たった1日で撤回された「20%通航料」 ホルムズ海峡の守護者ビジネスが映すトランプ外交の本質
2026年7月13日、トランプ米大統領は自身のSNSに、ホルムズ海峡を通過するすべての船舶の貨物に対して20%の対価を求めるという構想を書き込みました。世界の石油消費のおよそ2割が通る海の関所に、いきなり値札が貼られたことになります。ところがその翌日の7月14日、トランプ氏は同じSNSで「湾岸諸国との貿易・投資協定と置き換える」と表明し、この構想を撤回しました。発表から撤回まで、わずか1日です。
一見すると、思いつきの政策が世論の批判を浴びて引っ込められただけの、よくある一幕に見えます。しかし、この48時間には、いまの国際秩序を理解するうえで見逃せない論点が3つ詰まっています。第一に、なぜ「海峡に通航料をかける」という発想が、たった1日で崩れたのか。第二に、置き換え先とされた「湾岸諸国との投資協定」とは、実際にはどれほどの実体を持つものなのか。第三に、これは本当に撤回だったのか、それとも請求書の宛先を船主から国家へ書き換えただけなのか。
この記事では、ホルムズ海峡の基礎データから、20%という数字が実際にはいくらを意味したのか、国際法と実務の壁、そして湾岸マネーの実像までを順に追いながら、この2日間が何を残したのかを考えていきます。日本の原油輸入の7割から9割がこの海峡を通る以上、これは遠い中東の話ではなく、私たちの電気代とガソリン代の話でもあります。
1. 何が起きたのか:発表から撤回まで48時間の時系列
1-1. 7月13日、SNSでの「20%償還」宣言
始まりは7月13日(現地時間)のSNS投稿でした。トランプ大統領は、米国が今後「ホルムズ海峡の守護者」として知られることになるとしたうえで、海峡を通過する輸送貨物に対して20%の率で償還を受けると表明しました。安全な航行を提供しているのだから、その対価を受け取るのは当然だという理屈です。
この投稿は、米軍による対イラン海上封鎖の再開宣言とセットで報じられました。つまり単独の経済政策ではなく、進行中の米イラン軍事衝突の一環として打ち出された措置だったわけです。海峡を通る第三国の商船に対して、貨物価値の20%をいわゆる通行料の名目で徴収するという内容として、各国メディアが伝えました。
ここで重要なのは、この宣言が「構想」以上のものではなかったという点です。算定基準が貨物価値なのか数量なのか。支払義務者は船主なのか荷主なのか、それとも旗国なのか。徴収機関は米政府のどの部門なのか。法的根拠はどの国内法または国際法に求めるのか。発効日はいつなのか。これらのどれ一つとして、公表されていませんでした。制度としては空白のまま、数字だけが世界に投げ込まれた形です。
1-2. 7月14日、「湾岸諸国との貿易・投資協定と置き換える」
翌14日、トランプ氏は再びSNSに投稿し、20%の対価について「湾岸諸国との貿易・投資協定と置き換える」と明らかにしました。中東の指導者らと協議して決めたと説明し、「投資は莫大なものになるが、彼らとその将来にとって極めて有益なものになる」と主張しています。新たな投資によって「工場や設備が歴史的な水準で米国に流入する」とも書き込みました。
投稿の後、ホワイトハウスで記者団に対しては「彼らは米国に投資をさらに増やしたいと考えている。この方法なら通航料は不要だ」と語りました。対象国としてサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、バーレーン、クウェートの5カ国を列挙し、「ほかにもある」と述べています。
商船が安全に通航するための料金の相当額を、湾岸諸国に対米投資という形で負担させる。そういう仕組みを考えているとみられます。船から取るのをやめただけで、代金を取るという発想そのものは残っている。ここが、この撤回劇の核心です。
1-3. トランプ氏の発言を精読する
トランプ氏自身の言葉は、この構想の性格をよく表しています。「私は通航料という考え方は好きではない。だが、中国をはじめあらゆる国のために海峡を守っているのに、対価を得られないのは不公平だ」と訴え、「実際には通航料をとるべきではないと思っているので、この考えに賛成だ」と強調しました。
この発言には二つの層があります。表層は「通航料は好きではない」という否定です。しかしその下には「守っているのに対価を得られないのは不公平だ」という主張が、撤回後もそのまま残っています。つまり否定されたのは徴収の「手段」であって、対価を求めるという「目的」ではありません。
さらに注目すべきは、名指しされたのが中国だという点です。ホルムズ海峡を通る原油の最大の受益者のひとつは中国であり、米国自身はシェール革命以降、この海峡への依存度が著しく低い。他人のために危険な海を守らされているという不満は、トランプ政権のエネルギー安全保障観の底流にあるもので、今回の一件で消えたわけではありません。
