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ヨロン島ホステス日記〈2〉ラフレシア

空港の椅子ではよく眠れず、白目を剥いたまま朝が来た。体中が痛いし熱っぽい。とりあえずポカリを飲んでいると同じく空港徹夜組のおっちゃんが「今日、船出るよ。港までタクシー相乗りしない?」と誘ってくれた。船?船で与論に行けるということすら知らなかったが、これが噂の渡りに船だ。どでかいスーツケースをひっつかみ、ガラガラ言わせながらタクシー乗り場に急ぐ。

おっちゃんがスーツケースをタクシーに乗せようとしてくれたが、あまりの重さに果ててしまい、代わりに武藤みたいなドライバーが乗せてくれた。おっちゃんが「なんでこんな重いの?」と聞くので「半年分だから」と答える。これからヨロン島で住み込みで働くのだ。電話で聞く限り「何もない島」らしいのでパンツから鍋まで何でも持ってきた。どこで働くの?と聞かれて「ラウンジ・ラフレシア」と答えるとおっちゃんの顔が輝いた。「オレよく行くよ」と言うのでヨロンの人かと思いきやおっちゃんは隣の沖永良部島の人らしい。どう通うの?と聞くと「クルーザー」とのこと。おっと金持ちか?仲間からは「パイプと呼ばれているよ」「バイブ?」、「パイプ!」「なんで⁉︎」「パイプカットしたから‼︎」
というようなしょうもない話をするうちに武藤タクシーは港に着いた。海は控えめに言ってどんぶらこ、という感じで荒れていて船のタラップは上げられる寸前だった。トランクを乗組員に預けパイプのおっちゃんと階段を駆け上る。前後左右に揺れる細い段々を登るのは何かのアトラクションみたいだ。なんだこの大冒険感。最高。

ふと下界を見ると猛スピードでタクシーが向かってくる。桟橋でスピンターンをキメると車内からヨタヨタの金持ちジジイが降りてきて何か叫んでいた。最後まで開いている船員用の入り口を指差し「そこからオレを乗せろ!」と喚いている。しかし、波で激しく上下している入り口にジジイがジャンピングできるわけがない。「乗せろ〜!金ならあるんだ〜!乗せないなら弁償…ベンショ…オロロロロ〜!」突然ジジイが盛大に撒き餌した。うわっ!と後退りする船員、意気消沈するジジイ。ダップンダップン揺れる船を間近に見るうちに気持ちが悪くなったのだろう。上から見ていた私は大爆笑だったが、パイプのおっちゃんは「撒き餌は海に撒かないと勿体ないよねぇ」と真顔で言っていた。

そして物語は冒頭に戻る。

           (つづく)

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