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NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)後の自治体におけるマネジメントの方向性

NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)という言葉、最近は、とんと聞かなくなりました。では、代わりになる自治体経営の概念が提示されているかというと、それも現場ではあまり聞きません。そして、自治体の現場では、NPMで行われてきたことが、今も、惰性で使われ続けているような気がしています。

Chat GPTの力も借りながら、NPM後、諸外国では、どのような研究がされているのかをまとめてみたいと思います。そして、自分自身が、これから、何を探求していきたいのか、大きなマップを素描してみたいと思います。



1 NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)のその後

NPMとは、「民間企業の経営理念・手法、成功事例を可能な限り公的部門に導入し、その効率化・活性化を図ろうという行政のマネジメント論」です。

主な特徴、コンセプトとしては、

  1. 業績/成果による統制(プロセスより結果)

  2. 市場による統制(できるだけ民間へ)

  3. 顧客主義への転換(市民はお客様)

  4. ヒエラルキーの簡素化(フラットな組織)

があげられます。

そして、具体的には、

  • 指定管理者制度

  • 独立行政法人化

  • 行政評価制度

  • 職員削減(集中改革プラン)

などが、行われてきました。

その結果、弊害としてしてきされたのが、

1.数値目標の形式化
 ・KPIはあるが実質的な改善につながらない
 ・評価のための評価
2.現場の疲弊
 ・人員削減+業務増加
 ・「効率化」が「余裕の消失」へ
3.公共性の希薄化
 ・コスト削減が目的化
 ・住民との関係性が弱まる

などです。

そして、平成26年の総務省の報告書で、

NPMの考え方は、民間企業の経営手法を参考にしながら、行政の行動原理を変革し効率化を図るという視点で、多様な背景を持つ諸改革を統合する一つの考え方であり、我が国の行政の組織や運営にも大きな影響力を持った。
しかしながら、人口減少が進む我が国においては、安価で豊富な若手労働力などNPMの考え方を支えてきた前提に大きな変化が生じており、これに今後も依拠し続けることはできないと考えられる。

地方自治体における行政運営の変容と今後の地方自治制度改革に関する研究会報告書

と、総括されたわけです。

しかしながら、私の問題意識としては、もう10年以上前に「今後も依拠し続けることはできない」とされたわけですが、
・弊害とされたことは、克服できたのか?
・NPMに変わる新しい行政のマネジメント理論は、提示されたのか?

ということです。


2 NPS(ニュー・パブリック・サービス)

その後の総務省の報告書に目を通しましたが、NPMに変わる新しい行政のマネジメント理論が提示されたという形跡は私には見受けられませんでした。
代わりに、総務省の報告書が示しているのは、効率化と民への業務委譲による職員削減といったNPMの継続とも受け取られかねないものでした。

AI(人工知能)やロボティクスによって処理することが できる事務作業は全てAI・ロボティクスに任せ、職員は職員でなければできない業務に特化することが必要である。あわせて、新たな公共私の協力関係を構築することなどにより、従来の半分の職員でも自治体として本来担うべき機能が発揮でき、 量的にも質的にも困難さを増す課題を突破できるような仕組みを構築する必要が ある。

自治体戦略2040構想研究会 第二次報告

確かに、「新たな公共私の協力関係を構築」のあたりが、この後説明するNPSのようにも思えるのですが、その目的が、職員の削減となっているので、NPMの中で扱われているように思われます。そのため、十分、NPMに代わる理論として提示されているとは思えなかったということです。

そこで、NPMの先進国であった英米では、NPMの後、どのように進んだのかが気になったのですが、やはり、NPMの弊害として日本で起きた問題は、同様に起きていたようです。
その中で、例えば、米国では、NPS(ニュー・パブリック・サービス)というNPMに対抗する理論が生まれていました。
NPSは、ジャネット・デンハート と ロバート・デンハート によって提唱された理論ですが、内容については、ChatGPTによるまとめを引用します。

■ NPSの核心思想

NPSは、NPMを単に修正するのではなく、
前提そのものをひっくり返します。

① 市民は「顧客」ではない
NPM:市民=サービスの受け手(customer)
NPS:市民=公共の担い手(citizen)
👉 これは決定的な転換です。

② 行政の役割は「操縦」ではなく「関係の調整」
NPM:効率的に舵取りする(steering)
NPS:多様な主体の間で対話と協働を生む
👉 行政は「上から導く存在」ではなく
関係性の中に身を置く存在になります。

