ヨロン島ホステス日記〈20〉百合ケ浜
吹き返しは何もかもさらって行った。マニュの軽自動車が3回転してキビ畑に墜落したのも凄かったし、何軒かのトタン屋根がまるごと剥がれて違う家の屋根に突き刺さったりした。停電は3日間続き、しまいには水道まで止まった。トーコが雨水で米を研ごうとしていたので気の毒になって買い置きのミネラルウォーターをあげた。
ナナが言っていた白骨の謎はマニュが教えてくれた。この島には風葬の習慣があり、今も島のあちこちに御先祖が祀られている。ナナが見たのはそういう風葬地のひとつだろう。今では一度埋葬する習わしに変わったが、数年後に掘り起こし「洗骨」という儀式をする。親族で骨を洗い、綺麗に白骨化していれば成仏したものと考え「ありがとう、立派だねぇ」と褒めるのだ。
やっと台風が去って、島はあちこちやられていた。やたら寂れた感じなのも台風による傷みや塩害のせいもあるのだろう。沖縄が返還される前はヨロンが日本最南端の島だった。船でもプロペラ機でも次から次へと人が押し寄せ、銀座通りも歩くのが大変ぐらい…
「あの銀座通り?」。「あの銀座通りよ。他にどの銀座通りがある?」とマニュは聞くが、全国的に銀座通りはたくさんある。そしてヨロンの銀座通りはかなり大人しめなのだ。だが、観光ブームの頃は「竹下通り」とか「東京都与論島」などと呼ばれ、宿も今の数倍あったらしい。
イメージできないな…。いまではたいがいの砂浜がプライベートビーチだ。ラフレシアの客も観光客が多いのかと思ったら、たいがい社用か地元の人だ。
台風明けの初日、飲みに来たのは作業着のまんまの電力会社の人たっった。
この人たちのおかげで電気が復旧した、と思うとアルマゲドンのヒーローたちに見えてくる。明日の昼には帰るというので、お礼に百合ケ浜を案内することにした。百合ケ浜は干潮の時だけ姿を現す白い砂の島だ。
翌朝、大金久海岸に集合したアルマゲドンとラフレシアチームは、ポセイどんが牽引するバナナボートに乗って沖合約1キロの百合ケ浜をめざした。ポセイどんは昼の間はジェットスキーに乗ってマリン会社でバイトしている。すぐに客をナンパする…とマダムに苦情がくるがこっちだって似たようなものだ。芸能人でいえば1番ジャイアンに似ているポセイどんでもよく見えるのだろうか。リゾラバは幻覚パラダイスだなぁ。
マニュにフィンを貰って以来、このあたりにはよく潜りにきている。黄色が奴を刺激するのか、毎回モンガラカワハギに襲われる。結構歯が鋭いので嫌なのだが、なぜか必ずやモンガラと出会うのだ。モンガラとの攻防に疲れてぼんやり浮いていると、ふと、このフィンはマニュの奥さんのものだったのかな、と思う。私も相当鈍いな。それにしても何で手放す気になっなんだろう。そして、なんで私に。
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