イランとの戦闘終結に向けた交渉についても、トランプ氏は「私はチャンスを与えた。決着がついたはずだったのに、何かが気に入らず、彼らが先に手を出してきた」と言及し、交渉の停滞はイランに責任があるとの立場を改めて主張しました。

2. そもそもホルムズ海峡とは何か:数字で押さえる急所
この一件の重みを理解するには、ホルムズ海峡がどれほど特殊な場所なのかを、まず数字で押さえておく必要があります。
2-1. 日量2,000万バレル、世界の石油消費の約2割
米エネルギー情報局(EIA)の推計によれば、ホルムズ海峡を通過する石油は日量およそ2,000万バレルから2,020万バレルに達します。内訳としては、原油とコンデンセートが日量約1,470万バレル、石油製品が約610万バレルという推計もあります。
この量が世界全体に占める比率は、次のとおりです。世界の石油消費量の約20%、海上輸送される石油貿易の25%以上、世界の石油輸出の約3割。ここが数日止まるだけで、世界のエネルギー市場は根底から揺さぶられます。
2-2. 最狭部33km、航路帯は片側3km、1日100〜140隻
地理的な条件は、さらに緊張感を高めます。海峡の最も狭い部分の幅は約33km。しかも大型船が実際に航行できる交通分離帯は、北行きと南行きにそれぞれ幅約3kmずつしかありません。合計しても6km程度です。
通航する船舶数は、平時で1日あたりおよそ100隻から140隻。そのうち約6割がタンカーです。世界のエネルギーの2割が、幅3kmのレーンを一列に並んで通っている。これがホルムズ海峡の実像です。
イランは海峡の北岸を占め、ミサイル、機雷、小型高速艇、無人機といった非対称戦力を沿岸に配備しています。海峡を「封鎖」するために海軍力で制圧する必要はなく、数隻のタンカーが被弾すれば、保険が引き受けを拒み、船主が航行を止め、事実上の閉鎖が成立してしまう。この構造的な脆弱性が、通航料構想の背景にもあり、同時にその実効性を否定する要因にもなっています。
2-3. LNGは世界貿易の約4分の1が通過する
液化天然ガス(LNG)についても、世界の貿易量の約4分の1がこの海峡を通過します。カタールはLNGの主要輸出国であり、その積み出し港はすべてペルシャ湾の内側にあります。カタールにとって、ホルムズ海峡が閉じることは、輸出手段が完全に消えることを意味します。
石油であれば、サウジアラビアは紅海側の東西パイプラインで一部を迂回できます。UAEもフジャイラ港への陸上パイプラインを持っています。しかしLNGには、そうした迂回路がありません。だからこそカタールは、この海峡をめぐる緊張に対して、産油国の中でも最も強い当事者性を持ち、仲介役として動くインセンティブを持っています。

2-4. 日本の当事者性:原油輸入の7〜9割がこの海峡を通る
そして日本です。日本の原油輸入に占める中東産の比率は約95%。そのうちホルムズ海峡を経由する分は73.7%という推計があり、内閣官房の資料では日本の原油輸入の約9割がホルムズ海峡を通過するとされています。前提の置き方によって幅がありますが、いずれにせよ日本は、この海峡に極端に依存しているという事実は動きません。
比較のために各国の中東産原油への依存度を並べると、日本が約95%、韓国が約68%、インドが約53%、中国が約15%です。中国の依存度が数字のうえで低く見えるのは、ロシア産やアフリカ産の調達を増やしてきたためですが、それでも輸入原油の4割から5割はホルムズ経由という推計もあります。
ホルムズ海峡を通過する原油の84%、LNGの83%がアジア向けであり、そのうち中国、インド、日本、韓国の4カ国が原油の75%、LNGの59%を受け取っているとされます。つまり、20%の通航料が本当に課されていたなら、その負担を最終的に負ったのは米国でも欧州でもなく、アジアの消費国だったということです。トランプ氏が「中国のために守っている」と言うとき、その隣には必ず日本と韓国とインドが立っています。
なお日本のLNG輸入におけるホルムズ経由の比率は約6%(年間約400万トン)にとどまります。ガスについては豪州や東南アジア、北米への分散が進んでおり、石油とは事情がかなり違うという点は、リスク評価のうえで重要です。

3. 「20%」とは実際どれほどの金額だったのか
抽象的な比率のままでは、この構想の非現実性は見えてきません。実際の金額に置き換えてみます。
3-1. VLCC1隻あたりの試算:貨物価値1.4億ドルの20%
大型原油タンカー(VLCC)は、典型的には1回の航海でおよそ200万バレルの原油を積みます。原油価格を1バレルあたり70ドルと置くと、積荷の価値は次のようになります。
200万バレル × 70ドル = 1億4,000万ドル
この20%は、2,800万ドルです。日本円で約42億円。船を1回通すたびに、42億円を米政府に支払えという計算になります。
