支援実績:人事課題(女性リーダー育成)ー2025年、卸売業ー個人の成長が組織を変える好循環へー女性リーダー育成1年間の確かな歩み
支援企業・実施概要
業種、従業員規模:卸売業、従業員100名程度
場所:(自身の居住地である)福島県外の地方企業
実施期間:2023年~継続支援
方法:オンライン
主たる窓口:人事担当取締役および課長
内容:女性リーダー育成
2023年より継続的なご支援をさせていただいている、従業員約100名規模の卸売業A社様。同社では、経営層の強いリーダーシップのもと、女性活躍推進に向けた先進的な取り組みが進められています。その中核を担うのが、2024年よりスタートした「女性リーダーミーティング」で、その一部を私が支援させていただいています。
当初は、女性活躍推進法の背景や、誰もが持つ無意識の偏見である「アンコンシャスバイアス」についての理解を深めることからスタートしました。これは、リーダーとしての意識改革に不可欠な土台を築くものでした。
そして発足から1年余りが経過した今、組織内には目に見える、そして心強い変化の波が着実に広がっています。この歩みをさらに加速させるべく、私たちは新たなステップとして「女性リーダーの皆さんのためのキャリア成長セッション」を実施いたしました。ここでは、この1年間で生まれた具体的な成果と、個人の成長が組織全体の変革、さらには未来の事業機会創出にまで繋がっていく確かな展望について考えてみます。
キャリアの不安を乗り越え、自分らしいリーダー像を描く「きっかけ」
今回の研修の最大の目的は、参加者である女性リーダーの皆様が、将来的な管理職へのステップを見据える上で、自身のキャリアと真摯に向き合い、その可能性を再発見するための「きっかけ」を提供することにありました。
セッションの冒頭、私から「これは決して私から教えるのではなく、皆さんの可能性を広げるための時間です」とお伝えしました 。A社様が策定し、ウェブサイトで公にされている女性活躍推進の行動計画は、具体的な数値目標が明記されており、私が知る中でも類を見ないほど先進的で、実行にかける強い意志を感じさせるものです 。
一方で、その期待の大きさが、時として選ばれたリーダーの皆さんにとってプレッシャーになり得ることも事実です。だからこそ、この時間は、そのプレッシャーをポジティブなエネルギーに転換するためのマインドセットを育む場となることを目指しました。
管理職のメリットと、誰もが抱える「見えない不安」
まず、管理職という立場がもたらすポジティブな側面について共有しました。それは、自身のキャリア選択肢が大きく広がること、経済的な安定性が向上すること、そして何より、自らの意思で物事を決定できる「裁量権」が格段に増えることです 。私自身の経験からも、この「自分で決められる」という感覚は、仕事の大きなやりがいと責任感に繋がることをお話ししました。
一方で、誰もが感じるであろうリアルな不安にも光を当てました。「責任が重くなる」「仕事と家庭の両立がさらに難しくなるのでは」「『管理職のくせに』という周囲からの見えない視線」「そもそも自分にその能力があるのだろうか」といった、数々の不安は、キャリアの岐路に立った際に生じるごく自然な感情です 。大切なのは、これらの不安から目を背けるのではなく、一つひとつを「正常な感情」として認識し、具体的な行動を通じて解消していくプロセスそのものであることを強調しました。
「自分には無理」から「できるかも」への意識変革
次に、管理職に求められる役割について話をしました。「管理職にはどんな役割があるか」といったときに、例えば「戦略策定」や「業務プロセスの構築」があるでしょう。ただ、その言葉だけを聞くと、「そんな大それたことは自分には無理だ」と気後れしてしまうかもしれません 。しかし、これらの役割は、決して最初から完璧にこなす必要はないのです。
例えば、日々の業務の中で気づいた課題に対する「改善提案」から始めてみる 。その提案を実行に移すためには、自ずと「他部門との調整や連携」が必要になります 。こうした身近な一歩を積み重ねていくうちに、より大きな視点での「業務プロセスの構築」というスキルが自然と身についていきます。
また、リーダーシップの形は一つではありません。メンバーの成長を後方から支援する「サーバント型リーダーシップ」のように、様々なスタイルが存在します 。全員が同じビジョン型のリーダーを目指す必要はなく、時間をかけて自分らしいリーダーシップの形を見つけていくことの重要性をお伝えしました。
キャリアを拓く力、「自己効力感」をいかに高めるか
