「連帯保証人にはなるな」と言うけれど、保証人ならなってもいいの?
1.クエスチョン:保証人と連帯保証人
「連帯保証人にだけはなるな」。一昔前、親や親戚からそう言い聞かされた記憶のある方も多いのではないでしょうか。人生の先輩たちが繰り返してきた、重みのある忠告です。
ただ、法律に関わる仕事をしていると、この言葉を聞くたびに少し引っかかることがあります。連帯保証人がだめだというのなら、連帯のつかない、普通の「保証人」ならなってもいいのでしょうか。
結論から言えば、そんなことはありません。普通の保証人も、十分にリスクのある立場です。
では、保証人と連帯保証人は、いったい何がどう違うのでしょうか。今回はそこを整理してみます。
2.関連する法律:民法446条・447条・452条・453条・456条
(1)そもそも保証とは何か
保証とは、主債務者(お金を借りた本人)がその借金を返さないときに、代わりに返済する義務を負う契約です。
契約の当事者は、保証人と債権者(お金を貸した側)。借りた本人ではありません。
民法第446条第1項 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
そして、保証人が背負う責任は借りた元本についてだけではありません。
民法第447条第1項 保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
「100万円の保証人になった」つもりでも、実際に請求される金額は、そこに利息や遅延損害金が積み上がった額になります。
しかも保証人は、原則としてこの契約から何の対価も受け取りません。得るものがなく、失うものしかない契約なのです。
(2)普通の保証人が持っている3つの「盾」
では、普通の保証人と連帯保証人は何が違うのか。民法は、普通の保証人にだけ、3つの防御手段を与えています。
1つ目は催告の抗弁です。
民法第452条 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。
いきなり自分に請求が来たら、「先に本人に請求してください」と言い返せる、という規定です。
2つ目は検索の抗弁。これは、主債務者に財産があることを示して、先にそちらから取り立てるよう求められる権利です。
民法第453条 債権者が主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。
3つ目は分別の利益です。保証人が複数いる場合、各保証人が負担するのは頭数で割った金額だけで済む、という考え方です(民法第456条)。保証人が2人なら、それぞれ半分ずつということになります。
連帯保証人には、この3つがいずれもありません。だからこそ「連帯保証人にはなるな」と言われてきたわけです。
(3)その盾は、どれくらい役に立つのか
問題はここからです。この3つの盾が、現実にどれだけ機能するのかを考えてみてください。
まず検索の抗弁は、「主債務者に弁済する資力があり、かつ執行が容易であること」を、保証人の側が証明しなければなりません。ところが、債権者が保証人に請求してくるのは、そもそも主債務者が払えなくなった場面です。本人に十分な財産があるなら、債権者はわざわざ保証人のところへ来ません。つまりこの抗弁は、それを使いたい場面ではまず成り立たない、という構造になっています。
催告の抗弁も、「まず本人に請求してください」と言えるだけの話です。債権者が主債務者に一度催告すれば、それで役目は終わります。支払いを免れる権利ではなく、順番を一度ずらすだけの権利なのです。
分別の利益については、複数の保証人がいる場面では実際に差が出ます。ここは正直に認めるべきところです。ただ、あなたが唯一の保証人であれば、そもそも分ける相手がいません。この盾は出番なく終わります。
こうして見ていくと、普通の保証人と連帯保証人の違いは、請求をどう受けるかという「手続の入口」の差であって、最終的にいくら払うことになるかという「出口」の差ではない、ということが分かります。
(4)法律が保証人を守ろうとしてきた歴史
保証がそれだけ危険な契約であることは、立法府もよく分かっています。
かつては、口頭の約束だけでも保証契約は成立していました。「迷惑はかけないから、名前だけ貸してくれ」と頼まれ、その場の空気で「いいよ」と答えた。それだけで、法的な責任が生じてしまっていたのです。
そして実際に、そうして軽い気持ちで保証人になった人が、後になって重い責任を負わされる事態が相次ぎました。
そこで平成16年の民法改正により、次の規定が置かれます。
民法第446条第2項 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
書面がなければ、保証契約は無効です。この改正の狙いは明確です。保証は、保証人にとって一方的に不利益な契約であるうえ、断りにくい人間関係の中で結ばれやすい。だからこそ、署名するという一手間を挟ませることで、その人を一度立ち止まらせようとしたのです。
その後の改正でも、特に事業の借入れを第三者が保証する場面については、さらに慎重な手続が求められるようになりました。法改正の流れは、一貫して保証人を守る方向に動いてきたと言えます。
3.つまりどういうこと?
「保証人にはなるな」。この忠告は正しいのですが、言葉が足りていません。
正確には、「保証人にも、連帯保証人にも、軽い気持ちでなってはいけない」とすべきです。
・連帯保証人でなければ安全か → 安全ではありません。普通の保証人も、主債務者が払えなくなれば、元本に加えて利息や遅延損害金まで含めた全額を請求されます(民法第447条第1項)。
・では、3つの抗弁があるのだから多少はましなのでは → 名目上はそのとおりですが、催告の抗弁は請求の順番を一度ずらすだけであり、検索の抗弁は主債務者に資力があることを保証人が証明しなければならず、実際に必要となる場面では機能しにくい規定です。
・唯一はっきり差が出るのは → 保証人が複数いる場合の分別の利益です。あなたのほかにも保証人がいるなら、普通の保証では頭数で割った分だけを負担すれば足ります。
ただし、あなたが一人だけの保証人なら、この差もありません。
もし今、誰かから保証人になるよう頼まれているのなら。
連帯かどうかを確認する前に、その借金を自分が肩代わりすることになっても生活が続くかどうかを、まず考えてみてください。
答えが「無理だ」であれば、連帯であってもなくても、答えは同じです。
連帯保証人も保証人も、相当の覚悟があるときでなければ、なってはいけません。
※本記事は一般の法務部員Fの個人的見解です。なるべく正確な内容になるよう検討を行ってはおりますが、あくまでも一個人が趣味で行った検討であるため、こういう見解もあるのだと広い心でお読みください。記事の内容につき異論は認めます。個別のトラブルでお困りの場合は、弁護士等の専門家にご相談ください。