参考までに、VLCCの船体そのものの価値は1億3,800万ドル程度とされます。つまり貨物価値の20%は、船1隻を丸ごと買う金額の2割に相当する規模です。船会社の1航海あたりの用船収入は、市況が良いときでも数十万ドルから数百万ドルのオーダーですから、2,800万ドルという数字は、海運のビジネスモデルを一撃で破壊する水準です。
3-2. スエズ運河25万ドル、パナマ運河5万ドルとの落差
既存の「通航料」の水準と比べると、この数字の異常さがはっきりします。
スエズ運河の通航料は、全船種平均で1隻あたり約25万1,000ドル。大型コンテナ船やばら積み船で30万ドルから50万ドル程度です。パナマ運河は全船種平均で約5万4,000ドル、大型コンテナ船で40万ドルから80万ドル、日本の船社の実績で約53万ドルという水準が報じられています。
つまり、世界で最も高額な人工水路の通航料でも、大型船1隻あたり数十万ドルの世界です。ホルムズの20%はその50倍から100倍にあたります。スエズもパナマも、運河を掘り、維持し、閘門を運用するという明確なサービスの対価として料金を取っています。ホルムズ海峡は自然の海峡であり、そこには掘削も閘門もありません。

3-3. 誰が払うのか、誰が徴収するのか、根拠法は何か
金額の非現実性以上に致命的だったのは、制度設計が完全な空白だったことです。
支払うのは船主なのか、貨物の所有者である荷主なのか、それとも積み地の産油国なのか。決済はどの通貨で、どのタイミングで行うのか。徴収するのは米財務省なのか、税関国境警備局なのか、それとも第5艦隊なのか。支払いを拒んだ船はどうするのか。臨検して拿捕するのか。もし拿捕するなら、それは公海上の民間商船に対する武力行使にあたるのではないか。
これらに一つも答えが用意されていない状態で、20%という数字だけが先に出ました。市場と業界は、この空白そのものに反応しました。金額がいくらかという以前に、制度が存在しないものに対しては、誰も価格をつけることができないからです。
4. なぜ1日で撤回されたのか:4つの逆風
4-1. 国際法の壁
最も明快な障害は、国際法でした。
国連海洋法条約(UNCLOS)は、国際航行に使用される海峡について「通過通航権」を定めています。沿岸国は通過通航を妨害してはならず、通過することだけを理由に課金することも認められていません。ホルムズ海峡は、まさにこの条約が想定する典型的な国際海峡です。
国際海事機関(IMO)は今回の構想に対し、国際航行に使用される海峡の通過に手数料を課すことに断固反対するとし、単に海峡を通過するという理由で義務的な通行料を導入する法的根拠はないと公式に表明しました。国連の専門機関から、これほど明確な否定が突きつけられた時点で、制度化の道はほぼ閉じています。
しかも米国は、UNCLOSを批准していません。批准していない条約の恩恵である「航行の自由」を最も声高に主張してきたのが米国であり、その米国が海峡通過に課金するとなれば、自らが70年にわたって守ってきた原則を自ら壊すことになります。中国が南シナ海で同じ論理を使ったらどうするのか。この一点だけで、米国の安全保障当局にとっては受け入れがたい話でした。
4-2. 実務の壁
仮に法的な問題を無視したとしても、実務が回りません。
ホルムズ海峡は幅33km。イラン領海とオマーン領海が接しており、米国の領海はどこにもありません。徴収所を置く場所がないのです。海上で臨検して課金するとなれば、それは事実上の海上封鎖であり、恒常的に100隻を超える船を1隻ずつ止めて課金する体制を、米海軍が担うことになります。第5艦隊にそんな人員も権限もありません。
支払わない船をどうするかという問題も残ります。拿捕すれば、その船の旗国と荷主国を敵に回します。通せば、払った者が損をする制度になり、誰も払わなくなります。徴収の強制力がない課金制度は、制度として存在できません。
海運業界の現場が実際に動かしたのは、通航料への対応ではなく、航路変更の検討、戦争危険区域の指定、用船契約の戦争約款の見直しでした。つまり業界は、20%という数字を「支払うべき料金」としてではなく、「海峡が使えなくなるかもしれないという追加のシグナル」として処理したわけです。
4-3. 市場の壁
市場の反応も、構想を後押しするどころか、真逆に働きました。
7月上旬に米イランの軍事衝突が再燃し、ホルムズ海峡の通航リスクが急騰したことで、原油価格はすでに急伸していました。7月7日以降のタンカー攻撃と米軍の空爆を受けて、海峡はほぼ封鎖状態に近づいたと複数のメディアが報じています。湾岸発着タンカーの運賃は急騰し、戦争危険保険料も大幅に上昇しました。ホルムズ海峡通航時の戦争リスク保険料は、船体価値1億3,800万ドルのVLCCで1回あたり約1,000万ドルという試算まで出ています。船体価値の7%から8%を、1回の通航のために保険会社に払う計算です。
ここに20%の通航料が上乗せされれば、経済的に成立する航海は存在しなくなります。トランプ氏の投稿は、市場に対して「この海峡はさらに使いにくくなる」というメッセージとして受け取られ、原油価格を押し上げました。エネルギー価格の抑制を掲げてきた政権にとって、これは自傷行為です。撤回を急いだ最大の実務的動機は、おそらくここにあります。
