玉野市予算を読む②新庁舎は「防災拠点」になるか——“建物”ではなく“止まらない仕組み”を作れるか
令和8年9月、新しい市役所本庁舎が稼働予定です。
市長は「南海トラフ地震などに備え、市民の生活を守り、迅速な支援や復旧活動を行える防災拠点」と位置づけています。
ただ、ここで一番大事なのは、庁舎を建てること自体ではありません。
本当の勝負は、災害時に「市役所が止まらない」仕組みを、どこまで具体化できるかです。
⸻
1)“防災拠点”の中身は、3つの「止まらない」
防災拠点と聞くと、立派な災害対策室や耐震性を思い浮かべます。もちろん大切です。
でも、災害時の現場で問われるのは、次の3つです。
① 情報が止まらない
• 緊急地震速報、津波情報、避難情報を確実に市民へ届けられるか
• 現場(消防・水道・福祉・避難所)からの情報が庁内で一本化されるか
• 通信が途切れたときの“代替”があるか(多重化)
今回の予算では、全国瞬時警報システム受信機や防災行政無線親局の更新が示されています。
ここは単に更新で終わらず、**「どの手段が落ちても、別ルートで届く」**設計になっているかが重要です。
(防災無線が聞こえにくい地域、屋内、夜間、聴覚に不安がある方…情報弱者への配慮は“追加”ではなく中核です)
② 人と物が止まらない
災害時は「物資があるか」より先に、受け入れて配れるかが問われます。
• 受援(他自治体・自衛隊・支援団体)を受ける動線があるか
• 物資の保管・搬出・配布のオペレーションがあるか
• 職員が参集できない場合の代替体制があるか
庁舎が防災拠点になるなら、**“机の上の計画”ではなく“実働の設計図”**が必要です。
誰が鍵を開け、誰が仕分けし、誰が避難所に届けるのか。そこまで決まって初めて機能します。
③ 市民サービスが止まらない
災害時に市民の生活を左右するのは、医療や避難所だけではありません。
• 罹災証明
• り災廃棄物
• 支援金・減免
• 相談窓口(福祉、住宅、保険)
• 行方不明者対応の連携
ここが詰まると、被災後の生活再建が遅れ、地域の回復力が落ちます。
新庁舎の価値は、災害時に「手続きのために何度も来い」が減り、ワンストップで生活再建へ繋げられるかにあります。
⸻
2)避難所の質をどう上げるか:「スフィア基準」を“数と配置”に落とす
今回、避難所の生活環境確保の考え方として「スフィア基準」が示されています。ここは評価できます。
ただし、実務はここからです。
• 簡易トイレは何基か
• どの避難所に何日分置くのか
• 高齢者、乳幼児、障がいのある方のゾーニングはどうするか
• 備蓄を「置いた」だけでなく、**使える状態(訓練・管理・更新)**にできるか
避難所は、災害のたびに「改善が進む自治体」と「毎回同じ課題が繰り返される自治体」に分かれます。
差を生むのは、備品の購入ではなく運用の習熟です。
避難所整備を
「物品の購入リスト」ではなく、
“避難所を開設して回す手順”として点検したいと思っています。
⸻
3)「書かない窓口」は、便利の前に“非常時対応”が肝
新庁舎移転に合わせた「書かない窓口」。これは平時の市民負担を減らす大事な改革です。
でも深掘りすると、むしろ重要なのは災害時です。
災害時は、
• 通信が不安定
• システムが重い
• 応援職員が来る
• 住民が殺到する
という“普段と真逆の条件”になります。
だからこそ、議会として確認すべきはここです。
✅ もしシステムが落ちたら、手続きは回るか
• 紙に戻す手順は用意されているか
• 最低限の証明発行、相談受付は継続できるか
• バックアップや非常電源は、どの範囲を守る設計か
✅ “書かない”は、相談が薄くならないか
窓口が効率化すると、相談時間が短くなりがちです。
でも困りごとは、紙の記入より先にあります。
• 生活再建
• 住まい
• 福祉
• 子育て
窓口改革は、手続きを早めるだけでなく、相談を通して支援に繋げる仕組みであるべきです。
✅ 取り残されない導線があるか
デジタルの利便性は活かしつつ、
• 高齢の方
• 視覚・聴覚に配慮が必要な方
• 日本語が得意でない方
こうした方が“結果的に後回し”にならない設計が必要です。
⸻
4)効果は“感じた”ではなく“測る”:評価指標を持つ
改革は、実施しただけで達成になりやすい。
だからこそ、私は数字で確認できる指標が必要だと考えます。
たとえば——
• 平均待ち時間(時間帯別)
• 手続きの来庁回数(ワンストップ化の効果)
• 記入項目数の削減
• 受付から完了までの所要時間
• 職員の残業時間・繁忙期の平準化
• 相談案件の支援接続率(適切な部署・制度につながったか)
これが見える化されれば、市民も納得しやすい。
そして、改善も回ります。
⸻
5)議会としての“深掘りチェックリスト”
審議で特に確認したいのは次の点です。
1. 災害時の通信の多重化(無線・スマホ・他手段)
2. 非常電源で守る範囲(庁内のどこが動くのか)
3. 受援計画(外部支援を受けて配る動線)
4. 避難所資機材の数量・配置・維持管理
5. 書かない窓口の障害時手順(落ちたときの運用)
6. 取り残されない窓口導線(対面支援の担保)
7. 改革の評価指標(見える化して改善する仕組み)
⸻
次回予告:給食費無償化は「家計」だけでなく「人口戦略」
明日は給食費無償化。
家計支援としての即効性だけでなく、産後ケアや奨学金制度と合わせて、玉野の人口減少対策としてどう効かせるかまで掘ります。
