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にしんそばの極意

蕎麦はいつでも楽しめる。
職人さんが店先で手打ちするようなこだわりのお蕎麦屋さんから、駅の立ち食い蕎麦、家で乾麺をチャチャッと茹でた蕎麦だって、美味しい。

近所にある何軒かの蕎麦屋はもちろん、少し遠くまでわざわざ出かけて食べに行く店もある。けれど、リピートするうちにその店によって頼むメニューがだいたい決まってくる。ここはざる、あそこでは鴨南蛮、といった具合だ。

そして、メニューにあると、一回はとりあえず食べてみるのが「にしんそば」。
久しぶりに会う友人とのランチで、いつもは鴨せいろを注文する蕎麦屋でメニューを見ると、「にしんそば」の文字が。どういうわけか、今まで見逃していたようで…..ならばと、今日は頼んでみたのです。

本日のにしんそば

細身のお蕎麦はいつも通りの表情で、馴染みの香りが漂います。
し、しかし……な、なんと!
赤いかまぼことワカメが行儀良く添えられていて、にしんの上にはお蕎麦がふんわりと乗っているではありませんかーーーーー!!!!!

初めて出会ったのは、総本家にしんそば松葉。京都四条大橋の袂にある店だ。学生時代の旅行だったか、そのときの衝撃たるや、なんたるや!
温かいそばの上に、魚がゴロンと半身。見た目のゴツさとは裏腹に、身は柔らかく甘い。お蕎麦の食感とお汁の旨味が奏でる絶妙なワルツに感動したのを、今でも覚えています。

数年前、美味しいにしんの煮付けをお取り寄せできることを発見してから、家での一人ランチの定番メニューになりました。
私のちょっとしたこだわりは、にしんしか乗せないこと。
いろいろ添えてみたこともあったのだけれど、あの日のリズムに近づくには、にしん、お蕎麦、お汁の三拍子に限るのです。

家で作る、私のにしんそば。具はにしんだけ。

今日のお蕎麦は、確かに美味しかった。色は薄めだけれど旨味がしっかりしているお汁と、細身の麺。どちらもこの店らしい、馴染みの味で良き。
ただ、にしんそばとしては、少し華やか過ぎたのだ。

三拍子のワルツに加えて、もう一つの極意がある。
それは、哀愁。

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