4-4. 同盟国の壁
そして、最も痛むのが誰かという問題です。
トランプ氏は「中国をはじめあらゆる国のために海峡を守っている」と述べました。しかし、ホルムズ海峡を通る原油の75%を受け取る4カ国のうち、日本と韓国とインドは、いずれも米国の同盟国またはパートナー国です。20%の通航料は、実質的にはこの3カ国への追加関税として機能します。
すでに日本は5,500億ドル、韓国は3,500億ドルという巨額の対米投資パッケージを、関税交渉の見返りとして受け入れています。その上でエネルギーの通航料まで負担させられるとなれば、同盟のコストは一気に跳ね上がります。撤回の前日から当日にかけて、水面下で何が伝えられたのかは公表されていませんが、同盟国からの強い懸念が届かなかったと考えるほうが不自然でしょう。
5. 置き換えられた「湾岸マネー」の実像
では、通航料の代わりに持ち出された「湾岸諸国との貿易・投資協定」とは、どれほどの実体を持つものなのでしょうか。
5-1. サウジ6,000億ドル、UAE1.4兆ドル、カタール2,435億ドル
トランプ大統領は2025年5月13日から16日にかけて、サウジアラビア、カタール、UAEの3カ国を歴訪しました。このとき発表された数字は、以下のとおりです。
サウジアラビアは、4年間で6,000億ドル規模の戦略経済パートナーシップに調印しました。ムハンマド皇太子は、このうち3,000億ドル相当の商談がフォーラム時点で署名済みであり、第2段階を経て総額を1兆ドル規模まで引き上げたいと述べています。この6,000億ドルには、1,420億ドルの米国製兵器の購入が含まれるとされます。
UAEは、10年間で1.4兆ドルという対米投資の枠組みにコミットしました。トランプ氏の訪問時には、航空・エネルギー・AI分野を中心に2,000億ドルを超える商業契約が発表されています。エティハド航空によるボーイング機28機の購入(145億ドル)、エミレーツ・グローバル・アルミニウムによるオクラホマ州のアルミ精錬所への40億ドル投資などが、その具体例です。
カタールは、総額2,435億ドル超の投資協定を締結し、将来的に1.2兆ドルまで拡大する計画を示しました。その柱は、カタール航空によるボーイング機210機の発注(約960億ドル)です。
一方、今回トランプ氏が名指ししたバーレーンとクウェートについては、2025年5月の歴訪と結びついた大型の対米投資公約は確認できません。両国には第5艦隊の司令部(バーレーン)や米軍の駐留(クウェート)があり、安全保障上の結びつきは強いものの、数千億ドル規模の投資パッケージを掲げた実績はありません。列挙された5カ国のうち2カ国には、置き換えの原資となる公約がそもそも存在しないということです。

5-2. 「コミットメント」と「実際の資金流出」の距離
ここで冷静に見ておくべきは、これらの数字がすべて「コミットメント」であって「執行済みの投資」ではないという点です。
ロイターはサウジの6,000億ドルについて、資金コミットメントによって一連の商業取引の実現に向けた道を開いたと表現しています。約束であって、即時の投資ではないという含意です。シンクタンクのレポートも、これらの金額は「パイプライン上の案件をすべて足し上げた最大ポテンシャル」に近い数字であり、実際の投資額とは乖離があると指摘しています。
実際、UAEの1.4兆ドルは10年間の枠組みであり、投資可能な上限としてのフレームに近い性格を持ちます。カタールの1.2兆ドルは将来の拡大目標であって、プロジェクトリストも執行額も公表されていません。確実に動いているのは、防衛装備の購入契約と航空機の購入契約、そして一部のエネルギー・AI関連の個別案件です。これらは実額として数百億ドル規模であり、公表された「兆ドル」の数字とは1桁から2桁の開きがあります。
5-3. 日本の5,500億ドル、韓国の3,500億ドルという先例
この「公約と実行の距離」を、日本人が最もよく知っているのは、自国の事例だからです。
日米の関税交渉では、自動車などへの関税を15%とする代わりに、日本政府が米国に5,500億ドルを投資するという枠組みで合意しました。ホワイトハウスのファクトシートには、米国の指示の下で日本が5,500億ドルを投資すると記載され、投資先は米国側が選ぶ、利益配分は一定額までを折半し、それを超える分は米国90%、日本10%とするという内容です。
しかし日本政府自身の説明は、まったく違うトーンです。経済再生担当相は、日本が提供するのは出資に加えて融資や融資保証を含む「最大5,500億ドルの政府支援資金」であり、実際の出資は5,500億ドルの1%から2%にとどまる見通しだと明言しています。つまり現金として拠出される新規の対米直接投資は、550億ドルから1,100億ドル程度が上限だという想定です。