自らの手でキャリアを切り拓いていく上で、その根源的な力となるのが「自分ならできるはずだ」と信じる力、すなわち「自己効力感」です。研修では、この自己効力感を高めるための具体的な4つのアプローチを提示し、ディスカッションを行いました。
成功体験を意図的に積み重ねる
いきなり大きな目標を立てるのではなく、達成可能な小さな目標を設定し、それを一つひとつクリアしていくことで、「できた」という体験を意図的に積み重ねます 。これが自信の土台となります。多様なロールモデルから学ぶ「代理経験」
「この人のようになりたい」という完璧なロールモデルは、実はなかなか存在しません 。大切なのは、Aさんの「この部分」、Bさんの「この考え方」というように、複数の人々(男女問わず)から良い部分を観察し、自分の中に取り込んでいくことです 。同時に、「あのやり方は自分には合わないな」という反面教師から学ぶことも、自分らしいスタイルを築く上で非常に有効です 。成長を促す「言語的説得」を自ら求める
キャリアを重ねるほど、他者から率直なフィードバックをもらう機会は減少します 。だからこそ、「自分からはどう見えていますか?」と意識的に周囲、特に上司にフィードバックを求めにいく姿勢が不可欠です 。時には耳の痛い、否定的な意見に直面し、落ち込むこともあるかもしれません。私自身もそうした経験がありますが、そのフィードバックに真摯に向き合うことこそが、成長の最大の糧となります 。自分を客観視する「生理的・情動的喚起」
「自分はこういう状況でやる気が出るな」「この考え方をすると否定的になりがちだ」といった、自分自身の思考や感情のパターンを客観的に認識し、それを意識的にコントロールする訓練です 。
これらのアプローチに加え、漠然とした将来ではなく、「3年後の自分はどうなっていたいか」という具体的なキャリアビジョンを描くことの重要性についてもお話をしました。

1年間の継続支援が生んだ、組織を動かす確かな成果
研修の後半、この1年間の活動を振り返るディスカッションが始まりました。そこでは、個人の成長が組織全体の変革へと繋がる、感動的な事例が次々と共有されました。
最大の成果は、女性リーダーの皆様の間に部門を超えた強固な「ネットワーク」が形成されたことです 。以前は壁があり、縦割りになりがちだった組織に、有機的な横の連携が生まれたのです。
事例1:自発的な連携による現場力の向上
リーダーが中心となり、これまで交流のなかった部門間で自発的に勉強会を開き、業務知識を共有する動きが活発化しました 。
また、工場の新人スタッフのミスが増加した際には、誰かを責めるのではなく、関係部署のリーダーたちが集まって原因を徹底的に究明し、対策を練って共有するという文化が生まれました 。
さらに、ある部署で腰痛の問題が持ち上がった際、他の部署のメンバーが「このストレッチが効果的だったよ」と自身の経験を共有するなど、健康面での支え合いも見られるようになりました 。
事例2:当事者意識が道を拓いた「経営への参画」
これは特筆すべき成果、具体的な経営課題への参画です。これまで女性が加わることが少なかった商品開発会議に、リーダーたちが積極的に参加するようになりました 。
さらに、メンバーの一人が、現場の課題解決のためにシステム投資を起案。上司を説得し、最終的には社長決裁を得て、現在そのプロジェクトが実現に向けて動いています 。
これは、現場の当事者意識が経営判断を動かした、まさに画期的な成功事例といえるでしょう。
まとめ:個人の成長が組織を変え、未来を拓く
今回の研修とこの1年間の継続的な取り組みは、女性リーダーの育成が、単なる個人のスキルアップという次元に留まらず、組織文化そのものを変革し、具体的な業務改善、そして新たな事業機会の創出にまで繋がるという事実を、鮮やかに証明してくれたものと思います。
ディスカッションでは、新卒採用の内定者と共に地域のを支援する企画や 、SDGsへの関心が高い若手社員を巻き込むアイデア 、そして各部署の強みをSNSで発信するなど 、未来に向けた創造的な議論も活発に行われました。
私自身も、このミーティングを通じて皆様から数多くのヒントと刺激をいただいており、感謝の念に堪えません 。一人ひとりが主体性を発揮し、強固なネットワークを基盤として挑戦を始めた今、A社様には確かな「好循環」が生まれています。彼女たちの挑戦が、会社の持続的な成長を牽引し、地域社会にとってより良い未来を拓いていくことを、私は確信していますし、今後もまた継続して支援をしていきたいと思います。