③ 公共価値は「共に創るもの」
NPM:価値は測定される(KPI、成果)
NPS:価値は対話の中で形成される
👉 ここに、熟議民主主義の思想が入っています。

④ 公務員の倫理の再定義
NPM:効率性・成果
NPS:公共への責任・民主的価値
👉 公務員は「経営者」ではなく
民主主義の実践者になります。

■ 思想的な位置づけ(少し深く)
NPSの背後には、いくつかの思想が流れています。
・市民参加民主主義(participatory democracy)
・熟議民主主義(deliberative democracy)
・コミュニタリアニズム(共同体主義)

つまりNPSは、
「公共とは何か」という規範理論の回復なんですね。

ChatGPT

舵を取るな、仕えよ(SteerではなくServe)
というのが、キーワードなのですが、
これは、『リインベンティング・ガバメント(Reinventing Government)』という1992年にテッド・ゲイブラーとデヴィッド・オズボーンによって出版された行政改革の古典的な名著における、
漕ぐ(rowing)から舵を取れ(steering)
からの転換を示しているのだと思います。

NPSの代表的な著作としては、「The New Public Service: Serving, Not Steering」ですが、邦訳はありません。

自治体の現場では、あまり、注目されていないと思われるNPSですが、実は、2010年の時点で、元関東学院大学教授の大住荘四郎氏(NPMを日本に紹介した学者さん)が、以下のように紹介しています。

NPMはエンパワーメント型組織を提唱してきたが、NPSはエンパワーメント型の都市・地域経営を提案している。これは、都市・地域の課題解決に2つのアプローチがあることを示唆している。NPMは市場メカニズムによる解決、NPSは社会的なメカニズムによる解決を提起しており、都市・自治体の特性に応じたこれらの最適な組み合わせが求められている。

大住 荘四郎「行政マネジメント (BASIC公共政策学 7巻) 」( 2010,ミネルヴァ書房)

また、日本語で読める論文としては、

「公共経営の変容と今後の都市経営 ― ニュー・パブリック・サービスの視点から ―」(遠藤尚秀,『都市経営研究』第 1 巻 創刊号 2021年 3 月)

などがあるようです。


3 公的価値(Public Value)論

さらに、米国では、マーク・H・ムーアが、NPSと並んで、あるいはそれを別の角度から支える理論として、「公的価値(Public Value)論」を提唱しています。
この内容も、ChatGPTにまとめてもらいました。

■ ① 公的価値論とは何か
出発点は、彼の代表作
Creating Public Value(1995)です。
ここで提示されたのは、とてもシンプルで強い問いです。
「政府は何をもって価値を生み出したと言えるのか?」
________________________________________
■ ② NPMとの決定的な違い
NPMでは、価値はこう測られました:
● コスト削減
● 効率
● 成果指標(KPI)
しかしムーアは言います。
それは「価値の一部」にすぎない
________________________________________
■ 公的価値の定義(核心)
ムーアにとって価値とは:
● 市民にとって意味がある
● 社会として望ましい
● 民主的に正当化されている

👉 つまり
価値は「測定」ではなく「正当化」されるもの
________________________________________
■ ③ 戦略三角形(Strategic Triangle)
ムーアの理論で最も有名なのがこれです。
3つの要素
① Substantive Value(実質的価値)
● 市民にとって何が良いのか
● 社会として何が望ましいか
② Legitimacy & Support(正当性と支持)
● 市民・議会・関係者の承認
● 民主的プロセス
③ Operational Capacity(実行能力)
● 組織能力
● パートナーシップ
● 資源
________________________________________
👉 重要なのは:
3つが揃って初めて「価値創造」になる
________________________________________
■ ④ NPSとの関係
観点      NPS         公的価値論
焦点      市民・民主主義    価値創造
アプローチ   規範理論       戦略論
公務員像    民主主義の担い手   価値創造のリーダー
👉 一言でいうと:
● NPS:「どうあるべきか」
● ムーア:「どう実現するか」
________________________________________
■ ⑤ 実務への影響(アメリカ)
公的価値論は、NPSよりもはるかに
👉 実務に影響を与えています
理由は明確で:
● フレームワークとして使える
● 戦略論として応用できる
________________________________________
実際には:
● 公共機関の戦略策定
● 非営利組織の評価
● 政策形成プロセス
で使われています。
________________________________________
■ ⑥ ただし重要な誤解
日本ではしばしば:
👉 「公的価値 = 住民満足」
と誤解されがちですが、ムーアは違います。
________________________________________
■ ムーアの立場
● 市民の欲望 ≠ 公的価値
● 多数派の意見 ≠ 正しさ
👉 だからこそ
価値は「対話と熟議」を通じて形成される
________________________________________
■ ⑦ 哲学的に見ると
ムーアの理論は、
● 功利主義(満足)
● 民主主義(正当性)
● 実践理性(実行可能性)
を統合しようとしています。
________________________________________
👉 つまり
公共を「善の問題」として再び引き戻した
________________________________________
■ ✨ 核心的示唆
NPMの世界では:
公務員は「効率的な管理者」
NPSでは:
公務員は「民主主義の担い手」
ムーアでは:
公務員は「公共価値を構想し、実現する存在」

