今の日本は貧困国なのかもしれない
先日、自衛隊についての古賀議員の発言が問題視されました。
自衛隊に行く子供たちって、経済的に厳しい子供たちが行くんですよ。豊かな子供たちは自衛隊とかなりませんよ
確かに、自衛隊に行く人の全員が経済的に厳しいとは限りませんが、この発言は貧困への対応策として自衛隊を選ぶ人がいるのでは、という重要な指摘でもあると思います。
では、そうした「経済的に厳しい」子どもってどれくらいいるんだろうと思っていたところ、次のポストが目に留まりました。
古賀議員の発言で触発されて色々な人が資料や事実を探し出し、発表している。驚いたのは、日本の貧困が6人に1人という貧乏国だと言うこと。子供の貧困率は11%以上で、ワースト10に入るし、ひとり親家庭の子供の貧困率は44%と、世界でも群を抜いて悪い。日本は貧乏が蔓延している恥ずかしい政治の国なの…
— 中野彰子 (@Toki2199r) June 22, 2026
え、日本の貧困てそんなに大変なの?と驚き、調べたことを、このnoteでは書きたいと思います。
日本は世界8位の貧困国?
Googleで貧困率の国別比較を探してみると、国際統計・国別統計専門サイトであるグローバルノートの世界の貧困率国別ランキングが出てきます。このランキングでは日本はなんと第8位とTop10入り。貧困率は15.4%です。

これをXに投稿したところ、さまざまな批判コメントがつきました。多かった批判は、貧困率には絶対的貧困と相対的貧困があり、相対的貧困(このランキングの貧困率)はたいした問題ではないので、このデータは間違い、あるいは誤解を招く、というものです。
果たしてそうでしょうか?わたしはこのデータも重要だと考えます。
相対的貧困と絶対的貧困
何をもって貧困とするかについては、さまざまな計算方法があります。まずは相対的貧困と絶対的貧困の定義を見てみましょう。
相対的貧困
相対的貧困とは、その国や地域の水準の中で比較して、大多数よりも貧しい状態のことを指しています。所得でみると、世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分(貧困線)に満たない状態のことを言います。
絶対的貧困
絶対的貧困とは、国・地域の生活レベルとは無関係に、生きるうえで必要最低限の生活水準が満たされていない状態を示します。私たちが一般に「貧困」と聞いてイメージするのはこちらでしょう。
相対的貧困とは、言葉通りその国や地域の水準と比べて相対的に貧しい状態です。具体的に「世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分(貧困線)に満たない状態」というのはどれくらいかというと、
基準となる貧困線は、総務省の全国消費実態調査では 135 万円(2009 年)、厚生労働省による国民生活基礎調査では 122 万円(2012 年)とされています。(注2)
直感的には高齢者が多いと相対的貧困率が高くなるのでは、とイメージするかもしれませんが、実際は高齢者に加えて、ひとり親世帯が多いそうです。確かに、子どもを抱えて年収が122万円では相当厳しいはずです。が、子どもがいるからこそ、労働時間を制限せざるを得ず、こうなってしまうのかもしれません。
憲法25条では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定められていますが、子どもを抱えて年収が122万円では、健康で文化的な最低限度の生活は難しいかもしれません。
ひとり親世帯の貧困率
厚生労働省が発表した「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、ひとり親世帯の貧困率は44.5%に達し、ひとり親世帯の子どものうち約2人に1人が貧困に直面していることが示されています(ひとり親世帯の貧困)。しかもなんと、日本のひとり親世帯の貧困率はOECD加盟国のうちデータがある36か国の中で、ワースト5位(ひとり親世帯の貧困)。
また、男女共同参画局の「男女共同参画白書 令和5年版」によれば、ひとり親世帯の約89%が母子世帯であることから、ひとり親世帯の貧困問題は主に母子世帯の貧困問題であると言えます(ひとり親世帯の貧困)。
