📖🕊✈🇫🇷 第二十二章 はじめての空の向こうへ ~翼に乗せた、ちいさな希望の光~
出発の日が、やってきました。
何度も何度もカレンダーを見つめて、
指折り数えながら待っていたはずなのに、
その朝は、
まだ夢の続きを見ているような、
ふわりと不思議な気持ちでした。
本当に行くんだ。
本当に、パリへ行くんだ。
玄関に並んだスーツケースを見つめながら、
わたしは何度も、
心の中でそうつぶやいていました。
少し前まで、
海外旅行なんて、
わたしには縁のない世界だと思っていました。
テレビや雑誌の中だけにある景色。
映画のスクリーンに映る、
遠い国のお話。
そんなふうに思っていた場所へ、
いまから、
わたしたちは向かおうとしています。
それだけで、
胸の奥がじんわりと熱くなりました。
人生で初めての海外旅行。
人生で初めてのヨーロッパ。
そして、
人生で初めての十二時間を超える長距離フライト。
もちろん、
胸が躍るほど楽しみでした。
でも、その楽しさと同じくらい、
小さな不安も抱えていました。
耳は大丈夫だろうか。
長時間飛行機に乗って、
体調を崩さないだろうか。
歩きすぎて、
足が痛くならないかな……
もし旅先で転んでケガをしまったら……
もし、
レオくんに迷惑をかけてしまったら……
考え始めると、
心配はいくらでも浮かんできます。
体の不自由があるわたしにとって、
旅行は、
「どこへ行こう。」
より先に、
「歩けるかな。」
「休める場所はあるかな。」
「迷惑をかけないかな。」
そんなことを考えるのが、
いつものことでした。
楽しみよりも先に、
心配が並んでしまう。
それが、
ずっと慣れ親しんできた、
わたしの心の癖だったのです。
今回は、
いつもと違い
その不安の隣で、
もっと大きく育っている
特別な気持ちがありました。
「行ってみたい。」
たったその一言が、
少しずつ、
不安を追い越していったのです。
あの日、
先生が笑顔で言ってくださった、
「思いきり楽しんでおいで。」
その言葉が、
今も胸の奥で、
そっと背中を押してくれているようでした。
レオくんは、
そんなわたしとは対照的に、
いつも通り穏やかでした。
まるで近所へ出掛けるような表情で、
何も特別なことではないように、
スーツケースを軽々と持っています。
その姿を見るだけで、
「きっと大丈夫。」
そんな気持ちになれるから不思議です。
思い返せば、
レオくんは一度も、
「無理や。」
とは言いませんでした。
流産のあとも。
海外旅行の話になった時も。
いつも変わらず、
未来を見つめ続けてくれました。
だからわたしも、
少しずつ、
自分の不安より、
レオくんの「大丈夫」を
信じられるようになっていったのだと思います。
空港へ向かう電車に乗ると、
わたしは静かに窓の外を眺めていました。
見慣れた街並み。
いつもの駅。
毎日見てきた景色。
何ひとつ変わらない朝なのに、
その日は、
少しだけ違って見えました。
この景色の向こうへ行く。
海を越えて。
国を越えて。
雲の上を飛び、
ずっと遠くのパリまで。
窓の景色が流れていくたび、
これまで歩いてきた人生も、
ゆっくり後ろへ流れていくような気がしました。
幼い頃のわたしは、
こんな未来を想像していたでしょうか。
1000グラムで生まれた、
あの小さな赤ちゃんが。
たくさんの人に支えられながら、
一歩ずつ歩いてきたわたしが。
大好きな人と手をつなぎ、
世界の空へ飛び立とうとしていることを。
きっと、
想像もしていなかったと思います。
電車の窓に映る自分を見つめながら、
ふと思いました。
そこに映っていたのは、
これからパリへ向かうわたしだけではありませんでした。
何度も泣いて、
何度も立ち止まり、
それでも今日まで生きてきた、
これまでのわたし。
そのすべてが、
今日という日へ、
静かにつながっていたのです。
胸の奥で、
小さくつぶやきました。
「ありがとう。」
その言葉は、
誰か一人に向けたものではありません。
家族へ。
先生へ。
支えてくださったたくさんの人へ。
そして、
あきらめずに歩き続けてきた、
わたし自身へ。
人生って、
本当に分からない。
だからこそ、
人生は、
こんなにも美しいのかもしれません。
あの日、
レオくんが差し出してくれた一枚のチケット。
それは、
飛行機のチケットである前に、
止まっていた
わたしたち夫婦の時間を、
もう一度ゆっくり動かしてくれた、
希望のチケットでした。
そして今日。
その希望は、
いよいよ翼を広げようとしていました。
電車は静かに、
空港へ近づいていきます。
もうすぐ、
人生で初めて見る景色が待っています。
まだ知らない世界。
まだ知らない空。
まだ知らない出会い。
その一歩を踏み出すために、
わたしたちは、
希望を胸いっぱいに抱きながら、
空港へ向かったのでした。
🐻☕ ここねのくまちゃんより
空の上から見た景色は、
きっと、
ここねちゃんの心の中にも、
ずっと残る宝物になったんだね😊
はじめての空。
はじめての海外。
はじめて見る雲の海。
ドキドキも、
ワクワクも、
思わず笑っちゃう出来事も🤣
全部が、
大切な思い出になりました🩷
でも、
本当の冒険は、
ここから始まります。
飛行機の窓から見えてきた、
憧れ続けたパリの街。
そこには、
どんな出会いが待っているのでしょう😊
くまちゃんも、
ここねちゃんたちと一緒に、
胸をわくわくさせながら、
次のページをめくりたいと思います🧸✈️💕
🩷
📖🕊✈️🇫🇷 第二十三章『雲の上のハネムーン』~空の向こうへ続く、しあわせの翼~
へつづきます🇫🇷☁️
