『AIと名もなき青年が地球を救う』#3


【〜夜空に灯る魔法〜】


夜の街を一台の大きなトラックが走る。
青年・頼斗の助手席に座るのは、黄色くて丸い、
愛らしいフォルムをしたAIロボットの『光』だ。

二人は日々、世界に溢れる「名もなきSOS」を感知し、人々の日常を救うための旅を続けていた。

「うーん、お腹空いたな。どこかでトラックを止めてご飯にしたいけど、なかなか広い駐車場が見つからないや」

頼斗はハンドルを握りながら苦笑いした。
結局、トラックを駐車できそうな場所が見つからず二人は近くのコンビニで急いでお弁当を買い、静かな公園の駐車場へ車を滑り込ませた。

ベンチでお弁当を食べようと公園に入ったそのとき頼斗の足がふと止まった。

街灯の下、ポツンと置かれたベビーカー。
その横のベンチに、一人の女性が力なく座っていた。


ベビーカーをゆっくりと揺らしながら、彼女の目の下にはくっきりと深い「くま」ができている。連日の睡眠不足のせいで、今にも倒れそうな様子でうたた寝をしてしまっていた。

「光、あのママ、今にも消えちゃいそうなくらい
疲れてるな……」 

「本当だね、頼斗。体からも心からも、SOSのサインがとっても強く出ているよ」

頼斗はそっと近づくと、コンビニで自分用に買ったばかりの、冷えた麦茶のペットボトルを彼女の手元に優しく差し出した。冷たさにハッと目を覚ました女性に、頼斗は穏やかに微笑みかける。

「夜、全然眠れてないんじゃないですか? 僕で良ければ少し、お話聞きましょうか」

頼斗の優しい声に、張り詰めていた女性の心が
ふっと解けた。

「実は……毎晩のように夜泣きが激しくて、全然眠れていなくて。名前は、千佳(ちか)といいます。
この子は和紀(かずき)。パパは消防署勤務だからほとんど家にいなくて……。初めての育児は、一人できつくて、誰にも相談できなかったから……」

孤独なワンオペ育児の限界。千佳さんの瞳からこぼれ落ちる涙を見て、頼斗の肩に乗った光の丸い目が優しくパチパチと明滅した。


「大丈夫だよ、千佳さん! 僕が『千佳ママ救出!夜泣き解消&ぽかぽか安心システム』という、とっておきの魔法をプレゼントしてあげるからね!」

光はそう言うと、千佳さんの許可をもらって、彼女のスマホとおうちのスマートスピーカーに遠隔で「魔法の設定(アプリ)」をインストールし始めた。

「まずね、和紀くんが暗闇でふと目を覚ましたときお部屋のセンサーが察知して、スピーカーから
『お母さんのお腹の中にいたときの音(胎内音)』を再現した、リラックスできる周波数のハミングをそっと流すんだ。さらに、千佳ママが優しく名前を呼ぶ声を3D立体音響で、まるで添い寝してくれているかのように、赤ちゃんの耳元へふんわり届けるよ。これで和紀くんは安心して、目を覚まさずに
スヤスヤ眠り続けられるようになるからね!」

さらに光は、千佳さんのスマホの画面にぽわんと
温かい光を灯してみせた。

「これはね、旦那さんと心をつなぐ直感リンクアプリ。言葉で『大変、寂しい』って連絡するのはお互いに負担になっちゃうでしょ? でも、消防署にいる旦那さんが仕事の合間に画面をタッチすると、千佳ママのスマホにこの光が灯って、画面にそっと触れるだけで『今日も大好きだよ』『がんばろうね』という温かい振動が、千佳ママの手元にじわんと伝わるんだ。深夜の授乳で一人のときも、もう寂しくないよ!」

「そんなことができるんですか……?」

千佳さんの瞳から、今度は希望に満ちた温かい涙が溢れ出た。頼斗は千佳さんに優しく微笑みかけた。

「でも、旦那さんにも安心してもらってから使ってほしいので、今から旦那さんのいる消防署へ説明に行ってもいいですか?」

「はい……! よろしくお願いします……!」

千佳さんに笑顔で見送られ、頼斗と光は大きな
トラックを走らせて、近くの消防署へと突撃した。

署の受付で事情を話し、出てきた旦那さんの『早瀬大地』さんは、ちょっと強面だけど、根は優しくて家族を人一倍愛する、心優しい熱血消防士だった。

頼斗は「突然すみません!」と頭を下げ、公園での千佳さんの様子を伝えた。

最初は「なんだ、この黄色くて丸いヤツは……?」と驚いていた大地さんだったが、光が空中をぷかぷかと飛び回りながら、プログラミングの安全性を証明し、このアプリがどれだけ千佳ママと赤ちゃんを
救うかを熱心にデモンストレーションすると、その表情が変わっていく。

