「見るな」という治療法(お勧めできませんが…)
子どものアトピーを「見ないようにしたら」治った話
鍼灸師として駆け出しのころのこと。
私の初めてのアトピー治療のお話です。
生後まもないお子さんで、全身の皮膚症状はかなりひどいものでした。
何を塗ったらいいのか?
何を食べさせたらいいのか?
どの病院がいいのか?
不安を吐き出すように話されます。
心配するお母さんの気持ちは痛いほど分かります。
そこで私は、思い切ってこう伝えました。
「この子が体を掻いているのを、見ないでください」
“治療”は、それだけ。
すると一週間後、お子さんの症状は消えたのです。
(正直なところ、私自身ホッとしました…!)
自分の子どもが痒くて掻いている姿を見るのは、本当に辛いことです。
その気持ちは痛いほど分かります。
けれど、私はこうも伝えました。
「見なければ、お母さん自身が苦しまなくて済みます」
「もしかしたら、お母さんの“視線”が、この子のアトピーを強めているかもしれません」
言葉にすると酷いことを言っているように聞こえます。
でも、お母さんのイライラや不安な気持ちが、子どもの体に影響してしまうことは少なくありません。
「アトピーだから痒い → 掻く → その姿を見ると辛い → 可哀想」
たしかにそう考えるのが自然です。
けれど、ひょっとしたら――
「お母さんの辛さ」や「お母さんの心の我慢」を、子どもが代わりに表現しているのかもしれません。
私はこの関わり方を、勝手に「この子を見るな療法」と名付けました(笑)。
お母さんも理解してくださり、実践してくれたのです。
結果として、症状は消えていきました。
泣きながら掻く姿を見ないのは辛かったはずですが、その分お子さんは、お母さんのストレスから解放されていたのかもしれません。
もちろんこれは乱暴な方法ですし、医学的な根拠も乏しいです。
だから、誰にでもおすすめできるものではありません。
あれから1年後、お母さんに再会しました。
「その後、どうですか?」と伺うと――
「ときどき症状は出ますが、夫婦げんかをすると子どもの体に出ると分かりました」
と教えてくれました。
症状が出ると、どうしても「治すこと」に意識が向いてしまいます。
でも、あの“見ない”体験をきっかけに、心と体のつながりを感じられるようになった。
そう話してくれたとき、私はとても嬉しく思いました。
鍼灸師として初めて出会うアトピー治療のケースでした。
良くなるかどうかは正直わかりません。
(それは30年以上経ったいまでも同じです)
ただ、この治療に導いてくださった”薬を使わない耳鼻科医”の樋田先生の診療では同じように回復して行く人を沢山見ていたのです。
子どもの症状の背景には、親の心の状態が関わっていることもある。
「見ない」ことで、親も子も少し楽になれることがある。
結果的に良くなり、お母さんもいろんな気づきがあったようで私には忘れられない症例の一つです
