第三話 紅葉色の丸いお家 #悲しきエイリアンの最期
紅葉色のボールだと思ったのです、最初は。
でも、近づくにつれて、そのボールは思ったよりずっと大きいことがわかってきました。そして、最終的に思いました。これは家だな、と。
だって、その大きなボールから私と同じくらいの年齢の男性が出てきましたから。
今朝はとっても天気が良かったので、私は近くの森に散策に来ていたのです。ボール状の家から出てきた男性は木の枝を使ってロープを張り、洗濯物を干し始めました。下着まで干し始めたので私は目を背けましたが確信しました。この男性は絶対にここで生活している、と。
でも、困りました。私は大学院で植物を研究しています。気になったことはとことん確認しないと気が済まない性格です。正直に言うと、男性の顔が私の推しのアイドルにちょっと似ていました。気づけば私は男性から目が離せなくなり、一歩も動けなくなっていました。
「そこにいるのは誰?」
男性に見つかってしまったようです。私は小さな木の後ろに隠れて男性を見ていたつもりでしたが、男性からは丸見えだったのかもしれません。怪しい人間ではないことだけは伝えたいと思いました。
「ごめんなさい、覗くつもりはありませんでした。私はこの近所に住んでいる山本みどりと言います。森の中をよく散歩しているのですが、珍しい家があったので、つい見に来てしまいました」
「そんな、一度にたくさん話されても」
「あ、ごめんなさい!私ったらいつもそうなんです。一方的にべらべらと話してしまって、気になることがあると思ったこと全部言っちゃうし、相手の都合とかお構いなしで。あ、ほらまた!本当にごめんなさい」
「『ごめんなさい』はもういいよ。あなたは何をする人?」
「私?私は研究をする人です。あなたの話し方、ちょっと変わってますね。うふふ」
「そう、かな?」
男性はそれっきり話さなくなってしまいました。怒らせてしまったかもしれません。話し方が変わってるとか言ってしまったから。ああ、どうしましょう。この男性のことをもっと知りたいのに。
「あの、ごめんなさい、気分を悪くさせてしまいましたか?」
「……いや、気分は悪くない。『ごめんなさい』はもう言わなくていいよ」
「あ、ごめんなさい!あ、いえ、もう言いません!あの、あなたの名前をまだ聞いてませんでした。教えてもらえませんか?」
「僕の名前?僕の名前はマモル」
「マモルさん。いい名前ですね。どんな漢字を書くのですか?」
「感じ?……まぁ、普通かな」
「普通?よくある漢字だと、攻めと守りの守って字でしょうか?」
「あ……うん。それでいいよ」
「ふふふ、何だか今決めたみたい。守さんは面白い人ですね」
「そう、なの?」
「ええ。私、友達になって欲しいです」
「友達?……ま、いいけど」
「やった!嬉しい。ありがとうございます。私、研究職で内向的だから友達少ないんです。出会いも全然ないし。一緒にご飯を食べてくれる人も限られてるから寂しかったんですよねー」
「……みどりさん、やっぱり一度にたくさん話すね」
「あー!ごめんなさい!気をつけます!だから嫌わないでください」
「嫌わないよ。少しずつ話してくれると、助かる」
「はい!少しずつ話すようにします!また、来てもいいですか?」
「……別に、いいけど」
「よかった!じゃまた来ますね。さようなら」
紅葉色の丸いお家に住んでいる守さん。なんだかとっても素敵じゃないですか?そう思うの、私だけでしょうか?
いや、いいんです、いいんです、わかってもらえなくても。私だけでいいんです。
ああ、この感じ、本当に久しぶり。早くまた、守さんに会いに行きたい。
(1471文字)
※シロクマ文芸部の先々週のお題に参加させていただきました🙇♂️
こちら何とかシリーズものを書こうとしてまして、今回で三話目になります。
もう少し先が見えたらTalesにもアップできたらなと思っております。
小牧さん、
遅刻ばっかりでごめんなさい。次の次の次くらいで追いつこうと思います。
よろしくお願いいたします。
