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ヨロン島ホステス日記〈7〉歓迎会

そこからは阿鼻叫喚地獄だ。「サソリ?タランチュラ?」と喚く女、殺虫剤を探す女、ふんずけようとする女…。その中にヤケに冷静な娘がいた。なんと、スッと逃げ惑う大蜘蛛を手のひらに乗せ、寮の前の畑に逃したのだ。あたかも昆虫界の女神のようだった。なんだかいいものを見たような気がした。怖かったけど。


みんなは海から帰ってきたのかシャワーを浴び、それぞれ休憩していた。私も夜からは仕事なので少し微睡み、夢ともつかない夢を見ていた。すると突然バゴーンとドアが開き「蜘蛛で忘れてたけど、歓迎会しなくちゃね!」と
知らない人に言われた。てか、今はまだみんな知らない人だ。私のことも誰も知らない。

「今日はラッキーだよ!なんとマックがありま〜す」「イェ〜イ!」すごい盛り上がりの中登場したのはぐったりとしたハンバーガーとしなしなのポテト。「エッちゃんが沖縄で買ってきてくれたの」。どうやら冷め切ったハンバーガーでもファーストフードが一切ないこの島では珍重されるらしく、客のおみやげランキング一位らしい。数日前まで都内にいた私としては納得いかずもそもそ食べたが、思えば退院前にスッパイマンを摂取しただけだったので意外とはかどった。

「お風呂入りなよ。私は海行ってきたから大丈夫」とナナと名乗った子が言う。海行ってきたから大丈夫…そんなことはないだろうとツッコまれていたが、蜘蛛のせいで大汗をかいたのでお言葉に甘えることにした。

風呂の入り口には私の常識の2.5倍くらいのカマキリががんばっている。シャワーはなくホース。風呂桶はガタガタと不安定で底の方からガシャガシャ騒がしい音がする。大急ぎでシャワー(ホース)を済ませ、ナナにあのガシャガシャは何?と聞くと「オ・カ・ガ・ニ」とのことだった。何やねん、この島。

           (つづく)

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