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長浜機設 × EIS あなたはここまで若者に教えを乞えるか?

若い人に教えを乞う。
誰にでもできることだが誰もできてない。
キャリアは自分が上、社会的地位も自分が上。
プライドが高くないつもりでも、無意識に経験則や成功体験が邪魔をする。
愛媛県の長浜機設(大洲市長浜町)は、人手不足で喘あえぐ建設業界の中で安定的に新卒を採用できている。
福岡信一社長(46)は自社アピールでなく、業界のことを知ってもらうことから始め、若者に寄り添い、地道に活動してきた。
分かりやすい言葉、引き込まれる話術、起業し会社と社員を育てた豊富な経験。
地方の小さな会社がなぜ採用に成功しているのか、講演依頼が来るほどだ。
だが慢心は微塵もない。
#ヒキダシのメンバー EIS(松山市)に採用アドバイザーを依頼し、10歳近く年下の西村友祐代表(36)を頼る。
リクルートサイトのアップデートをはじめステップアップを続け、今期は初めて大卒を新規採用した。

壁一面に張られた社員のプロファイルを
説明する長浜機設の福岡信一社長

松山市から日本で一番細長い半島、佐田岬に向かう海岸線。
長浜機設は国道から入ってすぐの2階建て。海水浴場の松の木が見える。
玄関には社員が取った資格の一覧が張り出されている。
社員35人にしては多い。うちの社員は有能でしょ、と誇っているように見える。
福岡社長は笑い飛ばした。
「次はこの資格取ったらええやん」と社員に話しやすいよう入口に掲示してるだけ、と。
だがこれだけ有資格者がいることは、近隣から全国まで幅広く仕事を展開するのに役立っているに違いない。

社長は昔、ある現場で言われて悔しい言葉があった。
「足場組立だけしかできんのなら、もう帰ってええよ」
多能工という言葉を知る前だった。社員にそんな思いはさせない。
採ったら育てる。

長浜機設本社の入り口近く。社員が取得した資格が並ぶ

マグロ漁船か原発か

地元出身。松山市での飲食店経営で派手な暮らしも経験したが、挫折して帰郷。
近くの妻の実家に身を寄せた。アメ車がボロボロの軽四になった。
マグロ漁船か原発か。一発逆転はこれしかないと思った。
漫画「ミナミの帝王」に出てくるようなセリフ。
ただ社長は漫画の上を行く。長浜から車で40分弱の伊方原発で本当に仕事を始める。

仲間はいたが一人親方ひとりおやかた(個人事業主)。
西日本の原発を回り期間工として働いた。
原子炉容器のフタを開けての作業も経験した。
「原発の仕事は危険と思っている人が多いでしょ」
だが相応の重装備と厳格な線量管理がある分、「一般の建設現場でコケるほうが危険ですよ」と笑う。

働き方が変わった契機は2011年の東日本大震災。
東京電力福島原発の事故現場。
発生の約2年後、屋根が吹き飛んだ発電所建屋――テレビ映像で当時繰り返し流れていた――に足場を掛ける業務に就いた。
誰もがひるみそうな現場だが、経験者が求められ、知り合いも増えた。
一方、下請けの下請けの下請け…だったため当時の手取りは1日1万円台。
フクシマ原発の仕事は高額、という噂がネット中心に広がっていたが実態は全然違った。

このままでは未来が見えない。仲間も守れない。
一念発起し会社を立ち上げることにした。
行政書士に頼む費用を惜しみ、本を買って独学。
書類と作業道具を積んだ軽四を駆って福島と長浜を何回も往復。愛媛県内の公証人役場に出掛け、県知事の建設業許可を取り、起業した。

建設業のカギは人材確保

できませんと言わない。
きょ人数を集めねばならない現場に、全国の仲間に声を掛けて間に合わせる。
2024年には能登半島地震で志賀原発に駆けつけ、松山城土砂災害の現場にも赴いた。
緊急性が高い仕事を厭いとわないからこそ業績は伸び続けた。

全国レベルでみても建設投資(公共と民間合計)はバブル期のピークには届かないものの、ここ数年右肩上がり。
災害が多いこと、耐震などの防災ニーズ、民間での建て替え需要、材料費や人件費上昇などがその理由。