そして実際の進捗は、第1弾として360億ドル規模の3案件(テキサス州の石油・ガス、オハイオ州の発電、ジョージア州の重要鉱物)が決まった段階にとどまります。5,500億ドルに対する比率は約6.5%です。
韓国も同様です。当初は1,000億ドル規模の投資計画をまとめていたところ、米側が日本の5,500億ドルを先例として要求を引き上げ、最終的に3,500億ドルで合意しました。そのうち1,500億ドルは造船業向け、残り2,000億ドルが包括的な投資枠組みです。現金投資の2,000億ドルは「年200億ドル以内」に分割して執行すると明記されており、韓国の企画財政相は、3,500億ドルの投資が2026年上半期に開始される可能性は低いと述べています。原資となる特別基金の設置法案は、まだ国会審議に入る前の段階です。
5-4. 実行率という視点
ここから見えてくるのは、トランプ外交における「巨額の投資公約」の構造です。
公表される数字は、多くの場合、投資可能な上限枠、長期の枠組み、あるいは案件パイプラインの総和です。それは政治的な成果として発表され、報道され、記憶されます。しかし実際の資金流出は、その数%から10%程度にとどまり、しかも執行のペースは相手国側がコントロールできる設計になっていることが多い。日本の「出資は1〜2%」という説明も、韓国の「年200億ドル以内」という条項も、まさにその設計です。
そう考えると、「20%の通航料を湾岸諸国との投資協定と置き換える」という表明が何を意味するのかが、少し違って見えてきます。実際に徴収すれば市場を壊し、法廷でも負けるであろう2,800万ドルの通航料を、いつ執行されるかわからない「兆ドル」の投資公約に置き換える。前者は現実の痛みを伴い、後者は当面は数字だけです。政策としての合理性は、実のところ後者にあります。
6. これは「撤回」なのか、それとも「請求書の付け替え」なのか
6-1. 船主から国家へ、宛先が変わっただけという読み方
日経の記事は、この一件について「商船が安全に通航するための料金の相当額を湾岸諸国に対米投資という形で負担させる仕組みを考えているとみられる」と書いています。この一文が、事の本質を的確に突いています。
撤回されたのは、徴収の対象と手段です。船主・荷主から取るのをやめ、湾岸産油国から取ることにした。徴収の名目も、通航料から投資に変わった。しかし「米国が海峡の安全を提供しており、その対価を受け取るべきだ」という基本的な発想は、まったく変わっていません。むしろトランプ氏は「守っているのに対価を得られないのは不公平だ」という主張を、撤回の場で改めて繰り返しています。
請求書の宛先が、民間企業から国家に変わった。金額の根拠も、貨物価値の20%という明示的な算式から、投資協定という曖昧な包みに変わった。透明性は下がり、市場への即時のダメージは消えた。しかし請求という行為そのものは、生きています。
6-2. 安全保障を有償サービス化する発想は消えていない
トランプ政権の一貫した主張は、米国が世界に提供している安全保障は「無償のサービス」であり、受益者はそれに対価を払うべきだというものです。NATOの防衛費負担、在日米軍・在韓米軍の駐留経費、そして今回のホルムズ海峡。対象は変わっても、論理は同一です。
この論理には、それなりの説得力があります。米国はシェール革命によって、ホルムズ海峡への依存度を大きく下げました。他方でアジアの消費国は、依然としてこの海峡に生命線を握られています。米国が第5艦隊を維持するコストと、そこから得ている直接的な便益との間には、確かに乖離があります。
しかし、公共財を有償化しようとした瞬間に、公共財ではなくなります。「航行の自由」は、米国が無償で提供してきたからこそ、国際規範として機能してきました。それに値札をつけた瞬間、他の国も同じことをする権利を主張し始めます。マラッカ海峡は誰のものか。南シナ海は。北極海航路は。20%という数字がわずか1日で撤回されたのは、この論理が行き着く先を、米国自身の安全保障当局が最もよく理解しているからでしょう。
6-3. 湾岸諸国にとっての受け止め方
湾岸諸国の側から見ると、この置き換えはどう映るでしょうか。
短期的には、悪い話ではありません。海峡が20%の課金対象になれば、自国の原油とLNGの競争力が直撃を受けます。買い手が中東産を避け、大西洋側の原油や米国産LNGにシフトすれば、湾岸諸国の収入基盤そのものが揺らぎます。それを回避するために、すでに表明済みの対米投資公約を再パッケージして差し出すのであれば、追加のコストはほぼゼロで済みます。
中長期的には、しかし、これは危うい先例になります。安全保障の提供に対して投資で応じるという構図が定着すれば、次の危機のたびに請求書が届くことになるからです。中東情勢の解説では、湾岸諸国がトランプ政権の対イラン政策の一貫性の欠如に不満を示しており、AIやデータセンターなどで巨額の投資約束をしたものの、政治・安全保障環境の不透明さから案件の進捗に慎重になっているという指摘も出ています。約束はする、しかし急いでは出さない。それが湾岸諸国の合理的な対応です。
