男と間違われた日
菊池ひろみ
夜勤明け、一人の男性利用者の隣に座った。
その男性は、隣に座った職員の肩をいつもトントンしてくれる。
それを期待して、私は座った。
トントン、トントン。
「○○さん、いつもありがとうございます!」
「ん?あれ?あんた、女やな?」
「なにー?私が男に見えるんですか!」
「綺麗です―!」
「遅い。遅すぎます。死刑です。」
「嫌やー、死刑は嫌やー。」
「今日、死刑を執行します!」
それを見ていたもう一人の男性利用者が擁護する。
「まぁ、まぁ。冗談なんだから、許してあげなさい。」
「○○さん。男同士で団結するなら、あなたも死刑です!」
「嫌やー。死刑はお許しをー。」
46歳。
ついに性別が変わった。
昔、向こうから歩いてくる人が、女性なのか男性なのか分からないことが
あった。
その時、私はこう思った。
男性が女性に間違われるのは、どこかで笑える。
でも、その逆は、笑えないと。
現実は、思ったより早くきた。
少しショックだった。
夜勤明けに爆笑できたことが、なぜか嬉しかった。
こうやって笑える関係があることが。
でも。
やっぱり男の人に間違われたことは…。
悲しい。
次はどえらい化粧をして出勤してやろうか。
それとも、ロングのカツラを着けて行こうか。
まだ、現役の女でいたいのだ。
できれば、ちゃんと女として。
……せめて、死刑を宣告されないくらいには。
