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本当にあなたが撮りたい写真に「認識AF」は必要なのか? ── ピントという名の「意志」の話

スペック競争が隠してしまう、写真の本質

現代のミラーレス一眼カメラの進化は目覚ましい。各メーカーが競うように搭載し、アップデートを重ねているのが「被写体認識AF(オートフォーカス)」だ。人物の瞳、動物、鳥、乗り物……カメラを向ければ、AIが瞬時に被写体を検知し、恐ろしい精度で追従し続ける。

確かに、動き回る子どもやペット、あるいは一瞬のチャンスを争うスポーツや報道の世界において、この機能は革命的であり、非常に有効な道具だ。フレーミングに集中するだけでピントをカメラが担保してくれる恩恵は計り知れない。

しかし最近、カメラのレビューやSNSの口コミを見ていると、少し奇妙な言説に遭遇することが増えた。 「このカメラは認識AFの追従性が他社より劣っているから、使い物にならない」 「被写体認識の枠が外れるから、良いカメラとは言えない」

本当に、そうだろうか? 最新のAIがあなたの代わりに被写体を見つけてくれなければ、私たちはもう、美しい写真を撮ることはできないのだろうか。

AIには見えない、ファインアートの被写体

美しい風景、日常のストリートスナップ、そして独自のクリエイティビティを投影するファインアートフォトグラフ。これらの撮影において、巷で騒がれる「被写体認識AF」は、実はそれほど大きな意味を持たない。

なぜなら、AIが「これは被写体だ」と認識できるのは、あらかじめディープラーニングによって学習された「記号(犬、車、人間など)」に過ぎないからだ。

森の中の闇に光を受けてふわりと浮かび上がる葉。この繊細な光のグラデーションや、特定の葉の一枚だけを際立たせるピンポイントのピント合わせ。

うっそうとした森の奥、わずかに差し込んだ木漏れ日を浴びて輝く葉。 これらは最新のAIカメラを向けても、おそらく「被写体」としては認識されない。カメラにとっては、無数にある草木という「背景」の一部、あるいは単なる「緑の塊」でしかないからだ。

しかし、撮影者であるあなたの目は、その光と影が織りなす静謐なディテールに引き込まれたはずだ。 AIが認識しないもの、名付けられないものの中にこそ、私たちが胸を揺さぶられる美しさが潜んでいる。

ピントとは、偶然の中の「必然」を掬い出す作業

時折、写真をアートとは認めないと言う方の中には「写真なんてその場所に行きさえすれば誰だって同じものが撮れる」と豪語する人もいる。
しかし、実際に写真作家たちが行う「写真を撮る」という行為は、ただその場に居合わせ、カメラ任せにシャッターを切るプロセスとは根本的に異なる。
ただそこに行き、何百枚もカメラ任せでシャッターを切り続け、その中に偶然に写った1枚をピックアップするのではない。
明確な意図を持って、ピントを被写体または空間の一部に固定し、流動する時間という偶然の中から「必然」を掬い出す作業に他ならないからだ。

「深い霧に包まれた橋」や「森の中の道」。どこにピントを合わせ、どこを霧の中に溶け込ませるのか。 主役をどの距離に置き、前後のレイヤー(重なり)をどう表現するのか。 この決定権をカメラのアルゴリズムに明け渡してしまったら、それは「自分が撮った写真」ではなく、「カメラが機械的に記録し選んだ現実の陳列」になってしまう。

認識AFが外れたからといって「使い物にならない」と切り捨てるのは、自らの意志でピントを選ぶ歓びを放棄しているのと同じではないだろうか。フレーミングだけではない。画面のどこにピンポイントでフォーカスを合わせるかを選択するその瞬間にこそ、写真家としての思想が宿るのだ。

「カメラに使われるな、光を掴め」

私たちは今一度、自分が「本当に撮りたい写真」が何なのかを、胸に手を当てて考えてみるべきかもしれない。

もしあなたが、AIに「これが正解です」と提示された被写体をただ記録したいだけなら、最新最強の認識AFを追い求めればよい。
しかし、もしあなたが、誰も気づかない光の明暗や、空間が持つ静謐な空気感、自然が織りなす抽象的な造形美を描きたいのなら──必要なのは最新のAIではない。あなた自身の「凝視する目」と「合わせたい場所にピントを置く意志」だ。


カメラのスペック表に踊らされ、機能の優劣で表現の限界を決めてしまうのはあまりにももったいない。 四角いフレームのどこに、なぜ、そのピントを置くのか。 その泥臭くも極めてクリエイティブな対話を楽しめる人にとって、カメラはいつだって、最高の相棒であり続けてくれるはずだ。



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