「春の風」
俺が夜空で新しい星座をつくって遊んでいると、
世紀末の覇者がやってきて話しかけられた。
どうやら彼は友だちを探してるらしい。
道をはぐれたのかと思って聞くと、
友だちを作りたいという意味での「探す」とのことだった。
俺はそもそも覇者なんかになるから、そんな事になるんだと思い、その旨彼に伝えた。
すると彼は薔薇のように頭部がはらりとしてしまった。
あーあ、この事態を人に説明するのが面倒だな...
そんな事を考えた俺は、取り敢えず彼を慰めようと思い、アイスクリームを買ってきてあげた。
彼は「ソフトクリームをありがとう!」と言う。
何度それはアイスクリームだと説明しても、
彼はソフトクリームと呼ぶのをやめなかった。
だんだんと俺は憤慨してきて、アイスクリームを取り上げてやった!
すると彼は「ソフトクリームを返して欲しい」と泣きながら懇願している。
これが仮にも〈覇者〉となった男の姿だろうか。
なぜ彼を見ていると泣きそうになるんだろう。
でもきっとこれで良い気になって俺が覇者を目指すと、あっという間に壁に阻まれてしまうんだろう。
彼はその壁を易々とすり抜ける。
「才能は性格に宿る訳じゃないんだなぁ。」
何となく俺は絶望するような心地であったが、
同時にまだここには無いはずの春の風のぬるさを感じていた──。
