あえて歩く|たった40分の徒歩で見つけた、スマホじゃ得られない心の栄養と、忘れられない風景│不便さ#2
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—— 遠回りの中にしかない風景がある
いつもは駅までバス。
あるいは自転車。
けれどその日
私はあえて
「歩いてみよう」と思った。
目的地は隣町の図書館。
片道40分ほどかかる距離。
ふだんなら迷わず移動手段を選ぶところを、
何も使わず、ただ歩いてみることにした。
朝の空気はまだ冷たく、最初の10分ほどは
「なんでこんなことを始めたんだろう」
とすこし後悔した。
けれど、歩くたびに足元からじんわりと体が温まり
景色も少しずつ変わっていくのが楽しくなってきた。
曲がったことのない小道に入ってみると
小さな公園に出た。
ベンチに腰かけるおじいさんが
パンをちぎってハトにあげている。
春の花が静かに咲いている。
通りすぎる風の音が
ちゃんと聞こえる。
いつも通るメイン通りでは決して
目にしない風景だった。
歩いていると
自分の「身体」がちゃんと
移動している実感がある。
電車やバスに乗ってしまうと、移動中は時間を
潰すだけの“待ち時間”になってしまうけれど
歩いている間は時間そのものが自分の一部になるような感覚があった。
遠回りで、時間がかかって疲れる。
でも、そこには不思議な“余白”がある。
スマホも開かず
通知も鳴らず
ただ自分のペースで
景色と気持ちの変化を味わう時間。
図書館に着いたときには
足が少し重くなっていたけれど
心はむしろ軽くなっていた。
便利な移動手段を使うのが悪いわけではない。
ただ、「歩く」というもっとも原始的な手段が
こんなにも心をほぐしてくれるとは思わなかった。
目的地に着くまでの“過程”にこそ
見落としていた風景がある。
時には、時間をかけることそのものが
人生の贅沢なのかもしれない。
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