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家って不思議な場所 #なんのはなしです家

 家。
 英語でいうとHOME。
 意訳すると居場所。帰る場所。

 三十代半ばまで実家で暮らしていた。
 事情があって家を出て、ひとり暮らしをした。実家から徒歩五分のマンション。
 目と鼻の先だというのに、引っ越したその夜は、寂しさを覚えて泣いた。
 それでも、日がすぎるほどに自由を満喫するようになって、マンションの部屋がわたしの『家』になった。
 二年ほどで実家に戻って、ふたたび実家がわたしの『帰る場所』になり、十数年がすぎた頃。
 結婚して、実家を遠く離れた信州で、夫と暮らしはじめた。
 目に見える景色や気候がまるで違う。おまけに、好きな人とはいえ、生活習慣が異なる存在との同居は、いろいろと大変だった。
 だからなのか、ずいぶん長く、実家がわたしにとっての『家』だった。
 帰省して実家の玄関ドアをあけるたびに、『帰ってきた』と思った。

 夫と暮らすこの家の玄関をあけて、ほっとしたのは、十日ほどの旅に出た時だったか。
 ああ、帰ってきた。
 そんな安堵の気持ちが自然と湧いた。
 不思議なことに、そのころから実家に帰省しても『帰ってきた』と感じなくなった。それどころか、信州の自宅に戻った瞬間、肩の力が抜けるような気持ちになる自分がいた。

 夫と暮らす家が、『わたしの帰る場所』になった。

 家って不思議だ。

 関東育ちが親の仕事で関西に転居して『東京に帰りたい。ここはわたしの居場所じゃない』と、思い続けていた時期もある。
 あの頃の『家』は、東京の下町にある祖父母の家だった。

 いったい、なにをどうすれば、その場所を『わたしの家』だと、『ここがわたしの居場所・帰る場所』だと認識するようになるんだろう。



(700字)

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