ChatGPT

私も最近まで知らなかった理論なのですが、日本の実務者の方は、どの程度、ご存じなんでしょうか。少なくとも、総務所の「自治体戦略2040構想研究会 第二次報告」で示された自治体職員はプロジェクトマネジャーになるべきという提言よりは、公務員は「公共価値を構想し、実現する存在」のほうが、より本質的な気がしました。

日本語で読める文献としては、次のような書籍があるようです。
まずは、これを読んでみたいと思います。

また、論文としては、

「公共的価値とその創造に向けたアプローチに関する研究の展開」(東郷 寛,商経学叢 / 近畿大学商経学会 編,2024)

「公共価値を基礎とした自治体における業績マネジメントー行政評価と統合報告の融合ー」(酒井大策,大阪経大論集・第75巻第6号・2025年3月)

などがあるようです。

さらに、酒井先生は、次の論文では、PSL(Public Service Logic)も含めて書かれているようです。

「公共部門における価値に関する基礎的考察ーNPM,PV,PSLにおける価値ー」(酒井大策,大阪経大論集・第76巻第1号・2025年5月)

そして、熟議による正当性についてが、ハーバーマスとの関連が強そうなので、ハーバーマスにも、ちょっと入門書から挑戦してみたいと思います。


4 公共善エコノミー

公共価値論においては、「公共価値」がキーワードになるわけですが、それは、対話と熟議から生まれてくるとされているようです。でも、何か、公共価値についての規範となる考え方はないのかと思い調べてみました。

そこで、見つかったのが、ドイツのクリスティアン・フェルバーが提唱する「公共善エコノミー」です。これは、行政組織を対象としたマネジメント理論ではなく、経済システム全体を公共善に転換する社会経済モデルです。しかし、民間組織、公共組織双方において、何が善いかの基準をつくり、公共善に向かわせようとするもののようですので、行政組織が何を善い公共価値とするかを考える理論になるのではないかと考えました。

その基準となる価値とは、

  • 人間の尊厳(Dignity)

  • 連帯と公平(Solidarity & Justice)

  • 環境の持続可能性(Ecological Sustainability)

  • 透明性と民主的意思決定(Transparency & Co-Determination)

とのことです。
これが、公的価値論にはないものだと思います。

この「公共善エコノミー」についても、ChatGPTに説明してもらいました。

■ ① フェルバーの「公共善経済」とは何か
フェルバーは、いわゆる
👉 共通善経済(Economy for the Common Good)
を提唱しています。
その中心にあるのは、とてもラディカルな転換です:
________________________________________
■ 問いの転換
従来(資本主義・NPM)
→ 利益・効率を最大化する
フェルバー
共通善(Gemeinwohl)を最大化する
________________________________________
■ 共通善の中身
彼が重視する価値は:
● 人間の尊厳
● 連帯
● 環境持続性
● 民主主義

👉 つまり
経済や行政の目的そのものを問い直す
________________________________________
■ ② NPM・NPS・公的価値との違い
ここがとても重要です。
________________________________________
■ NPM
● 手段:効率
● 目的:あまり問わない
________________________________________
■ NPS
● 手段:対話・参加
● 目的:民主的価値
________________________________________
■ 公的価値(ムーア)
● 手段:戦略
● 目的:価値の創造(ただし枠内)
________________________________________
■ フェルバー
● 手段:制度そのものを変える
● 目的:何が善かを根本から再定義
________________________________________
👉 つまり
フェルバーは
「ゲームのルール」そのものを問い直している
________________________________________
■ ③ なぜ「本質的」に見えるのか
■ 理由①:規範の深さ
● NPM:ほぼ規範なし
● NPS:民主主義
● ムーア:公共価値
● フェルバー:善そのもの
________________________________________
■ 理由②:測定の転換
フェルバーは
● GDPではなく
共通善バランスシート
を提案します。
👉 これは
「何を測るか」ではなく
**「何を価値とするか」**の転換
________________________________________
■ 理由③:倫理の回復
彼の理論は明確に
経済・行政は倫理に従うべき
と主張します。
________________________________________
■ ④ ただし重要な注意点
フェルバーの理論は確かに本質的ですが、
👉 そのまま行政理論として使うには難しさがある
________________________________________
■ ① 抽象度が高い
● 「善」とは何かは合意しにくい
● 現場での意思決定に落としにくい
________________________________________
■ ② 政治性が強い
● 価値選択そのものが政治的対立を生む
________________________________________
■ ③ 実装フレームが弱い
● ムーアのような戦略ツールが少ない
________________________________________
👉 つまり
理念としては強いが、実務への橋渡しが課題
________________________________________
■ ✨ 公務員は何を実現すべきなのか?
この問いに対して:
● NPMは答えない
● NPSは「市民とともに決めよ」と言う
● ムーアは「価値を構想せよ」と言う
● フェルバーは「善を問え」と言う