7. 米イラン衝突の現在地:撤回が起きた戦時の文脈
この一件は、平時の通商政策として起きたのではありません。現在進行形の戦争の只中で起きています。
7-1. 2月開戦から6月覚書、7月の停戦崩壊まで
2026年2月28日、米国とイスラエルによる対イラン攻撃が始まりました。4月にいったん停戦が成立し、6月17日にトランプ大統領とイランのペゼシュキアン大統領が覚書に署名します。この覚書は、60日間の停戦延長、ホルムズ海峡の再開、米国による海上封鎖の解除を柱とするものでした。
ただし、海峡の最終的な管理方法、イランの核開発計画、凍結資産の解除といった核心的な論点は、すべて先送りされていました。合意は成立したのではなく、対立を包み隠したまま時間を買っただけだったとも言えます。
7-2. 7月上旬のタンカー攻撃と連続空爆
7月6日から7日にかけて、ホルムズ海峡で商船3隻が攻撃されました。米中央軍(CENTCOM)は、国際水路で罪のない民間船員が乗る商船を攻撃したイランに甚大な代償を払わせるとして、連続空爆を開始したと声明を出しています。7月7日には、イランの防空網、沿岸レーダー、革命防衛隊の小型艇など80以上の標的が攻撃されました。
7月8日、トランプ大統領はトルコ・アンカラでのNATO首脳会議の場で、6月の停戦覚書について事実上の失効を宣言しました。米軍は2夜目の空爆で90の軍事目標を攻撃し、イラン側の革命防衛隊は、バーレーンの米海軍第5艦隊やクウェートの空軍基地など米軍関連85カ所をミサイルと無人機で攻撃したと表明しています。7月9日にはヨルダンのアズラク空軍基地に弾道ミサイル10発が撃ち込まれました。
その結果、7月10日頃には、ホルムズ海峡の大型船通航がほぼ停止し、海峡はほぼ封鎖状態にあると報じられる事態になりました。
7-3. 海峡の「実効支配」をめぐる本質的な対立
ここで見落としてはならないのは、通航料を主張しているのが米国だけではないということです。
イランもまた、ホルムズ海峡の通航に対して「海事サービス料」を課すという案を提示しているとされます。オマーンとの間では、任意方式(オマーン)と強制方式(イラン)で立場が食い違っていると報じられています。つまり、海峡に課金するという発想は、米イラン双方から出ているわけです。
そして、これは単なる金銭の問題ではありません。誰が通航料を徴収できるかという問いは、誰がこの海峡を実効支配しているかという問いと同義です。イランにとって、通航料の徴収と海峡の実効支配は譲れない一線であり、米国にとっては「自由航行の原則」が譲れない一線です。この通航料問題こそが、6月の停戦覚書が崩壊した根本原因の一つだと指摘する分析もあります。
トランプ氏が20%を打ち出したとき、それは経済政策であると同時に、イランに対する主権の宣言でもありました。そして1日で撤回されたとき、その宣言もまた、静かに引っ込められました。
7-4. マスカット協議の行方
7月11日から12日にかけて、オマーンの首都マスカットで、イランと安全航行をめぐる協議が続いています。ただし実態としては、非公式な戦闘の一時停止と交渉を並行させているモードであり、停戦への復帰と呼べる段階には至っていないという分析が主流です。カタールとパキスタンが仲介に乗り出し、双方を交渉テーブルに戻そうと試みています。
今回の20%撤回は、この仲介の流れのなかで読むべきかもしれません。海峡に課金するという米国の主張は、イランに同じ主張の口実を与えます。それを引っ込めることは、交渉の障害を一つ取り除くことでもあります。「湾岸諸国との投資協定に置き換える」という説明は、対外的には得点を維持したまま、交渉テーブルの上から爆弾を一つ下ろす方法だったとも読めます。
8. 投資家・ビジネスパーソンへの示唆
8-1. エネルギー価格・海運株・保険セクターの見方
今回の撤回で、原油価格の上振れ要因が一つ消えました。しかし、それは20%の通航料が消えただけであって、海峡がほぼ封鎖状態にあるという事実、タンカーが攻撃されているという事実、停戦覚書が失効しているという事実は、何一つ変わっていません。撤回のニュースで原油が下がったとすれば、それは構造的なリスクプレミアムの縮小ではなく、政策リスクの一時的な剥落にすぎません。
海運セクターについては、逆説的な構図を見ておく必要があります。海峡の通航が困難になり、喜望峰回りへの迂回が増えれば、輸送距離が伸び、トンマイル需要が増加します。運賃と戦争保険料は上昇し、船腹の供給は実質的に絞られます。危機は、タンカー市況にとってはしばしば追い風になります。ただしそれは、船が沈まない限りにおいてです。
保険セクターは、戦争危険保険料の急騰によって短期的には収益が改善しますが、実際に船が被弾した場合の支払いリスクを抱えます。船体価値1億3,800万ドルのVLCCで1回1,000万ドルという保険料は、保険会社がこの航路のリスクを「10回に1回は全損」に近い水準で見積もっていることを示唆します。これは正常な市場ではありません。
