なぜ人は他人をいじめるのか?──セロトニンと“地位の脳内報酬
いじめは、人の心を深く傷つけ、
ときには取り返しのつかないことにもつながります。
「いじめはダメ」──
誰もがそう思っています。けれど、それでもなくならない。
ダメだとわかっていても、いじめは起きてしまう。
それは一体なぜなのでしょうか?
性格のせい? 教育のせい? 環境のせい?
もちろん、それらも大きく関係しています。
でも、もっと根本的な原因は──
実は、私たちの“脳”にあるのです。
サルの脳とセロトニンの関係
いじめの根本原因が「脳」にある──そう聞くと、驚く人もいるかもしれません。
でも実は、人間の脳の奥深くには、“いじめを引き起こす仕組み”のようなものが組み込まれているのです。
どういうことか、少しだけ脳の進化をさかのぼってみましょう。
人間の脳は、ざっくり言えば「ワニの脳」「馬の脳」「サルの脳」「人の脳」という4層構造でできています
👉 脳の4層構造についてこちらで詳しく説明しています。
その中でも「サルの脳」は、群れの中での上下関係を敏感に感じ取り、順位を保つことに非常に敏感です。
このサルの脳は、ある特徴的な神経伝達物質と深く結びついています。
──それが「セロトニン」です。
✅ セロトニンとは?
「幸せホルモン」と呼ばれることもありますが、本来の役割はもう少し現実的です。
セロトニンは、**「自分は今、安全な場所にいる」「群れの中で受け入れられている」**という安心感を、脳に与えてくれる物質です。
しかし、「サルの脳」ではセロトニンの分泌量には明確な傾向があります。
群れの中で“上位”にいる個体ほど、セロトニンの分泌量が多い。
つまり、自分が“下”に見られたと感じた瞬間、
脳はセロトニンの分泌を減らし、強い不安を感じるのです。
この「上か下か」をめぐる争いこそが、
いじめの土台になっていると考えられます。
🔍 セロトニンは“支配”によっても出る
セロトニンは、リラックスしているときや、日光を浴びたときにも分泌されます。
でも、サルの脳にとっての“安心”とは、それだけではありません。
それは──「自分が他の個体より上にいる」と実感できること。
だからこそ、他人より優位に立ったとき、
あるいは誰かを見下したとき──
脳は「よし、安全だ」と判断し、セロトニンを出すのです。
それが、「支配することで安心する脳」です。
💡 不安な人ほど、いじめやすい?
逆に、自分の立場が不安定だと感じている人は、
無意識に「他人を下げて自分を保とう」とします。
みんなが笑っているのに、自分だけうまく馴染めていないとき
周囲に評価されていないと感じるとき
誰かが注目され、自分の存在がかすんだように感じるとき
そんな瞬間に、他人をからかったり、否定したりすることで、
一時的に“安心感”を得ようとするのです。
つまり──
いじめは「安心感の代替行動」になってしまっている。
もちろん、これは決して許されることではありません。
でもその背景には、“安心が足りない脳”という、構造的な問題があるのです。
なぜいじめは止まらないのか?──脳の快感と社会構造】
ここまでで、いじめの背景には「サルの脳」と「セロトニン」が深く関係していることを見てきました。
では、なぜいじめはこれほどまでにしつこく、連鎖的に、繰り返されるのでしょうか?
その理由は、いじめが単なる“攻撃行動”ではなく──
脳にとって“快感”や“報酬”になっているからです。
🧠 脳は「やったほうが得だった」と学習する
他人をバカにしたとき、誰かを無視したとき──
その瞬間に、自分が「優位に立った」と感じられると、脳はセロトニンを分泌します。
そしてその感覚を、「快いもの」「安心できるもの」として記憶するのです。
・誰かをいじったら笑いが取れた
・相手が黙って引き下がった
・空気が“自分中心”になった
これらの体験は、“成功体験”として脳に刻まれ、
次もまた同じ行動をとろうとする「クセ」になっていきます。
つまり、いじめが繰り返されるのは──
**「脳がその行動にご褒美を与えているから」**なのです。
🧠 しかも、周囲の無反応が“補強”になる
さらに厄介なのは、周囲の沈黙や曖昧な態度です。
本当は止めたかったのに何も言えなかった。
関わりたくなくて見ないふりをした。
「別に自分がやったわけじゃないから」と距離を取った。
こうした態度も、加害者の脳にとっては**「ああ、これは許されるんだ」という学習材料**になります。
「いじめても誰にも止められなかった」
↓
「ということは、このやり方で自分の立場を守れる」
↓
→ 習慣化されてしまう
こうして、いじめはその場に“定着”してしまうのです。
🏫 社会構造も、いじめを止めにくくする
現代社会の構造も、いじめの連鎖を止めにくくしています。
学校では、序列・人気・空気など目に見えない「地位」が存在する
職場でも、立場・役職・人間関係が心理的な“群れ”を作りやすい
いじめの報告をすると「空気を悪くする」と思われる
こうした環境では、「誰かを下げることで自分の安心を確保する」構図が温存されやすいのです。
そして問題なのは、その行動が道徳的に間違っているにもかかわらず、脳は“正解”だと感じてしまうこと。
いじめは“脳にとって”は快感でも、“人として”は間違い。
このズレが、いじめを根深く、やっかいなものにしているのです。
🧩 まとめ──いじめは「脳の構造が引き起こす社会的なクセ」
いじめは、決して個人の性格や意地の悪さだけで語れるものではありません。
私たちの脳──特に“サルの脳”と呼ばれる部分には、**「順位を気にし」「優位に立つことで安心する」**という本能的な性質が根づいています。
そしてその本能が、セロトニンという“安心ホルモン”のご褒美と結びついていることで、
ときに「いじめ」という形で表れてしまうのです。
さらに、いじめによって優位に立てたという体験が脳にとっての成功体験となり、
何度も繰り返されてしまう──
これが、いじめが止まらない根本的な仕組みです。
🤝 では、どうすればいいのか?
「いじめをしてはいけない」と伝えるだけでは、足りません。
なぜなら、いじめをしている側の脳はそれを**“正解の行動”だと学習してしまっている**からです。
だからこそ、私たちが目指すべきは──
✅ **「いじめをしなくてもセロトニンが得られる環境」**をつくること。
成長や努力が評価される
人と違っていても居場所がある
自分の存在が群れの中で受け入れられていると感じられる
そんな安心を感じられる社会であれば、
他人を下げて得る“安心”に頼る必要がなくなるのです。
あわせて読みたい(関連Note)
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