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あの日の空はまだ、赤かった|片想い文芸部

放課後の教室には、夕陽が差し込んでいた。
赤く染まった黒板と、風に揺れるカーテンの音だけが静かに響いている。

「……じゃあ、行くね」

彼女が笑ってそう言ったとき、僕は返事をする代わりに、鞄の紐を強く握った。

春からずっと好きだった。
同じクラスになって、隣の席になって、ただそれだけで世界が変わった。

最初は目が合っただけで嬉しくて、少し話せただけで眠れない夜が来た。
だけど、彼女にはずっと好きな人がいて。
その好きな人に、今日、告白しに行くのだという。

「緊張するけど、がんばるね」

彼女の声が弾んでいる。
大事な友達として、応援してほしいと頼まれた。
その言葉を断れるほど、僕はずるくはなれなかった。

だから、今日。
僕は教室に残って、一人きりで彼女の帰りを待っていた。
結果なんて聞きたくなかったけど、「また話聞いてね」と言われたから。
そう約束したから。


夕陽が沈みかけた頃、窓の外に彼女の姿が見えた。
向こうから、もう一人の影が歩いてくる。
彼女は笑っている。
遠くて顔は見えないけど、あれは……。あれは、きっと成功した笑顔だ。


「よかったね」

喉の奥が痛かった。
それでも、誰にも聞こえないように独り呟いた。

教室の椅子に沈み込んで、空を見上げる。
少しずつ夜の色が混じり始めた空は、どこまでも綺麗で、そして残酷だった。

カバンの中には、誰にも見せられないままの手紙がある。
何度も書き直して、何度も渡そうとして、結局今日まで渡せなかった。

たぶん、もう出番はない。
僕の想いは、ひっそりとこの教室に置いていかれるのだろう。

彼女の声も、笑顔も、全部――あの人のものになった。

まるで忘れられて置いていかれたぬいぐるみみたいに。
拾われなかった僕は落とし物。


ナルさんの #片想い文芸部 に参加させていただきました。
いや〜〜まさか「飛行機雲ができる理由」の歌詞から落とし物をピックアップするとは。
エモい曲ですよね。そんなエモいお題にピッタリな小説を書けたはず。
次のお題も楽しみです😊

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