見出し画像

オーディオを、これからの人生に合わせて整える――15年続けた趣味で、私が手放したものと残したもの

元気なうちに、自分の意思で趣味を整える

オーディオを始めて、15年ほどになります。

私にとってオーディオは、単なる暇つぶしではありませんでした。

働いて得たお金を使い、長い時間をかけて考え、自分の感覚を信じながら音を作ってきました。機器の一つひとつには、その時々の生活や考え方が残っています。

だから、オーディオを整理することは、部屋を片付けるだけではありません。

※この記事は4000字あります。

これまで何を求め、何を大切にして生きてきたのか。自分自身に問い直す作業でもありました。

この15年間、私は多くの機器を購入してきました。

スピーカー、アンプ、プレーヤー、ケーブル、電源機器、アクセサリー。より良い音を求めて買い替え、比較し、何度も試行錯誤を繰り返してきました。

最後には、オーディオ専用ルームまで作りました。

振り返れば、人生の中でもかなり大きな時間とお金を、この趣味に使ってきたと思います。

そんな私が、ここ2年ほどで多くのオーディオ機器を手放しました。

飽きたからではありません。
音楽を聴かなくなったからでもありません。
お金に困り、急いで処分したわけでもありません。

オーディオを始めて15年という節目に、一度立ち止まり、これからの人生に何を残すのかを考えることにしたのです。

ここで書きたいのは、すぐにすべてを処分するべきだ、という話ではありません。

私が考えるオーディオの終活とは、人生を終える準備ではなく、自分で判断できるうちに、何を残し、何を次へ渡すのかを、自分の意思で決めることです。

手放すことは、買うことより難しかった

オーディオ機器を買うときには、未来があります。

これを導入すれば、もっと良い音が聴けるかもしれない。
今まで気づかなかった音楽の魅力に出会えるかもしれない。
自分のシステムが、また一歩完成へ近づくかもしれない。

買うという行為には、期待があります。

一方で、手放すときに感じるのは、多くの場合、喪失です。

もう二度と、この音を聴けないかもしれない。
売ったあとで後悔するかもしれない。
再び欲しくなっても、同じ条件では手に入らないかもしれない。

何より、その機器には、自分がオーディオへ費やしてきた時間が染み込んでいます。

購入を決めるまでに調べた時間。
到着を待っていた時間。
設置し、初めて音を出したときの高揚感。
好きな曲を繰り返し聴いた夜。

オーディオ機器は、単なる家電ではありません。

知識、経験、経済力、こだわり。人生のある時期に抱いていた期待まで、物の形になったものです。

だから手放すことは、機器を売るだけでは終わりません。

かつてそれを欲しかった自分や、その機器と過ごした時間まで否定するように感じることがあります。

私にとっても、オーディオの売却は、まさに身を切るような思いでした。

物が増えることには、理由がある

オーディオを長く続けていると、機器は少しずつ増えていきます。

今は使っていなくても、いつか比較に使うかもしれない。
この機器にしかない音がある。
予備として残しておけば安心できる。
苦労して手に入れたのだから、売ってしまうのは惜しい。