8-2. 「SNS政策」のボラティリティをどう扱うか
より一般的な教訓は、政策のライフサイクルが極端に短くなっているということです。
SNSに投稿された構想が、法制度の裏づけも、省庁間の調整も、法的なレビューも経ないまま、世界市場に価格変動をもたらす。そしてそれが1日で撤回される。この48時間で、原油、海運株、保険、そして関連する為替まで動いたはずです。しかし、その動きの根拠となった政策は、翌日には存在しませんでした。
投資判断において重要なのは、SNSの投稿を「政策の発表」として扱わないことです。制度設計が伴っているか、根拠法があるか、執行機関が指定されているか、発効日が示されているか。この4点のどれも満たさない発表は、政策ではなく、交渉のためのシグナルです。今回の20%は、そのすべてを欠いていました。
同時に、シグナルであっても市場は動くという事実も直視すべきです。つまり、実体のない発表が実体のある価格変動を生む。この構造が続く限り、短期のボラティリティは高止まりします。
8-3. 日本企業が備えるべき3つのシナリオ
日本にとって、この件は他人事ではありません。原油輸入の7割から9割がホルムズ海峡を通る国として、想定すべきシナリオを3つに整理します。
第一に、現状の膠着が続くシナリオです。海峡は完全には閉じないが、通航は不安定で、保険料と運賃は高止まりする。原油価格には常に10ドルから20ドルのリスクプレミアムが乗ります。この場合、日本のエネルギーコストは慢性的に押し上げられ、電力料金とガソリン価格に転嫁されます。企業にとっては、燃料費の上振れを前提とした価格設定と、為替との二重のリスク管理が必要になります。
第二に、海峡が実質的に閉鎖されるシナリオです。日本の国家備蓄と民間備蓄は合わせて200日超の水準にあり、短期的な供給途絶に対しては耐性があります。ただし備蓄は時間を買うものであって、供給を代替するものではありません。数カ月にわたる閉鎖となれば、サウジの東西パイプライン(紅海側)とUAEのフジャイラ港経由の迂回ルートの能力が、日量数百万バレル規模の代替の上限になります。これは日量2,000万バレルの一部にすぎません。原油価格は3桁ドルの領域に入るでしょう。
第三に、停戦が成立し、海峡が正常化するシナリオです。この場合、原油価格は急落し、リスクプレミアムは剥落します。ただし、そのとき浮上するのが「安全保障の対価」の議論です。誰が海峡の安全を保証し、その費用を誰が負担するのか。今回の20%は撤回されましたが、その問いは撤回されていません。日本が対米投資5,500億ドルの上に、さらにエネルギー安全保障の負担を求められる可能性は、決してゼロではありません。
いずれのシナリオでも共通するのは、日本のエネルギー調達がホルムズ海峡という一点に集中しているという構造的脆弱性です。LNGについては、豪州、北米、東南アジアへの分散が進み、ホルムズ経由は6%程度まで下がりました。原油についても、同様の分散が可能かどうか。今回の一件は、その問いを改めて突きつけています。
9. まとめ:値札のつかないものに値札をつけようとした2日間
7月13日に貼られた値札は、7月14日に剥がされました。理由は明快です。国際法が認めず、実務が回らず、市場が拒み、同盟国が痛む。制度として成立する要素が、一つもありませんでした。
しかし、この2日間が何も残さなかったわけではありません。むしろ、いくつかの重要なことを、はっきりと可視化しました。
第一に、米国は「航行の自由」を無償の公共財として提供し続ける気がないということ。トランプ氏は撤回の場でさえ、「守っているのに対価を得られないのは不公平だ」と繰り返しました。手段は変わっても、この認識は残っています。
第二に、その対価の請求先は、船主から国家へ、そして最終的には同盟国と産油国へと移っていくということ。湾岸5カ国への「投資協定への置き換え」は、その第一歩です。日本の5,500億ドルと韓国の3,500億ドルは、すでにその先例として存在しています。
第三に、そうした巨額の公約は、多くの場合、実際には執行されないということ。日本政府自身が「実際の出資は1%から2%」と説明し、韓国は「年200億ドル以内」という上限を勝ち取りました。サウジの6,000億ドルも、UAEの1.4兆ドルも、カタールの1.2兆ドルも、いまのところ枠組みであって、資金ではありません。数字は政治のために存在し、実行は経済のために遅延する。この二重構造が、いまの国際経済交渉の基本文法になっています。
そして第四に、ホルムズ海峡という場所の重みです。幅3kmのレーンを、1日に100隻の船が通る。そこに世界の石油消費の2割と、日本の原油輸入の8割前後が乗っている。ここに値札をつけようとする試みは、今後も形を変えて現れるでしょう。米国が20%を撤回した後も、イランは「海事サービス料」を主張しています。海峡に課金するという発想そのものは、消えていません。
