その怨み、晴らします……第11話
憂う少女と視える猫と時々殺人事件④
「先週の午後十時から明け方の五時までの間に、高苗市内にて強い霊波が観測されました。そして一昨日の午後十時から三時までの間にも、波長は違いますが大戸岳にて強い霊波が観測されています。一か月の間にこれだけの強力な霊波が二度も観測されるのは、およそ五十年ぶり。我々の懸念する『来るべき災禍』が近いのかもしれません。特にこの高苗市内は、霊的な磁場のバランスが著しくおかしい。誰かが何かを企んでいるのか、何が起きようとしているのかは、数値だけでは判断が付きません。忙しい中、誠に申し訳ありませんが、現地で調査をしていただきたく、幡随涼香(ばんずいりょうか)君、あなたをお呼びした次第です」
とあるビルの一角。
功佑たちが疲れ果てて眠っている最中、そのビルの一室で、一組の男女の密会が行われていた。恰幅の良い初老の男性と、三十路を迎えた辺りの芯の強そうな女性は、何やら神妙な面持ち。
「理事長、心得ております。何なりとお申し付けください」
女はその男に深く頭を下げた。
「しかし、それ以外にも気になる事がありましてね……」
男は軽く咳ばらいをした後に、話を続けた。
「幡随君、君も知ってるでしょう? 最近、巷を騒がせている殺人事件」
「はい。バラバラに切断された辺り、悪意を感じます。」
「そう、まさに悪意。哀しい哉、被害者の中に我々に属する人物も数人含まれておりましてね……」
「初耳です。どなたが?」
女は早急に答えを求めた。
「それはまだ君にもお伝え出来ません。ただ言えるのは、比較的に能力の高い、重要なメンバーの方々であったということです。その方々を失い、我々も大いにダメージを負っている、それが本音です」
「申し訳ありません。出過ぎた発言でした」
女は今一度頭を下げると、一歩後ろに下がった。
「いえいえ、いずれ君にもお伝えする日が来るでしょう。暫しお待ちを」
男はそう言うと、目の前のデスクに置いていたファイルケースを彼女に手渡した。
「君の赴任先です。その場所は先日、強い霊波を観測した場所です。くれぐれもご注意を。あと、そこには私の旧友、田所という者が居ります。何かあれば彼に相談すると良いでしょう」
「ありがとうございます」
「話はこれで以上です。下がりなさい」
「承知しました」
女は深々と頭を下げると、足早にその部屋を出ていった。
そして明かりの消えた廊下を、ヒールの音を立てながらエレベーターまで急いだ。
女はエレベーターに乗り込むと、。男から渡されたファイルを開き、新しい自分の赴任先を確認する。
そこにはこう記されていた。
『FMたかなえ出版事業部 エッジ』
そして女は、数日後に始まるであろう新しい生活に、人知れずため息をついた。
