【じーじは見た!】前編:出版産業における返品削減研究会を見てみた!
Z世代応援団、未来世代応援のじーじです!
さて、今回は、出版社だけでなく町の本屋さんの未来にとっても大切な「返本」の削減に関する研究会のとりまとめ資料を確認してみましょう。

ごらんのとおり「雑誌・書籍」合計の紙の「本」販売額は、コロナ禍を経ておうち消費が増えた2021年度の拡大・反転を除けば、1996年のピークからずっと右肩下がりで減り、96年の6割水準にまで落ち込みました。正に失われた30年です。
一方、電子出版は、統計数字が現れた2014年から一貫して右肩上がりで販売額が伸びています。既に雑誌の販売額を上回り、書籍の販売額に迫っています。
紙の本にとって返本リスクを書店に負わせてしまうと、益々全国の本屋さんが閉店していくでしょうし、返本リスクのない電子出版は今後益々増えていくと思われますが、町の本屋さんが無くなってしまうのは寂しい限りです。
町の本屋さんを守り、紙の本を維持していくための返本削減研究会とやらがどんなとりまとめをしたのか、一緒に確認していきましょう。
1️⃣ 出版産業における返品削減研究会発足の背景
昨年の通常国会閉幕前の6月24日に第1回会合が開催された「出版産業における返品削減研究会」は、発足から3回の会合を重ね、2026年4月21日にとりまとめを発表しました。
委員は、下記のとおり、学者さんを座長に出版・印刷・取次店・書店から幅広く選出されています。

書店経営は、ある意味で特殊です。
今時珍しい定価販売が原則です。
しかし、その制度でもって全国どこでも同じ価格で本が買える体制を維持してきました。

出版社が本の価格を設定し、取次・書店は決められた価格(定価)で販売する再販制度による定価販売によって、 読者が出版物に接する機会の均等化が図られる制度に守られてきただけでなく、出版社や取次、そして書店も守られてきたのです。特に書店は、新刊本を定められた期間内であれば、売れ残りを返品できる委託販売制度で守られてきました。
これが、多種多様な出版物の供給が可能になった昭和の成功モデルでした。
出版社が家電業界などと違うのは、この制度によって小売り(書店)から価格決定権を剥奪している点です。そしてこの制度のお陰で老舗出版社は、かつての儲けで取得した財産(不動産)が今の安定した経営の礎になっているのです。
しかし、そんな本の世界も今過渡期を迎えています。

本を売ってくれる書店が過去20年間で4割以上減ってしまったのです。
町の本屋さんの消滅を危惧し、2024年3月に「書店振興プロジェクトチーム」が経済産業省に立ち上げられました。その中で返品率の高さが、業界関係者共通の課題としてクローズアップされ、この研究会に繋がりました。
2️⃣ 書籍33.2%、雑誌43.8%の返本率
本の書店からの返品率は、2024年書籍で33.2%、雑誌で43.8%という高いものです。
その理由としては、
①出版社・取次の配本が書店のニーズに合わない場合がある
②書店側は在庫リスクを負わな いため、実際の販売可能数等を十分踏まえた発注を行うケイパビリティが不足している
と、あたり前のことを事務局は書いています。

上記図を見るまでもなく、返本によって物流費は倍掛かっている訳ですし、在庫保管や廃棄コストまで掛かる訳で、今に始まった課題ではなかったハズです。
定価販売の再販制度と売れ残り返品リスクを書店が追わない商慣習が、現代の多様なニーズにマッチしないことは分かっていても、この制度(既得権益)を維持するために、全国の書店を金太郎飴書店にしてしまい、顧客に見放された責任は、出版社自身にあり、取次の責任でもあるのです。
四半世紀も前の2001年にこの研究会に代わって彼らに必要な未来を言い当てていたジャーナリストがいました。


3️⃣ 全体最適を志向できない日本
佐野眞一さんの問題提起から25年、日本政府も出版業界も何もしてこなかった訳ではないのです。
第3回の会合資料で示された「書店活性化プラン」とやらの施策一覧を下記しますが、私が何を言いたいかは、定年のおっちゃんねるをお読みの方ならお分かりですよね。



そうなんですよ。いつもの課題認識そのものの現象です。
日本の個別最適、必ずしも幸せにあらずです。
中小企業庁は町の本屋さんが全滅しないようによく頑張っている。
文化庁も文化としての紙の「本」を守ろうとして頑張っている。
国土交通省までもが書店のリノベーションの経済的支援を頑張っている。
文科省も町の本屋さんと共に図書館を維持するために必死に頑張っている。
再販制度に関して公正取引委員会まで出てきて変わろうと頑張っている。
地域未来戦略本部も地方創生に書店が活用できないかを考えている。
経済産業省は、産業の維持・発展のために頑張っている。
個々の省庁はみんな頑張っているんですよね。
個々はみんな頑張っている。
でも結局、司令塔不在で、個々の省庁がバラバラに有識者会議をやってガイドラインや中間とりまとめを発行して一丁上りです。
後は業界や地方自治体に「やっとけー」の丸投げ行政、いつもの無成長30年方程式の繰り返しだったわけですよね。
丸投げされた業界も、個社、個社が必死になって個別最適なスキームでビシネスモデル構築に必死に頑張っている訳です。
だけど事「本」に関して言えば、流通の既得権益に風穴を開けたのは、米国のアマゾンでした。
アマゾンのプラットフォームが、消費者を起点にした全体最適だったということです。
一方、日本の出版業界は、我さえ良かったらいいというライバルを打ち負かす排他システムづくりにコストを賭け、取次業界もライバルを打ち負かすための個別最適システムを創り上げようと書店を巻き込もうとしてきたものの、書店経営は良くなるどころか閉店が加速していったというのが実態です。
さて、とりまとめには、どんな処方箋を書いているのでしょうか?
あまり期待できないですが、後編でみていきましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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