ただでさえ、少子化が進む日本。貴重な子育て世帯のうち、ひとり親世帯の半分が貧困状況にあるなんて、これは政府や自治体が援助して、少しでも子育てがしやすいようにするべきでしょう。これだけ貧困率が高いのはもはや個人の努力の問題ではなく、社会制度に問題があると言わざるを得ません。
さらに同じひとり親世帯でも、母子世帯が貧困状況に陥りやすいというのは、日本の男女差別を反映した問題なのかもしれません。同じひとり親世帯でも女性のひとり親世帯の年間平均収入が246万円なのに対し、男性のひとり親世帯の年間平均収入が496万円と大きな差があることがデータで示されています(ひとり親世帯の貧困)。
子どもの貧困
厚生労働省の調べによれば、日本の17歳以下の子どもの貧困率は11.5%(2021年)で、約8.7人に1人のこどもが貧困状態にあるともいわれています(“こどもの貧困”は社会全体の問題 こどもの未来を応援するためにできること)。この貧困率は上記の相対的貧困率ですが、問題は深刻です。具体的にはこんな子どもがいるそうです。
・栄養バランスのとれた食事は、1日の中で給食しかない。
・高校や大学、専門学校に進学したいけれど、経済的な理由で諦めている。
・頑張っても仕方ないと将来への希望をなくし、学ぶ意欲をなくしている。
・こどもだけの時間が多く、保健衛生などの知識や生活習慣が身につかない。
・視野を広げる機会や文化的な体験に乏しく、こんな人になりたいというロールモデルがいない。
・人とのつながりが少なく、社会的に孤立している。
こうした子どもが、経済的理由があっても大学に行くために、入学金と授業料が要らず、通学するだけで生活費がもらえる防衛大学を選び、その後自衛隊に入隊するケースもあるのではないでしょうか。
「30年代前半までに」最低賃金1500円達成
高市早苗首相は最低賃金の全国平均1500円の達成に関して「遅くとも2030年代前半のできる限り早期に」と表明する。足元の物価高を踏まえ、持続的に賃金を引き上げる環境を整える狙いだ。近く開催を予定する日本成長戦略会議で説明する。
なぜひとり親世帯がこんなに困窮しているのか。まず原因として考えられるのは、フルタイムで働けない、働けたとしても時給が安い、からではないでしょうか。それなのに政府は2030年代前半までに最低賃金の全国平均を1500円にする、なんていう悠長なことを言っています。ミサイルや潜水艦など、防衛費を増額したり、80兆円もの対米投資をしたりする前に、まずは国を担う子どもたちに十分な支援をすべきではないでしょうか。それとも子どもたちを困窮させて、自衛隊に入らざるを得ない状況、アメリカの「貧困の徴兵(poverty draft)」のような状況をわざとつくっているのでしょうか?
『東京貧困女子。』にみる、女性の貧困の具体例
東洋経済オンラインでの連載が書籍になり、ドラマ化もされた『東京貧困女子。』。貧困とは特別なことではなく、ちょっとした歯車のかけ違いで、誰でもそうなる可能性があることがよくわかります。そして女性はその対処法として水商売を選ぶことがある、ということも。
例えば、経済的に厳しいのに、医学部に行って部活もしたい。そのために水商売をする女子大生。夫がうつ病で働けなくなり、貧困に陥る妻。姉の介護で貧困に陥る女性。初めての職場でパワハラに遭い、結婚しても夫からのハラスメントで精神を病み、貧困に陥る女性。これはいずれも誰にでも起こり得る問題ではないでしょうか。貧困かそうでないかは、個人の努力ではなく、ほとんど運のようなものではと思えてきます。また、行政に支援の手段があってもそれを受け入れなかったり、そもそも相談すらしない、貧困を恥とする日本的な考えも貧困が深刻化する原因かもしれません。
まとめ
以上、日本の貧困についてさまざまな数字をもとに見てきました。日本で問題となるのは相対的貧困率の高さで、6人に1人が貧困状態にあります。具体的にはひとり親世帯の2人に1人が貧困状態に、子どもも約9人に1人が貧困状態にあって、栄養バランスが取れた食事は給食だけ、なんて子も。
また、ひとり親世帯の貧困は、母子世帯の貧困の問題でもあります。行政の支援も大切ですが、根底にある日本の女性差別も撤廃する必要があります。
貧困は自分とは関係ないと思っている方も、『東京貧困女子。』を観れば考えが変わるかもしれません。ちょっとしたボタンの掛け違いで、今の日本人は貧困状態に陥る可能性があります。その意味で、今の日本は貧困国なのかもしれません。
