主要プロセスの自動化は 18% から 50% へ。それでも差がつくのは技術ではなかった。
2030 年までに、製造業の主要プロセスのうち、自動化された割合の中央値は 18% から 50% へ上がる。
PwC が世界 24 地域、443 人の製造業幹部を対象に行った調査で示された見通しです。
この数字だけを見ると、やはり自動化に投資した会社が勝つのだろうと思いたくなります。
でも、レポートを読み進めると、話はそこまで単純ではありませんでした。PwC が本当に強調しているのは、自動化の量そのものより、技術をどれだけ速く導入し、つなぎ、全体として機能させられるかでした。
Future-fit 企業は何が違うのか
PwC は今回の調査で、イノベーションのスピード、市場投入の速さ、資本やリソースの再配分の機敏さなどを複合的に分析し、最も機敏で革新的な上位 20% の企業を「Future-fit 企業」と位置づけています。
この層は、すでに自動化の面でも先行しています。現在の中央値は Future-fit 企業で 29%、それ以外の企業で 15%。2030 年には、それぞれ 65% と 45% に広がる見通しです。
この数字は興味深いと思いました。
Future-fit 企業が先を走っているのは確かですが、それ以外の企業も 15% から 45% へ大きく伸びる見込みです。
ここで言いたいのは、自動化そのものはあらゆる企業において今後広く普及していくということです。
だから、これから差がつくのは「自動化しているかどうか」そのものではなく、それをどれだけ速く導入し、現場の運用やデータとつないで機能させられるかだと思います。
差を生むのは、技術そのものより組織の在り方
では、何が差を生むのか。
PwC の数字を見ると、分かれ目は技術そのものより、それを使いこなす組織の側にありました。Future-fit 企業は、「社員が新しいアイデアに基づいて行動できる」と答えた割合が 74%、それ以外は 59% でした。「戦略的なリスクテイクを許容する文化がある」は 69% 対 36%、「データドリブンな意思決定プロセスがある」は 75% 対 47% です。
特に目を引くのは、69% 対 36% という差です。
新しいことを試してもよいという空気があるかどうか。これは、AI や自動化の導入スピードにかなり直結するはずです。どれだけ優れた技術を買っても、失敗を許さない空気の中では、PoC は回っても本番導入にはつながりにくいのだと思います。
PwC 自身も、競争優位は「誰がツールを持っているか」から、「誰がそれを最も速く導入し、オーケストレーションできるか」へ移ると述べています。
このオーケストレーションは、ここでは個別の AI や自動化ツールを並べることではなく、それらを現場の運用、データ、意思決定の流れにつなげて、全体として働かせることだと受け止めています。
AI とロボティクスに期待されている役割は少し違う
もう 1 つ、面白い数字がありました。
AI に何を期待するかという問いでは、「成長」が 47%、「生産性向上」が 46% で、ほぼ同じ水準です。一方で、ロボティクスは「生産性向上」が 78% と高く、「成長」は 13% にとどまっています。
この差を見ると、ロボティクスは今ある仕事をより効率よく回す手段として見られ、AI は成長の余地まで含めて期待されているように見えます。
ただし、期待が高いことと、実際に価値が出せる状態が整っていることは別です。AI は単体で魔法のように効くというより、解くべき課題が定まり、必要なデータがつながり、意思決定まで流れる仕組みがあって初めて効いてくるのだと思います。
収益の源泉も、従来の製造業の外へ広がっていく
PwC は、2030 年には製造業の総収入の 44% が、従来の工業製品や消費財の製造そのもの以外から生まれると見ています。
背景にあるのは、機器だけでなく、ソフト、データ、サービスを組み合わせたインテリジェント・コネクテッド・ソリューションや、継続課金型、成果報酬型のモデルへの移行です。Future-fit 企業ほど、こうした領域を成長戦略として重視する傾向も示されています。
ここまで読むと、自動化は単なる省力化の話ではないことが分かります。
何をどれだけ自動化するかだけでなく、その先にどんな収益モデルを作るのかまで含めて、製造業の競争軸そのものが動いているのだと思います。工場の中の改善だけで終わる話ではなくなってきています。
日本の製造業にとっての意味
この調査を読んで改めて感じたのは、差がつくのは技術の有無ではなく、技術を活かせる組織を持っているかどうかだということです。
自動化の数字は目立ちますが、本当の分かれ目はその手前にあります。新しいことを試せる空気があるか。データに基づいて判断できるか。個別の取り組みを全体につなげられるか。たぶん、現場で効いてくるのはその部分です。
DX 推進の現場において難しいのは、その技術を今ある運用の中にどう接続するかです。正しい仕組みを作ることより、実際に回る仕組みに落とすことの方が、ずっと地味で、ずっと難しい。今回の PwC の調査は、その感覚をかなりはっきり裏づけているように見えました。
だからこそ、組織文化を変えようと大きく言う前に、最初に見るべきなのはもっと小さな単位なのかもしれません。
たとえば、最初の PoC を 1 つ、本番に持っていけるかどうか。その地味な 1 歩を通せる組織かどうかが、2030 年の差になっていくのだと思います。
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出典・参考リンク
PwC|“Industrial manufacturers to more than double automation of key processes by 2030 as technology widens divide between leaders and laggards”|
https://www.pwc.com/gx/en/news-room/press-releases/2026/pwc-global-industrial-manufacturing-sector-outlook.html
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