「塵も積もれば山となる」
「自分が何を持っているか、そしてなぜそれを持っているかを知りなさい」
— ピーター・リンチ
— ウォーレン・ババット
先日、ありがたいことに『noteマネー』の編集部にピックアップしていただいた前回の記事で、私はある「警告」を鳴らしました。現在のAI株バブルは、現代版の「裸の王様」ではないかという指摘です。多くの投資家が「時代の波に乗り遅れて無能だと思われる恐怖(FOMO)」から、中身のない約束や華やかなパワーポイントのプレゼン資料に、必死になって大金を投じています。
しかし、財布の紐を固く締めるからといって、お金をただマットレスの下に隠しておけばいいというわけではありません。大切なのは、「実体のない流行(ハイプ)」ではなく、「現実の価値」に投資することです。
かつてアメリカの有名な起業家ヴィクター・キアムは、テレビCMでこんな伝説的なキャッチフレーズを残しました。
「このシェーバーがあまりにも気に入ったから、会社ごと買い取ってやったよ」
もちろん、私たちは彼のような大富豪ではありません。会社を丸ごと買い取ることはできませんが、彼の「ロジック」はそのまま応用できます。私たちが目指すのは、もう少し身近で確実な投資です。
「第二の購入」というルール
私の投資哲学は非常にシンプルです。
「まず商品(グッズ)を買い、それが気に入ったら、第二の購入としてその会社の株を買う」
考えてみてください。お店に立ち寄り、一生懸命働いて稼いだお金で製品を買い、家に持ち帰って、それが何年も完璧に動いてくれたとします。その瞬間、あなた自身の手で「究極の市場調査」を完了したことになるのです。
ピーター・リンチが言うように、投資において最も重要なのは「なぜその株を持っているのか」を説明できることです。あなたのリビングルームやキッチンにある家電が、すでにその答えを証明してくれています。ウォール街のアナリストの小難しい解説をわざわざ読む必要はありません。
たとえば、ソニー(Sony)やパナソニック(Panasonic)。私はこれらを日常的に使っています。自分にとって本当によく働き、役に立ってくれています。もし実生活の中で機能している実績があるなら、なぜまだ何も生み出していない、実績のないAIスタートアップに奇跡を期待して大金を賭ける必要があるのでしょうか?
このルールに基づいて株を買うということは、すでにあなたの信頼を勝ち取っているブランドへ「二度目の購入」をするということなのです。
ケチャップ・テスト:「小さく考え、大きく育てる」
ここで、日本の有名なことわざが活きてきます。
「塵も積もれば山となる」
これこそが、偉大で安全な企業が作られる仕組みであり、私たちが投資において実践すべき姿勢です。
ハインツ(Heinz)の伝説的な元CEO、トニー・オライリーはこの心理を深く理解していました。彼はかつて、「アメリカ中のすべてのダイナー(大衆食堂)のテーブルに、ハインツのケチャップボトルを置きたい」と宣言しました。なぜでしょうか?
「外食のときにそれを使ってお金を払っている人は、自宅のキッチン用にも自動的に同じものを買うようになる」と知っていたからです。
オライリーは、実体のない複雑なテクノロジーのトレンドを追いかけたわけではありません。彼は「ケチャップのボトル」という、人々の小さくて地味な日常の習慣に焦点を当てました。しかし、何百万人もの人々がその小さな習慣を毎日繰り返すとき、その一つひとつの「塵」は、やがて莫大な利益を生む「山」へと姿を変えるのです。
投資をするときは、日常の塵から築かれた山を探してください。壁に掛かったソニーの画面や、キッチンにあるパナソニックの製品が、まさにその山です。
本物の「安全域(マージン・オブ・セーフティ)」
現実的に考えて、このアプローチで大失敗することは極めて低いです。すでに世界的に確立された老舗企業に投資することで、リスクは大幅に抑えられます。
たとえばソニーは1946年から存在しています。幾度もの世界的な危機、不況、そして過去のテックバブル崩壊を乗り越えてきました。それは、彼らが常に「目に見える、触れることができる実用性」を作り続けてきたからです。
これはウォーレン・バフェットの「10年ルール」に直結します。ソニーのような確固たる土台を持つ巨人であれば、10年間安心して保有し続けることができます。
もし明日、世界的な大停電が起きたり、AIバブルが完全に崩壊したりしたらどうなるでしょうか? AIスタートアップたちの「見えない服」は一瞬で霧のように消え去るでしょう。中身がないのですから、株価がゼロになってもおかしくありません。
しかし、それでも人々はテレビを必要とし、家電を使い、カメラのセンサーやバッテリーを求め続けます。確立された巨大企業には「床(底値)」があります。彼らには物理的な資産があり、本物の工場があり、何十年にもわたって世界中の顧客と築いてきた信頼というセーフティネットがあるのです。
結論:あなたのキッチンカウンターを信じなさい
10分先の未来にギャンブルを仕掛ける投機家たちに、実体のない最新ファッションとしての「AIの服」は譲っておきましょう。
私たちは、自分自身の目の前にある、小さな日常生活に目を向けるべきです。あなたのその小さな選択が、世界中で何百万人もの人々によって掛け算されていることに気づいてください。
「グッズを買い、そしてシェア(株)を買う」
最高の投資リサーチは、シリコンバレーの役員室に隠されているわけではありません。それは、すでにあなたの家のキッチンカウンターの上に、静かに置かれているのです。

