支援実績:人事制度運用支援ー2025年、製造業
2025年に、某企業C社様(製造業)の人事課題支援を行いました。簡単に内容を紹介します。当内容の公表は支援企業様からの承諾済みではありますが、大枠の内容に止めていることはお許しください。
支援企業・実施概要
業種、従業員規模:製造業、従業員30名程度
場所:(自身の居住地である)福島県外の地方企業
実施期間:2025年2月~5月
方法:現地訪問+オンライン
主たる窓口:社長
内容:人事制度運用支援(社長、評価者へのガイド含む)
老舗企業C社様が抱える人事課題の背景と詳細
C社様は、長年にわたり培ってきた高度な技術力と顧客からの厚い信頼を基盤として、地域社会の発展に大きく貢献されている企業です。しかしながら、近年の急速な社会情勢の変化、市場ニーズの多様化、そして労働人口の減少といった外部環境の変化に対応するためには、従来の組織体制や人事制度の見直しが不可欠であるという強い課題意識をお持ちでした。
C社様では、既に新しい人事制度を策定し、社員の皆様への開示も済ませておりましたが、制度の具体的な運用段階へと移行することが難しい状況にありました。
人事制度は、策定段階に注目が集まりがちですが、真に重要なのは、策定された制度をいかに効果的に運用し、組織の活性化や社員の成長に繋げていくかという運用フェーズにあります。C社様はまさに、この運用フェーズにおける課題に直面されていたのです。
課題の深掘り:制度策定後のリアルな課題と具体的な問題点
C社様では、外部のコンサルタントの支援のもと、新しい人事制度が構築されました。その内容を実際に拝見したところ、制度の内容は非常に立派であり、制度設計に大きな問題があるわけではありませんでした。
しかしながら、制度の策定が先行し、組織の実情や社員の理解が追いついていない場合、以下のような問題が顕在化することがあります。
評価基準の不明確さ
等級制度自体は存在するものの、各等級に求められる具体的な要件や、どのように等級が上がるのかという昇格基準が明確に定義されていませんでした。そのため、社員は自身のキャリアパスを描きにくく、モチベーションの低下に繋がる可能性がありました。評価者の負担増
管理職層が、新しい人事制度における評価業務の負担増となる可能性がありました。十分な説明会や研修が実施されていないため、評価の公平性や客観性を担保することが難しくなってしまいます。目標設定の重要性とその課題
人事評価において、目標設定は評価の根拠となる重要な要素ですが、C社様では目標設定の運用が十分に確立されていませんでした。目標設定が適切に行われない場合、評価が主観的になりやすく、社員の納得感を得ることが難しくなります。なお、ここは、今回の段階では優先度を下げて、次回以降の課題としました。

課題解決への具体的なアプローチ:実践を通じた制度定着
上記の課題に対し、「机上の空論ではなく、実践を通じて制度を定着させる」という方針に対し、支援を進めていくことにしました。具体的には、以下の3つの取り組みを柱として、C社様の状況に合わせた個別カスタマイズされた支援を実施いたしました。
訪問による実践的な助言
実際にC社様を訪問し、評価の試行に同席させていただきました。評価の進め方、評価基準の具体的な解釈、評価シートの記入方法などについて、その場で具体的な助言を行いました。これにより、評価者は疑問点を即座に解消し、自信を持って評価業務に取り組むことができるようになりました。評価の試行による実践
まずは評価者である課長・部長が中心となり、実際に評価シートを用いて評価を実行していただくことにしました。実際の評価場面に立ち会い、具体的なアドバイスを行うなど、C社様の状況に合わせた個別カスタマイズされた支援を実施いたしました。C社様では、部長が2次評価者、課長が1次評価者という役割分担で評価を実施しています。日常的な行動観察の重要性の共有
評価で最も大切なことの一つは、部下の行動を日常的に「観察」することです。これは評価の前提となる非常に重要な要素です。評価時期だけでなく、普段から部下の行動を観察し、具体的な事実に基づいて記録しておくことの重要性を共有しました。この実践は、評価の精度を高めるだけでなく、日々のマネジメントにも極めて有効であり、部下とのコミュニケーション改善にも繋がります。
管理職向けのガイド
評価実践の後にはなりましたが、再度、管理職(評価者)としてのあり方を一通り教育(研修)させていただきました。内容は主に以下の通りです。
管理職の役割の再確認
管理職が担うべきは、日々の業務管理に留まらない多岐にわたる役割です。具体的には、短期的な成果のみならず中長期的な視点での「組織目標の達成」 、個々の能力を引き出しチーム全体の生産性を高める「組織力強化」 、部下一人ひとりのキャリア志向に応じた成長を支援する「人材育成」 、そして自身の後任を育て組織全体のステップアップに貢献する「後任育成」が含まれます 。
人事評価の基本的な考え方
評価の目的
人事評価は、部下(被評価者)の処遇(報酬、昇進・昇格、異動配置等)を決定することと、部下の成長を図ることの2つが主要な目的です。三位一体の重要性