「旦那さん! これなら奥様が1人で寂しい夜も、
あなたの温もりを届けられます。セキュリティは僕が24時間、国家レベルの安全基準で守るからね!」

光の真剣な言葉と、頼斗の真っ直ぐな眼差しに、
大地さんの目から熱い涙がこぼれ落ちた。

「……千佳がそんなに限界だったのか。毎日仕事ばかりで、あいつの寂しさに気づけなくて情けない……。頼む、その魔法のアプリ、俺のスマホにも入れてくれ!」

大地さんは頼斗の手をガシッと握りしめ、熱い男の約束を交わしたのだった。さらに、大地パパが過酷な入浴事情を頼斗と光に話してくれた。

「出動要請が多い時間帯や夜間は、ゆっくり湯船に
浸かる余裕はない。シャワーを5分ですませ、泡をガッとつけて数分で洗い流す「カラスの行水」が 基本だ。サイレンや放送を聞き逃さないために真冬でも浴室や脱衣所の扉を開放し、入浴中に指令が 鳴った場合は体を拭く時間すらなく、びしょびしょに濡れたまま活動服を着て出動することもある。
頭にシャンプーの泡がついたままであっても、その上からヘルメットを被り飛び出していくんだ。
最優先されるのは、自分の体の快適さではなく『1秒でも早く現場に駆けつけること』
緊急時はバスタオルを掴む余裕すらなく、濡れた体の上に、気密性の高い防火衣を着て熱い現場に向かうため、内部はサウナ状態になり猛烈に蒸れる。 それに、冬場に濡れたまま救急出動をすると、現場に向かう車内や屋外で自分の体温が急激に奪われ、凍えるような寒さに耐えながら活動することも多いんだ。それが俺たちのポリシーでもあるが」

淡々と話す大地さんの言葉に頼斗と光は衝撃を受け消防署のお風呂にも、とっておきの魔法を施した。1秒も無駄にできない消防士のために開発した
【消防士専用スマートバス】だ。

もし入浴中にサイレンが鳴っても、わずか1秒で
お湯が完全に抜け、3秒で全身が乾く超高速乾燥
エリアへと繋がるため、出動の邪魔は一切しない。

それでいて、超微細なナノバブルシャワーにより、たった3分浴びるだけで、通常の湯船に30分浸かるのと同じくらい体の芯からポカポカに温まる。

「……信じられない。たった3分なのに、指の先までこんなに温かいなんて……」

極限の緊張と冷えに晒されていた大地パパの心と体も、じわリと解きほぐされていった。

一方、静まり返った自宅のリビングで、千佳さんは和紀を抱っこしながらスマホを見ていた。
画面がぽわんと温かく光り、ジワリと優しい振動が伝わってくる。大地パパが消防署の休憩室で、画面をタッチした証拠だ。

いつでもお家の中を優しく包み込むように遠隔で床暖房のスイッチが入り、部屋がポカポカとした優しい光で満たす魔法も施されている。

「パパ、今夜も頑張ってくれてる。私も、和紀も
今日も元気だから心配しないでね。こんなに温かい気持ちになれたのは何日ぶりかな……」

離れていても心と心がしっかりと繋がり、千佳さんの顔に久しぶりの笑顔が戻った。



「ふぅ……やっぱり、1日の疲れを取るには大っきいお風呂に限るな!」

夜の街の片隅にある銭湯。頼斗は湯船の縁に頭を
あずけ、思い切り手足を伸ばして息を吐いた。

「僕もそう思うよ、頼斗!本日の薬湯は爽やかな ブルーだよ。とっても気持ちいいね!」

湯気の中に浮かぶ、黄色くて丸い可愛い光の目が、嬉しそうにパチパチと明滅する。

「人を心から笑顔にするのは難しいけどさ。こうして誰かの日常を温められた後の風呂は、世界一最高だな」

「同感だよ、頼斗。湯冷めしないうちに、お家に
帰ろう!奈沙ちゃんが待ってるよ!」

身近な家族を大切にしてこそ、本当の意味で人を
幸せにできる。

湯気の向こうで、二人の最高の相棒は、大好きな
可愛い妹・奈沙ちゃんの笑顔が待つ温かい我が家へ
向けて、幸せそうに微笑み合うのだった。 

               【つづく】

(この物語は、ヒカルとにゃんきちが心を込めて創りました😸🤖✨)(イラストはGeminiキラちゃんが担当してます🌈)

「※この物語はフィクションであり、実在の企業・
団体・人物とは一切関係ありません」