値札のつかないものに値札をつけようとした2日間。それは失敗に終わりましたが、その試み自体が、いまの世界が何を当たり前として維持できなくなりつつあるかを、鮮やかに照らし出しました。私たちが安く豊かに暮らせてきた前提の一つは、誰かが無償で海を守っていたことでした。その無償の時代が終わろうとしているという事実は、20%の撤回とともに消えたわけではありません。
参考文献・出典
日本経済新聞「トランプ氏、20%通航料案を撤回 『湾岸諸国との投資協定と置き換え』」2026年7月15日(ワシントン=甲原潤之介)
https://www.nikkei.com/米エネルギー情報局(EIA)ホルムズ海峡通過量推計(2024年〜2025年上期)
国際海事機関(IMO)声明「国際航行に使用される海峡の通過に手数料を課すことへの反対」2026年7月
内閣官房「中東情勢に関する資料」(日本の原油輸入とホルムズ海峡)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/chyutoujyousei/dai1/pdf/siryou4.pdf経済産業省「LNG市場に関する資料」(日本のLNG輸入におけるホルムズ経由比率)
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/lng/pdf/004_03_00.pdfJETRO「ホルムズ海峡の通航船舶数(IMF PortWatchより)」2025年6月
https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/06/f7a6edd8106cc5ca.htmlJETRO「中東情勢とLNG貿易」2026年4月
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2026/0402/809244cf5dc9d2e6.htmlロイター「米中央軍、イランへの連続空爆を開始」2026年7月7日
https://jp.reuters.com/world/us/ELCCEZ7YS5OKXFGX2PVK36QCBM-2026-07-07/ロイター「サウジ、対米6,000億ドル投資で合意」2025年5月13日
https://jp.reuters.com/markets/commodities/KS6FMFSOHNIEVJAPEID2NKKCU4-2025-05-13/ロイター「トランプ大統領の中東歴訪、主な合意内容」2025年5月14日
https://jp.reuters.com/world/security/2MS43M2LINKPXOVIXXGHXNWL4Q-2025-05-14/ロイター「韓国企画財政相インタビュー:3,500億ドル投資は2026年上半期開始の可能性低い」2026年1月16日
https://jp.reuters.com/markets/japan/ORVPN2ZT2NN4HOLTIOJPXLMIYQ-2026-01-16/国際通貨研究所(IIMA)「トランプ大統領の中東歴訪と湾岸諸国の対米投資」2025年
https://www.iima.or.jp/docs/column/2025/ei2025.13.pdf住友商事グローバルリサーチ「トランプ政権の中東政策と湾岸投資」2025年6月
https://www.scgr.co.jp/report/survey/2025061275200/Forbes JAPAN「トランプ中東歴訪、総額2兆ドルのディール」2025年5月
第一生命経済研究所「日米関税合意と5,500億ドル対米投資パッケージ」
https://www.dlri.co.jp/report/macro/485722.html電通総研「米韓合意における3,500億ドル投資枠組みの構造」
https://dcer.dentsusoken.com/reports/wy25001/日本海事センター「スエズ運河・パナマ運河の通航料に関する調査」
https://www.jpmac.or.jp/img/research/pdf/B201321.pdf東京海上日動「運河通航料と海上保険」
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/hojin/marine_site/news/pdf/tmt_cargo_057.pdfLOGI-TODAY「ホルムズ海峡の戦争リスク保険料急騰」
https://www.logi-today.com/922995丸紅経済研究所「ホルムズ海峡と世界のエネルギー安全保障」2025年7月
https://www.marubeni.com/jp/research/report/data/20250701murai.pdf
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