ChatGPT

ムーアは実践的で、フェルバーは理念的で実務では扱いにくいというところが、まだ、しっくりきません。公共善というと、アリストテレスの哲学からきているので抽象的だということなのか、そもそも、経済システムの転換を目的としているので、行政体だけでは実行できないということなのでしょうか。逆に、共通善バランスシートというものも作っているとしたら、具体的、実践的な感じもしましたが、まだまだ、わからないことばかりです。
以下の書籍を読んで、しっかり勉強したいと思います。

公共善エコノミーについての日本語で読める論文は見つかりませんでしたが、日本でも「一般社団法人公共善エコノミー」という団体が活動されているようです。


また、公的価値論や公共善エコノミーとも関連が深そうな研究をオランダ・ライデン大学行政学部助教授の鈴木紘平氏がnoteで発信されてました。海外在住の研究者さんが日本語で発信してくれる情報って貴重ですね。こうした情報も参考にしたいと思っています。


5 欲望論・現象学と民主主義の理念(自由・自由の相互承認・一般意志)

NPMによって、民間企業の経営を見習った中で、公共マネジメントは大切なものを失ってしまったようです。
それは、
・民主主義として必要な市民の関与
・公的価値として何を善としていくかの価値観

の二つではないかと思いました。

それに対して、欧米では、NPS、公的価値論、公共善エコノミーなどの新しい理論により、公共組織のマネジメントの見直しが行われているようですね。しかし、それでも、まだ、何を公的価値とするか、公共善とするかの最適解は見つかっていないというように理解しました。

一方、日本では、まだ、NPMにとらわれているように思います。
でも、実は、何を公的価値とするか、公共善とするかの最適解に近いのは、日本の哲学者ではないかと思っています。

その理由は二つあります。

一つは、何を善とするかについてを思考するための原理的な方法として、フッサール現象学を進展させた「欲望論・現象学」があるということです。我々が、何を善とし悪と感じるのか、美しいと感じるのか、正しいと思うのか、それを振り返って思考し直すために、自分の欲望・関心を考えるための一番の基盤として、自分の意識体験の中で、どのように意識が働いているのかを探求する方法が確立されています。
この方法以外に、何を善かと考える思考法はないのではないでしょうか。

もう一つが、我々がどんな社会に暮らしたいのかを、欲望・関心から考えたときに、それは、「誰もが生きたいように生きられる自由な社会」であるということを、ルソーやヘーゲルの社会哲学から構築し直した哲学があるということです。そして、自由な社会をつくるために必要な原則が、「自由の相互承認」「一般意志」の二つであり、そのことから、新たな社会構想をつくりだそうとしている哲学者がいます。

どちらも、竹田青嗣先生、西研先生、苫野一徳先生らのお仕事です。

つまり、竹田先生たちの哲学をムーアやフェルバーの理論に接続できれば、公的価値や公共善とは何かを思考するための基盤になるのではないかと考えています。

例えば、ムーアのいう民主的正当性については、ルソーの一般意志以外に根拠にできるものはないのではないでしょうか。

フェルバーの公共善は、その施策が、自由な社会の構築につながるのか、自由の相互承認に寄与するのかということが、最も底に敷かれる基準になるのではないでしょうか。

そして、これらのことを思考するためのツールが、欲望論・現象学になるように思います。

実は、市役所に入った時から、「目的志向」で仕事をしなさいと指導され、他部署に、「それは、目的ではなく、手段でしょ」と指導している先輩をみながら、何を目的とするかって、究極、どうやって決めればいいんだろうと疑問をもっていました。ある意味、この考え方の整理は、もっとも単純な問い「公共の目的とは何か」につながるように思えます。

NPMだけでは、効率的な政策だけが善い政策と判断されることになり、NPSだけでは、善いかどうかの判断は、対話と熟議のプロセスの善さで判断されてしまう。かといって、公的価値や公共善が大切だといったところで、何を善とするかの基盤となる哲学は確立されていない。その最も底に敷くものとして、竹田先生や西先生の哲学があるのではないかと考えています。

このような全体像を描きながら、ここに挙げた文献などから学んでいきたいと思います。


ここまで、お読みいただいて、ありがとうございました。
「好き」や「フォロー」「コメント」にもいつも感謝しています。

これからも、これらの学習過程で生まれた疑問を、生成AIなども使いながらまとめることができたら、そのつど、発信していきたいと思います。

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