資本としての「人」を考える(その3)「人的資本経営」って、リスキリングのこと?

キャリアプランです。特にシニア年齢を迎える時期への漠たる不安が多いことを知り
そんなお悩みに向き合ってみました。株式会社ドリームパイプラインの安藤秀樹です。
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「リスキリング(Reskilling)」という言葉を、耳にする機会がずいぶん増えました。
企業がリスキリングに取り組む理由を尋ねたある調査では、
「事業成長や新規事業に必要なスキルを持つ人材を育成するため」
という回答が75%を超え、最も多かったそうです。
そのせいでしょうか、
「人的資本経営って、要するにリスキリングの奨励のことですか?」
という質問を研修の現場などでいただくことがあります。
リスキリングは副業やセカンドキャリア、定年退職後の備えという文脈でも語られるテーマですが、ここではいったん「会社にとってのリスキリング」という人的資本経営の目線でお話を進めます。
先ほどの質問への答えは、「Yes and No」です。
同じではないが、切り離せない
「会社がお金をかけて、従業員に成長の機会を与える」という視点で見れば、リスキリングは確かに人的資本経営を体現しています。
しかし、両者は完全な同義ではありません。
リスキリングは人的資本経営を実現するための「施策の一つ」と捉えるのが適切だと考えます。
両者の違いを、整理してみましょう。
「人的資本経営」は、人材を"資本"と捉えて、その成長と活用に投資する経営手法そのものです。
目的は企業の持続的な成長と競争力の強化にあり、採用・育成・評価・環境整備まで、人材戦略の全般を対象とします。
一方の「リスキリング」は、既存の従業員に新しいスキルを習得させ、新たな業務領域へ適応させる取り組みを指します。
目的はビジネス環境の変化への対応と人材の有効活用で、対象は主にスキル開発とキャリア転換に絞られます。
つまり、人的資本経営が企業全体の人材戦略を指すのに対し、リスキリングはその中で特に「スキルの変革」にフォーカスした概念、というわけです。

なぜ今、リスキリングが不可欠なのか
近年、企業を取り巻く環境の急速な変化によって、リスキリングは人的資本経営に欠かせない要素になりました。背景は、主に四つあります。
一つ目は、デジタル化・DXの加速です。
AI活用、データ分析、クラウド技術の進化で従来の業務が大きく変わり、既存の従業員に新しいスキルを身につけてもらう必要が生じています。
二つ目は、労働力不足・採用難。
少子高齢化で新規採用が難しい中、既存社員のスキルを高めることで、中途採用への依存を減らそうという狙いです。
三つ目は、ジョブ型雇用の広がり。
職務を明確に定義して人材を配置する形が進むと、年功序列をベースにした受け身のキャリアパスだけでは、立ち行かなくなります。
四つ目は、人的資本情報の開示要請です。
投資家や市場に対し、人への投資をどう行っているかを開示する動きが強まっています(2018年制定の国際基準「ISO 30414」については、最終回で詳しくお話しします)。
リスキリングを含む人材育成戦略を持っているかどうかが、企業評価の一要素になりつつあるのです。
これら四つの変化に共通するのは「必要なスキルが、これまでにない速さで入れ替わっている」という現実です。
だからこそ、人を採り直すのではなく、いまいる人を学び直させる・・・
リスキリングが、戦略の中心に躍り出てきたわけなんですね。
「多能化」とは違う
また、リスキリングは「多能化(マルチスキリング)」とも異なります。
リスキリングが、技術革新や市場の変化に対応して新たな業務領域への移行を目指すのに対し、多能化は既存の職務に関連する複数のスキルを足して、業務の幅や柔軟性を高めるものです。
たとえば工場で、異なる組立ラインに対応できる社員を備えておき、急な欠員や増産に応じる、といった具合です。
ここで一つ、申し添えておきたいことがあります。
リスキリングは、職場の中だけの話ではありません。
自分自身のセカンドキャリアを考えるとき、提供する価値や働く条件の変化に向き合う場面は必ず出てきます。
それはまさに、個人にとってのリスキリングが問われる状況にほかなりません。
会社の施策として眺めるだけでなく、ぜひ「自分事」としても読んでいただければと思います。
次回は、そのリスキリングを「成功させる」ために、企業に何が求められるのかを見ていきます。
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