批判的精神を失ったファクトチェックが、国民に牙をむくとき

世の中には「ファクトチェック」という、いかにも客観的で正義感に溢れた言葉がある。しかし、今日本で起きているその実態を眺めてみると、そこには「中立」や「公正」といった理念は微塵も感じられない。むしろ、特定の意図に基づいた「レッテル貼り」の道具に成り下がっているのではないか。そんな強い疑念を抱かざるを得ない。
今回の騒動の発端は、日本ファクトチェックセンター(JFC)が、原口一博議員らの発言に対して行った取材にある。議論の的となったのは「陰謀論」という言葉の語源。CIAが意図的に広めたものか、あるいは古くからあったものか。正直に申し上げて、そんなことは「どうでもいい話」だ。一大学教授や一国会議員が語る言葉の重箱の隅をつつくことに、果たしてどれほどの公共性があるというのだろう。
ファクトチェック機関が真に目を向けるべきは、個人の言説ではない。もっと国民の生活に影響力のある「大手メディア」や「国家」という、最大かつ最強の権力機構が発信する情報の真偽であるはずだ。
例えば、厚生労働省がコロナ禍において露呈させた二つの大きな「偽情報」がある。
権力の監視を忘れた「ファクトチェック」の空虚
一つは、ワクチンの感染予防効果に関するデータの不適切な扱いだ。かつて厚労省は「ワクチンを打った人は感染せず、打たない人は感染する」というデータを毎週のように公表していた。しかし実態は、接種歴が不明な感染者をすべて「未接種」にカウントし、未接種者の感染率を意図的に高く見せていたに過ぎない。外部からの指摘を受け、データ修正を余儀なくされた途端、接種者と未接種者の感染率の差はほぼ消失した。その直後、厚労省はこのデータの公表自体をやめてしまった。こんな欺瞞を、なぜJFCはチェックしないのか。
もう一つは、心筋炎のリスクに関するデータの操作だ。「ワクチンによる心筋炎よりも、コロナ感染による心筋炎の方がリスクが高い」と政府は喧伝した。だがその計算式を覗けば、分母に「感染者全体」ではなく、重症化しやすい「入院患者」のみを据えるという奇妙なトリックが使われていた。分母を不当に小さくすれば、確率は跳ね上がる。こうした国家による情報の加工こそ、国民の生命に直結する深刻なリスクではないか。
政府が繰り返し発表するこうした偽装データを見て「やはりワクチンは効果絶大なのだな」と本来とは違う判断を下した結果、不幸にも副反応を得てしまったり、もしくは死亡してしまった方は何百万人にも上るはずである。
こうした国家によるデータ偽装、あえて言うなら「国家による詐欺行為」。これは国民の健康や幸福にとって桁違いに危険度が高い。そもそも、国家や大手メディアは正確な情報を国民に流し、国民はそれを咀嚼し各自で判断する、これがあるべき姿である。国家やメディアが流す情報がそもそも虚偽だったら国民は正しい判断を下すことが出来ないのだ。それをチェックする、これこそがファクトチェックの存在意義のはずである
国家も大手メディアもチェックしない?
しかし、JFCの指針には驚くべき一文がある。「報道機関の報道内容は、原則としてファクトチェックの対象外とする」と書いてあるのだ。
権力を監視すべきメディアが、自らとその周辺を聖域化する。この件は以前からネットではかなり批判されていたことだが、改めて言語道断である。
挙句の果てには、編集長自らが自身の動画で「ファクトチェックの目標はワクチンの接種率が落ちるのを防ぐこと」と、無批判に政府のワクチン施策を肯定・推進する意図を暴露しているのだ。

これはまさに「プロパガンダ」そのものである。
そこには「ワクチンが本当に安全なのか」という批判的な精神は欠落しており、あるのは「政府の方針をいかに浸透させるか」という一方的な推進姿勢だけだ。
批判的思考(クリティカル・シンキング)を失い、権威の代弁者に成り果てた組織に、もはや「日本」を冠する資格はない。結論ありきの調査を「ファクト」と呼ぶその傲慢さに、私たちはもっと自覚的であるべきだ。
我々はどうすればいいのか?
今回のファクトチェック騒動が浮き彫りにしたのは、情報の真実性ではなく、この国の「誠実さの欠如」そのものである。自分たちが不都合になればデータを隠し、都合が良ければ数字を弄る。そんな相手に対して「どちらが語源か」などという言葉遊びを仕掛ける暇があるのなら、今この瞬間も積み上がっている「不都合な真実」にこそ、その鋭い目を向けるべきではないか。
結論ありきの言説を「ファクトチェック」と呼ぶその傲慢さを、私は決して許容しない。この世界が、少しでも誠実な場所であるために、私たちは問い続けなければならないのだ。
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夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)