ろうか」
まだ序盤だったけれど、花火の音から逃げるようにして車に乗り込む。
お祭りを楽しむ人たちを横目に、車を走らせる。
いつもならもうベッドの中にいる時間。
車を走らせながら、バックミラー越しに娘を見る。
娘は少しだけ眠そうな声で言った。
「はなび、たのしかったね」
「また、いこうね」