壁は人手不足。
逆にいえば人さえ集められれば勝機がある。
地元に根を張ることから始めた。近隣の高校に求人をお願いしてみた。教師に信頼してもらうところからのスタートだった。
「絶対にちゃんと育てますから」
もちろん超絶ブラックだった(福岡社長)という社内体制のホワイト化も同時に進めた。

まず若者はインフラのことなどを考えたことがない。
自社のことを知ってもらう前に、いかに建設土木が重要かをプレゼンし、飾らずに高校生に接した。
「道路がなくなったらどうなる?」
「ダムが壊れたら大変よな」
「電気が止まったら?」
作り、維持する人たちがいることを分かってもらう。
そんなことも知らないのか、ではなく、徹底的に寄り添った。
すると、あの会社の話は面白い、と生徒たちが噂するようになった。
結果、7年連続で新卒採用できている。

ただ、頭打ちを感じていた。
そこで出会ったのが人材系のビジネスを展開している西村代表だ。
福岡社長がイベントで「見初みそめた」。
この人が良い、という直感だった。
2023年7月にオンラインでやり取りが始まり、1カ月後に契約した。
実際に会ったのは1年半後。年下という実感はなかった。
アドバイザーというより顧問、メンターだ。
自分の考え方をぶつけ、理論的裏付けをもらう。
経験則が正しいか、若い人にどう受け取められるか。

福岡社長と談笑するEISの西村友祐代表(左)

生徒や学生、学校の教師、父母らと話す時に試してみる。
西村代表から仕入れた表現や概念を自分の言葉に噛み砕いて語る。
彼らの見る目が変わった気がする。

リクルートサイトのリニューアルでは「ダサイですよ」と何度も言われた。
今では同業から「真似して良い?」と言われるレベルに仕上がった。

昨年合同説明会に参加した。
直前、自社の会議室に模擬ブースを設しつえてオンラインで西村代表に会社説明のリハーサルを聞いてもらった。
「冷静に顧みたらバカみたいですよね(笑)」
福岡社長は常に全力だ。

インターン生にも教えを乞う

実際にブースに来たのは4~5人。
だがその中の大学生が初めてインターンに来ることになった。
西村代表にさっそく相談した。どう接したらいいか?
答えはインターン生に教えを乞うことだった。
「どうやったら今後も若い人に来てもらえるかを訊いてください」
言われた通りインターン生と採用について作戦を練った。
作戦が功を奏し高校生3人が入社。学生自身も今春入社した。
合説に来た人数から逆算すれば脅威の打率。

若いメンターに訊き、学生にも教えをもらう。そして巻き込む。
西村代表いわく「福岡社長はずっとトライ & エラーを続けてるんですよ」。
どう伝えたら響くか、模索し続ける。
頑張ったら夢がかなう会社なんだと、訴え続ける。

採用に成功していても数人まとまって離職されたことがあった。
そこからは社員育成にもいっそう力を入れた。
ここでも西村代表がバックアップ。

アットホームな雰囲気の本社オフィス

社員の顔をちゃんと思い浮かべられるようLINEのアイコンには全員の顔写真を入れている。
マネーセミナーを社内で開いて、お金との関わり方などを全員で学んでいる。
社員の親には年1回ハガキを出し、親孝行手当も継続している。

入社後にミスマッチが起きても全力で対応する。
パソコンが得意なはずの社員が「私、PC仕事が苦手です」と言い出したことがあった。
驚いたものの、じっくり話した。
関連会社に異動し、今は得意分野を活かして元気に働いてもらっているという。
ひとりひとり、まるで親のように、担任教師のように接している。

基本的な考え方や丁寧な姿勢は変わらない。ただ表現をアップデートすることに躊躇ためらいがない。
だから年下から素直に話が聴ける。
傾聴力のみなもとは信念だ。

人口減少が著しい長浜地区。会社の発展は必ず故郷への貢献に繋がる。少しでも賑いを戻せれば、との思いも強い。

先日全社員参加しての「問題解決会議」を開いた。
10年後を想像してもらった。
「自社ビルの◯階に自分の部署があって…」と多くの社員が答えた。
「あ、間違ってなかったな、って」
福岡社長が照れながら胸を張った。


このnoteは#ヒキダシのプロたちと、関わった企業などを紹介していきます。
今回は「長浜機設 × EIS」でした。㋶


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