宇宙一エモいバックドロップ #毎週ショートショートnote
ここは地球から遠く離れた星の「旅立ちの崖」と呼ばれる場所。
若い男女が別れを惜しんでいる。
「どうしても行くの?」
「みんな行ってるしね。僕だけ行かないとは言えないだろう?」
「言えばいいじゃない!」
女が叫ぶように言うと、男は黙った。
女は少し落ち着きを取り戻して聞いた。
「地球ってどんなところなの?」
「とてもいいところみたいだよ。空気はまだきれいだし、食べ物もおいしい。レジャーもたくさんあってね、僕はプロレスというのが気に入った」
「何それ」
「身体を鍛え上げた者同士がね、互いの技を受け合うんだ。痛いのに、あえて技を受けるんだよ。凄くない?」
「全っ然わかんない。あなたは平気なの?私と離れ離れになっても」
「平気ならこんな話しないさ」
「置いていかないで。ひとりで生きてても意味がないの、私」
「僕もだ。一緒に行こう」
男は女の手を取って崖っぷちまで誘導すると、女の背後にまわり、崖下に向かって綺麗な放物線を描くバックドロップを放った。
(410文字)
※こちらの企画に参加させていただきました
