陳柏源の「反攻大陸」と「中国統一戦線記録片」について:認知戦と私たち
「反攻大陸」は蒋介石が率いる国民党軍が、1949年に台湾に入って以降、暫く掲げたスローガン。直訳は大陸に反撃せよ、言い換えると、大陸を取り戻して、共産主義を覆し国を元の状態に戻そう(光復大陸、反共復国)。「反攻大陸去」はその過程で作られた、国民意識高揚歌。
陳柏源(1999-)の「反攻大陸」は、この「反攻大陸去」を下敷きにして、歌詞を新たにして、ラップの曲としたもの。今から1年前の2024年12月19日のYoutubeに公開された。
陳柏源 反攻大陸 official video 2024年12月19日
実は前後して陳柏源は、記録映画2本をYoutuberの八炯と共同で製作して公開した(2024年12月)。その内容は、大陸(中国)が台湾に対して行っている認知戦(cognitive warfare)の実態:つまり大陸側に人々を引き寄せようと、インフルエンサー(网红)を抱き込む情報戦を中国が行っていることを赤裸々に明らかにするものだった。この問題は知られていたのだが、この記録映画の公開は、台湾の中で大陸の情報戦に対する警戒感を高めるのに、影響力があったと考えられる。
認知戦は、ネットなど情報媒体を通じた情報操作によって、世論などを誘導することで、政策判断の変更を促すものと仮に定義しておこう。情報操作の方法には、フェイクニュース(偽情報)を流すとか、インフルエンサーを通じて世論を誘導するといったことが考えられている。特徴の一つは、戦時ではなく、平時にも行われる戦術であって、私たちは現在こうした認知戦の渦中にあると考えられる。そして、テレビやSNSの情報の中には、こうした認知戦で買収されたり、あるいは感化を受けた情報もまじっているとみるべきで、情報を安易に信じない姿勢が必要だろう。
中国統戦記録片上集
中国統線記録片下集
なお陳(1999-)は、台中市生まれ。中学生の時に河南省の少林寺で武術を学び、高校のときにアメリカに留学。少林寺のときにもアメリカ留学時にもいじめや差別を経験したという。その後に、福建省にある華僑大学で、大陸の教育を受けている。さらに両岸、つまり大陸と台湾との間の交流事業にも参加した経験もある。だが、様々な経験をした結果として陳は覚醒し、大陸と争う姿勢を示している。
なお。「反攻大陸」の映像に『青鳥行動』の幟(のぼり)の文字が映り込んでいる。『青鳥行動』は大陸の攻勢に対する民衆運動のこと。台湾有事は軍事的な面から言えばまだ起きていないが、台湾の側からすれば文化的な面などではすでに起きている。それを促すものとして大陸側の認知戦がある。それに抵抗する民衆運動が青鳥行動。その青鳥行動の集会の場で、「反攻大陸」の歌が披露されたということが映像からわかることである。
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