人事考課が適切に運用されるためには、会社・上司(評価者)・部下(被評価者)が三位一体となって協力していくことが不可欠です。 各々が制度を理解し、必要な知識・スキルと意識を持つことが求められます。
人事考課のプロセス
人事考課は、期初の「目標設定」からスタートし、「期中指導」、「期末の評価」、そして「フィードバック」という4つのプロセスで構成されます。期中指導の徹底
期中指導は、設定した目標の進捗確認と、部下が必要な支援を受け残りの期間も意欲的に取り組めるようにするための働きかけを目的とします。 具体的には、部下の観察、十分なコミュニケーション、タイムリーなフィードバック、期中面談の実施(最低1回)、必要に応じた目標修正が求められます。 情報収集には、行動観察、面談、報告(日報等)、関係者へのヒアリングといった手法があります。
「行動観察」の重要性
上司の最も大切な仕事の一つとして、部下を日常的に「観察」し、「行動観察シート」などを活用して具体的な事実に基づいて記録することが挙げられます。 これにより、評価を事実に基づいて行い、業務上の話と業務外の話を区別し、下位評価者の観察状況も確認できます。フィードバック面談のポイント
評価結果を納得いくように説明し、今期の取り組みを振り返り、今後何に力を入れていくかを共に考えることが目的です。 一方的に話すのではなく、部下の話を十分に聴くことが重要であり、傾聴行動(うなずき、あいづち、アイコンタクト・表情) 、受容(繰り返し、言い換え・要約、沈黙の活用) 、承認(成果承認、変化承認、存在承認) といったスキルが求められます。
評価運用における具体的なQ&A共有
評価の際の質疑応答の内容を共有し、評価運用における具体的な疑問点や課題への対応方法について理解を深めました。基本的内容にも見えますが、評価者間でこういったことを共有することが非常に重要になります。ベテラン・優秀社員の評価
現状維持ではなく、更なる成長や貢献への期待を伝え、具体的な行動事実に基づき「良かった点」と「今後の課題・期待」をフィードバックします。評価の公平性・客観性の担保
日常的な行動観察とその記録が極めて重要です。「いつ、誰が、何をしたか、その結果どうだったか」という具体的な行動事実を客観的に記録・蓄積し、「期末効果(直近効果)」などの偏りを排除します。プライベートな情報(業務外情報)の扱い
業務遂行に関連する「業務内」の情報と、個人のプライベートな事情に関する「業務外」の情報は明確に区別します。業務外の情報は評価の直接的な対象とせず、情状酌量的な評価は避けます。一次・二次評価者間での評価のずれ
評価者間で評価結果や認識に差異が生じること自体は問題ではなく、むしろ多様な視点を取り入れるメリットでもあります。重要なのは、ずれが生じた場合に評価者間でコミュニケーションを取り、互いの評価の背景にある考え方や視点を共有し、認識を合わせておくことです。評価基準の解釈のずれ
評価者間で解釈の違いがあった場合は、コミュニケーションを取り認識をすり合わせることが重要です。また、これは制度改善に向けた重要な指摘として、基準の明確化を検討します。評価業務の負荷
日常的な行動観察と記録を継続することで、期末の評価時期における負担は軽減されることが期待されます。制度運用と業務負荷のバランスは常に意識し、改善を続けます。部下の「マイナス面」への着目と指導
課題を認識するだけでなく、改善のための具体的な指導、必要な支援、本人の気づきを促す「育成的な関与」が管理職の役割です。 また、良い点、強み、成果、努力のプロセスといったポジティブな側面も具体的に認識し、承認・賞賛として伝えることが、部下のモチベーション向上に繋がります。

今後の展望:継続的な改善と成長を目指して
人事評価制度の定着は、一朝一夕に達成できるものではありません。評価の試行を通じて見えてきた課題を一つずつ丁寧に解決しながら、よりC社様の企業文化や組織の実態に即した制度へとブラッシュアップしていく必要があります。
C社様と共に、試行錯誤を繰り返しながら、社員一人ひとりが成長を実感でき、組織全体の活性化に繋がる人事制度を創り上げていくことが、今後の継続的な目標となります。
実施してみての所感:得られた学びと今後の課題
「人事制度を作ったものの、運用がうまくいかない」という課題を抱える企業は少なくありません。制度と実態が乖離し、形骸化してしまっている企業も多く存在します。そのような状況下において、C社様は本気で人事制度の運用改善に取り組まれました。社長様、部長様、課長様、それぞれの立場からのお考えを伺うことができ、大変貴重な機会となりました。この場を借りて、C社様への感謝の意を表させていただきます。
人事・給与制度関係の課題は、多くの企業様が抱えている共通の悩みであると思われます。私自身のように、数多くの制度構築・運用経験を持ち、さらに「今もまさに」インハウスで構築・運用を実践しているという立場で、外部の観点から少し支援を加えるだけでも、現状を打破するきっかけづくりができるものと考えております。私自身も、C社様との協働を通じて新たな視点を取り込むことができ、大変感謝しております。ありがとうございました。
