【映画感想メモ】タルコフスキー監督の『惑星ソラリス』難解映画の魅力!
私がいちばん好きな映画監督の一人がアンドレイ・タルコフスキー。
草木や水辺の風景を信じられないくらい綺麗に撮れる人です。
タルコフスキーという人はソ連の映画監督です。
ソ連というのはソビエト連邦のことです。
今のロシアもウクライナも、1991年まではソビエト連邦という一つの国でした。
世界地図にソ連が存在したのは、1922年から1991年までの69年間だけでした。
まるで大昔の話みたいですね。
1972年のソ連映画『惑星ソラリス』の話です。

まず、タルコフスキー監督のことから。
知ってる人は知っている有名すぎる監督なので、よけいな説明はしたくないんですが、初耳の人に向けてサクッと。
私は映画の専門家ではないので、個人的な記憶をたどってみますが、20歳ごろ大学で映画論を聴講したとき、タルコフスキーに出会ったと覚えています。
タルコフスキー監督の代表的な作品を3つ、簡単にご紹介します。
1. 『僕の村は戦場だった』(1962年)
概要: 第二次世界大戦下のベラルーシを舞台に、ナチス・ドイツの侵攻によって故郷を失った少年イワンの過酷な運命を描いた作品。
特徴: 戦争の悲惨さを子供の視点から描き出し、詩的な映像と重厚な演出で観る者の心を深く揺さぶります。タルコフスキーの初期作品でありながら、その後の作風を確立する要素が詰まっています。
見どころ: イワンの心の葛藤や、戦争によって奪われた無垢な魂の叫びが、印象的なモノクロ映像で表現されています。
2. 『アンドレイ・ルブリョフ』(1966年)
概要: 15世紀のロシアを舞台に、実在のイコン画家アンドレイ・ルブリョフの生涯を、歴史的な出来事と絡めて描いた大作。
特徴: 中世ロシアの混乱と苦難、そして芸術家の苦悩を描き出し、人間の精神の高潔さを追求しています。長尺で難解な作品ですが、その圧倒的な映像美と哲学的なテーマは観る者を魅了します。
見どころ: タルコフスキーならではの長回しや、夢幻的な映像表現が随所に散りばめられています。特に、映画の終盤に登場するルブリョフのイコンのカラー映像は圧巻です。
3. 『ストーカー』(1979年)
概要: 謎の「ゾーン」と呼ばれる場所を舞台に、願いを叶えるという「部屋」を目指すストーカーと、科学者、作家の3人の男たちの旅を描いたSF作品。
特徴: タルコフスキー作品の中でも特に難解で、哲学的なテーマが色濃く反映されています。人間の欲望や希望、そして存在の意味を問いかける、深遠な作品です。
見どころ: 荒廃した風景や、異様な雰囲気を醸し出すゾーンの描写が印象的です。また、3人の男たちの会話劇を通して、人間の内面が深く掘り下げられています。
タルコフスキーは1986年に54歳で亡くなっています。
『惑星ソラリス』を撮ったころは40歳くらいだったんですね。
タルコフスキーは「映像の詩人」と呼ばれているだけに画面がぜんぶカメラマンの撮った写真のように綺麗で意味ありげです。
構図も光も完璧な写真が、ずっとつながって動いているような映像です。
あまりに綺麗で、そのうえ延々と長回しが続くので、映画館では眠気をもよおすタイプの映画。
そのため難解映画と呼ばれることもあります。
ビデオもない時代だったので、途中でうっかり寝てしまうと、ストーリーはわからないままエンディング、という危険な映画でもあります。
今は早送りという手段があるので、寝そうになったら早送りしてストーリーを把握するのがおススメ。
場面をじっくり味わいたい場合は、音を大きめにして世界観に入るのも楽しいです。
何十年も経った今も、私の綺麗の基準はタルコフスキーにあるなあ、と思います。
そのくらい当時はあこがれの監督だったんですね。
いまだにどんな写真を見ても、タルコフスキー基準で判定しそうになっています。

