スペイン・モンセラートを訪れて欲しい。
「こんな場所が、まだ残っていてよかった。
守り続けてくれて、ありがとう。」
モンセラートを訪れて、最初に浮かんだのは
そんな言葉だった。
澄んだ声が、あの大きな聖堂全体に
静かに広がっていく。
最初の一声は、視覚よりも少し遅れて、
耳に届いた…。
そのわずかな刻の流れの中で、
なぜかもう、涙が溢れ出しそうになる。
それは音楽というよりも、
彼らの祈り、
淡々と繰り返絵される日々の営み。

初めて訪れたモンセラート(Montserrat)
バルセロナに住み始めて数ヶ月。
まわりの人からもずっと勧められていた
モンセラートを訪れた。
なんとなく、その場の雰囲気に浸りたい。
そんな、気持ちが強かったから、
行く前に知っていた情報は、
「大きな岩山と、歴史ある教会がある」くらいだった。
今回は、少年合唱団の典礼に合わせて、
下の町から山を登りながら、
バシリカ(聖堂)へと向かった。
むき出しの岩山が聳え立つ。
そのほぼ頂上に、修道院、聖堂、宿泊施設が静かに佇んでいる。
自分の足で登って来たからこそ、
「どうして、こんな場所に?」
「大きくて、立派すぎる」
いつもは静かな心の声が、次々に溢れ出てくる。
黒い聖母「ラ・モレネータ(La Moreneta)」が
この場所のはじまりを感じさせてくれた。
そこは、壮大というよりも、もっと静かな場所だった。
岩に抱かれるように、小さな祈りの空間がある。
大きな建築ではなく、
「ここを大切にしたい」という気持ちそのものが残っているような場所。

そこから、今のモンセラートの姿まで。
この場所をここまで大きくし、維持してきた時間を想像すると、
少し圧倒される。
信仰の力だけではなく、
それを支える大きな組織や資源、
そして無数の人の労力があったのだと思う。
何かを残すことは、簡単じゃない。
建てることに意識を向けがちだが、
守り続けることは、本当に難しい。
時代が変わって、形が変わって、
そこに訪れる人の目的が変わったとしても、
それでも場所を閉じずに、壊さずに、
誰かが次のまた誰かへ手渡していく。
その積み重ねがあったから、
今の私はあの場所に立つ、あの景色を見ることができた。

そして、その中心には、あの歌声があった。
建物だけじゃなくて、
祈りも、時間も、日々の営みも、
すべてが途切れずに続いてきた証のようだった。
観光地だから残っているわけじゃない。
誰かがずっと、
「ここは失くしてはいけない」と思い続けてくれたから、残っている。
だから帰るころには、
すごい場所だった、というよりも、
こんな場所が、まだ残っていてよかった。
守り続けてくれて、ありがとう。