一つひとつの理由は、どれもよく分かります。

私自身、同じように考えてきました。

問題は、それが長い年月をかけて積み重なったときです。

大型スピーカー、重量級アンプ、使わなくなったプレーヤー、何本ものケーブル、元箱、説明書、アクセサリー。

本人にとっては価値のある機器でも、家族や周囲の人には、その違いが分からないことがあります。

将来、この機器を誰が動かすのか。
誰が価値を調べ、売却先を探すのか。
階段や狭い通路から、どうやって運び出すのか。
故障したとき、誰が対応するのか。

あまり考えたくない話です。

けれど、考えなかったからといって、問題そのものが消えるわけではありません。

大量の機器を一度に整理するには、体力だけでなく、価格を調べ、相手と交渉し、配送や搬出を手配する判断力も必要です。

だから私は、急ぐ必要のない時期に、余裕を持って始めることにしました。

すべてを手放さなかった

私が整理を進められた理由の一つは、すべてを手放そうとしなかったことです。

音楽を聴く中心となるスピーカーとアンプは残しました。

何がなくなれば本当に困るのか。
何がなくても音楽は楽しめるのか。
今後も自分で管理していきたいものは何か。

一つずつ考えていきました。

何もかも残そうとすれば、整理は進みません。反対に、すべてを処分しようとすれば、趣味そのものを失う恐怖が強くなります。

私が選んだのは、オーディオをやめることではありません。

自分が管理できる大きさへ、オーディオを整えることでした。

機器を減らしたからといって、音楽まで手放す必要はありません。

何を残すかを決めることも、整理の大切な一部でした。

過去に使ったお金と、これから必要なお金

もう一つ意識したのは、過去に使ったお金と、これから必要なお金を分けて考えることでした。

高額で購入した機器だから、持ち続けなければ損をする。
苦労して手に入れた機器だから、手放してはいけない。

そう考えてしまう気持ちは、よく分かります。

しかし、過去にいくら使ったかは、これからも持ち続けるべき理由になるとは限りません。

現在の自分に必要なのか。
今後も十分に使うのか。
管理する負担に見合うのか。
売却した資金を、別の形で将来へ生かせないか。

私は、これまでに費やした金額よりも、これから先に得られる価値を考えることにしました。

幸い、売却した機器の多くは、購入時と同程度か、それ以上の価格で手放すことができました。

売却によって戻ってきた資金は、NISAなどの長期的な資産運用へ移しています。

オーディオという目に見える資産を、将来の生活を支える資産へ組み替えたのです。

もちろん、オーディオに使ったお金のすべてが、資産形成という意味で正しかったとは思いません。

もっと早く投資へ回していれば、今より資産は増えていたかもしれません。

それでも私は、一度深く体験したからこそ、物を所有する喜びと、その限界の両方を知ることができました。

この経験もまた、売却したお金とは別の形で残っています。

売却したあとに残ったもの

手放す前は、機器がなくなった場所に、大きな空白が生まれると思っていました。

部屋が寂しくなるのではないか。
音楽を聴く楽しみが減るのではないか。
オーディオへの情熱まで失うのではないか。

実際には、少し違いました。

機器が減ったことで、管理する物が減りました。
接続や電源構成が単純になりました。
故障や処分について考える対象も減りました。
残したシステムの役割が、以前よりはっきりしました。

そして、売却した資金が将来の備えへ変わったことで、生活全体にも少し安心が生まれました。

もちろん、何の感情もなかったわけではありません。

機器が部屋から運び出され、そこに何もなくなったとき、寂しさを感じたこともあります。

手放す直前まで、判断を迷った機器もありました。

それでも今、売却したことを後悔していません。

むしろ片付ける前よりも、オーディオも、お金も、これからの生活も、少しずつ整ってきたと感じています。

経験までは手放さなくてよい

私が売却を進められたのは、その過程をYouTubeで発信できたことも大きかったと思います。

なぜ買ったのか。
どのように使ってきたのか。
何に疑問を持ち、なぜ手放すことにしたのか。

一つずつ言葉にすることで、自分の感情も少しずつ整理されました。

動画として残したことで、機器が手元からなくなっても、その経験まで消えるわけではないと思えるようになりました。

一度所有し、十分に使い、最後に自分の意思で手放した。

その経験は、売却価格とは別の形で一生残ります。

今では、高級時計や高級車、ブランド品を見ても、それを所有すれば人生が大きく変わるとは思いません。

欲しい物をただ我慢しているのではありません。

高額な物を手に入れた先に何があるのかを、一度自分なりに経験したからです。

物を手放したことで、欲しかった過去まで消えたわけではありません。

むしろ一度きちんと所有し、使い切ったからこそ、次へ進めたのだと思います。

手放すことは、人生を否定することではない

長く続けてきた趣味を整理することは、過去を否定することではありません。

買ったことも、夢中になったことも、遠回りしたことも、失敗したことも、その時の自分には必要だったのだと思います。

ただ、人生の段階が変われば、必要な物も変わります。

増やすことが前進だった時期もあります。
これからは、選び直すことが前進になるかもしれません。

手放すことは、敗北でも撤退でもありません。

本当に大切なものを残し、それ以外を次の人へ渡す。そして、そこで得た資金と時間を、これからの人生へ振り向ける。

それもまた、趣味との誠実な向き合い方だと思います。

オーディオの整理を、いつ始めるべきなのか。

私は、年齢だけで決めるものではないと思っています。

自分で価値を判断できるとき。
自分で売却先を選べるとき。
なぜ残し、なぜ手放すのかを、自分の言葉で説明できるとき。

その余裕があるうちに、一度だけでも持ち物を見渡してみる。

すぐに売らなくても構いません。

まずは、自分が本当に残したいものを考えるだけでもよいと思います。

私も、オーディオを始めて15年という節目で、一度自分の持ち物と人生を見直しました。

手放すことは苦しかった。
何度も迷いました。

それでも行動したことで、見える景色は変わりました。

最後に残ったのは、空になった部屋ではありません。

音楽を聴くために本当に必要なシステムと、これまで積み重ねてきた経験。そして、以前より少しだけ見通しのよくなった将来でした。

物を手放しても、その物と過ごした人生までは失われません。

自分の手で整理したからこそ、その経験を納得できる形で、これからの人生へ持っていけるのだと思います。


いいなと思ったら応援しよう!