『惑星ソラリス』は、ソ連映画ですから、とうぜんテロップもロシア語で、俳優名も覚えられません。
今回は役名でストーリーをご紹介します。
冒頭でバッハの教会音楽が流れます。
この音楽を聴くと20歳のころの記憶がよみがえるという、私には特別な映画なのです。
ソラリスという惑星は海に覆われていて、上空に宇宙ステーションが浮かんでいます。
そのステーションにいた宇宙飛行士が、つぎつぎに幻覚を見るので、心理学者のクリスが調査に行く話です。
クリスというのは中年男性ですが、一見すると宇宙飛行士らしいところは一つもない普通のおじさんです。
映画が始まったとき、まず何が出てくると思いますか?
水中で流れにそよぐ水草です。とてもゆったりとそよいでいます。
数分間そよぎ続けます。水の音がたえまなく続きます。
催眠術か? と思うような映像です。
カメラが移動して、やっと草原に立つ男性が出てきて、これが主人公のクリスです。
クリスが鳥の鳴く森を通って、水辺にある家に帰ると、父親がお客さんを迎えていました。
クリスは、どうやら明日の早朝ソラリスに飛び立つらしいです。
そうとは思えない田園風景なんですが、とにかく綺麗です。
このペースで3時間近く続けるのは無理なので、急ぎますね。
宇宙の描写は星空のみ、という簡略さ。
宇宙飛行の描写は、クリスの顔のアップのみ。
原作はSFですが、科学の要素は最小限の映画になっております。
あっという間に宇宙ステーションに着きました。
中に入ると通路は散らかって人もいない。
このステーションには3人の科学者がいることになっていましたが、どうやら一人は自殺したらしい。
ステーション内は生活感ゼロ、食事するシーンはまったくありません。
もはや思考実験の舞台となっています。
ステーションの窓の外には、ソラリスの海が広がっています。
海は最初は波もなく穏やかですが、海が活発に泡立っていくにつれて不思議なことが起こっていきます。
ソラリスの海は人間の思考を読み取って、具現化する働きがあるようです。
クリスの場合は、十年前に亡くなった妻のハリーが自分の部屋に現れました。
ハリーはいわゆるロシア美女なので、黙って座ってるだけで名画のような美しさ。
いくら美女でも、死んだはずの人間が目の前に現れたら、イヤですね。
だから、クリスはハリーをロケットに乗せて、宇宙に追放します。
しかし、部屋にもどると、やっぱりハリーがいて「自分はだれなのか」と悩み始めます。
ゾンビとも違いますが、ハリーはクリスの思考の具現化だから、何回でも生成されるようです。
1970年代は携帯電話すらなかった時代ですが、なんとなくソラリスの海ってインターネットに似ていますね。
ハリーは生成AIの産物のようです。
人間のデータから生まれたのに、だんだん自我をもって悩み始めます。
そして自殺までしますが、死ぬことはできないので、生き返ります。
クリスも悩んでいます。
ソラリスの海に放射線を当てて破壊して、地球にもどるか。
このままステーションでハリーと過ごすか。
結局ハリーは自分で消滅する道を選びます。
ラストで、クリスはもとの家で父親に再会しますが、それもソラリスの海が作った幻影でした。
という、ちょっと不可解なラストまで、一気に観ました。
とにかくバッハが神秘的、ずっと悩み続ける主人公たち、地球の自然の美しさ、未来都市として日本の首都高が映される、無重力空間を漂うシーンが素敵、宇宙でも図書室で紙の本を読む科学者たち、と盛りだくさんな3時間でした。
だけど、この映画は、人の記憶を刺激するし、たぶんAIとの関係を考えるのに役に立ちそうだと思いました。
時間のない方は、たとえ早送りでも観ることをおススメします。

#映画感想文 #惑星ソラリス #アンドレイタルコフスキー #タルコフスキー #ソ連映画 #SF映画 #映画レビュー #映画感想 #映画好きと繋がりたい #映像の詩人 #記憶と映画 #AIと映画 #哲学的な映画 #バッハ #水草のシーン #長回し #美しい映画 #難解な映画 #映画体験 #映画の解釈 #映画考察 #映画好きな人と繋がりたい #おすすめ映画 #週末映画 #おうち映画
いいなと思ったら応援しよう!
もし応援いただけましたら、明日も書くエネルギーが出ると思います😊