松山の学生のお腹を満たした「勝山協食」が6月で閉店
昭和・平成・令和と松山市内の学生、特に体育会系男子の腹を満たしてきた「勝山協食」(松山市清水町3丁目)が6月末、約40年の歴史に幕を下ろす。

中学~大学が集まる文京エリアにあり、量の多さと満足感で知られるお店。
部活終わりの学生らで賑わってきた。

店主の宮岡洋子さん(89)は「足も痛いけんな。そろそろひと休みしたいよ」と閉店理由を話す。
大盛りのご飯(久万高原町面河のお米を使用)、新鮮な野菜、すべて手づくりのタレやソース、国産の肉など「自分の子どもに食べさせるつもりで」できるだけ自然を生かした素材で作り続けてきた。
店頭でそれをアピールしてないのはどうして?
「当たり前のことを言う必要なかろ」と笑う。

原材料や光熱費などあらゆる値段が上がり、近年は赤字経営。
価格を上げて量を守るか、価格を維持して量を減らすか。
「そこのコメ、いくらすると思う? ちょっと前の倍よ」
悩みに悩んだ。
常連客らに尋ねたすえ、大盛りを続けることにした。
お腹いっぱい食べてもらうという開店当初からの思いを守った。

だからメニューを眺めても、それほど高いとは思わないものの、かつてのイメージほど安くない。
開店当初は「焼めしとか300円切っとったんじゃないかな」。
味と量を守るためとはいえ、宮岡さんは少し寂しそう。
学生の食生活の変化も大きい。
ご飯(お米)を食べる機会が減っている。
今の学生はバイト先を探すのも簡単ではなく、安い食事で済ませてしまうことが増えていると感じている。

(許可を得て撮影しています)=5月27日
開店5年後から1990年代が一番忙しかったと振り返る。
午前10時に店を開け、午前零時までずっと料理をつくり続けたこともあった。後片付けに2時間。
「寝る間もなかったよ」
この頃は薄利多売でビジネスが成立していた。
立ちっぱなしで自分が食べる時間がない。
ある休日、外出先で意識を失い、救急車で運ばれた。
診断は栄養失調。
「食堂やってて、こんなことになるなんて」と医師に叱られたという。
◆
白ご飯を腹いっぱい、というコンセプトは幼少期の戦争体験が大きい。
話がノッてくると伊予弁でリズミカルに話す宮岡さんだが、「戦争はね、怖いんで。寂しいんで」と言葉を詰まらせた。

松山市沖の中島(旧中島町)出身。
祖父が船主で豊かな家だった。
下関ー大阪を結ぶ航路は最初に荷を届けた船にボーナスが出た。
祖父が持ち帰る大量のスイカはうれしかったが、数の子が食べ切れず、今でも苦手だと笑う。
だが船は軍に接収され、中島東小(現中島小)1年の12月28日、父に赤紙(召集令状)が届き、後にシベリアに抑留される。
残されたのは母と弟妹。つらい暮らしが待っていた。
戦時ゆえ、煮炊きの煙を出せない。空襲警報が鳴れば食事どころではない。
中島沖を行き交う貨物船が米軍飛行機に攻撃され、家の前の道路を負傷者が運ばれていくのを見守ったこともある。
6歳下の弟を背負って登校し、泣くと授業の邪魔だと廊下に出された。
母が帰って来るまでに食事をつくるのも宮岡さんの仕事。
「島にはジャガイモと魚はあったけんね」
でも、白米の多くは弟に分け、自分は麦飯ばかりだったという。

大工の夫と結婚し、専業主婦だった。
現在一緒に店を切り盛りする娘さんによると、当時は料理も上手じゃなかったそう。
宮岡さんは「釣りが好きやったねぇ」と笑う。
現在の店の場所で30~40年ほど営業していた食堂が営業を止めると聞き、知り合いの中華料理店で修行して勝山協食を開いた。
最初の数年は苦労したが、徐々に客が集まった。
お好み焼きもメニューに加えた時期もあったが、客が増え、効率が悪いと止めたそう。

昔通った客がたまに顔を出し「まだやってた!」と喜んでくれる。
だから閉店して「ひと休みしたら、ここでまた何かやりたい。何かは決まってないけど」。
温泉に行きたい、と穏やかな表情を浮かべた。
テーブル席で話していたところへ新しいお客さんが来た。
「はい、仕事仕事」と宮岡さんは少し足を引きずりながら厨房へ。
覗かせてもらって驚いた。
掃除が徹底され、過ぎた年月が信じられないほどピカピカ。
40年前と同じ設備よ、と誇らしげ。

勝山協食の歴史は残り1か月ちょっと。
最後の日まで「お腹いっぱい」を提供する。
◆
ライター㋶が食べた肉みそ定食。
ご飯の量は減らしてもらってこれ💦
濃いめの味でご飯が進む進む。唐揚げもGOOD。キャベツもシャキシャキ。
超満腹でした。

勝山協食は営業時間10時~17時。火曜定休。駐車場あり。
以上です。
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