「日本語教師ですか!じゃあ、英語が得意なんですね!」に対する違和感
"So, you speak English fluently, right?"(じゃあ、英語はペラペラなんですね!)
これは、英検準1級の面接試験で面接官から言われた言葉です。
英検準1級の面接の冒頭には、点数には直接影響しないアイスブレイクの時間があります。
そこで "Could you tell me a little bit about yourself?" と自己紹介を求められた私は、日本国内の日本語学校でアジアやヨーロッパなど様々な国から来た留学生に日本語を教えていることを話しました。
すると、面接官(おそらく、日本人の英語教師の方)はパッと表情を明るくして、冒頭の言葉を投げかけたのです。
少し戸惑いながら、私はこう答えました。
"Idon't use English at work."(仕事では英語は使いません。)
本当はもっと詳しく説明したかったのですが、あくまでもアイスブレイクの時間だったので、その一言だけにとどめました。
すると、面接官はうなずいて、
"You don’t need to speak English."(英語を使う必要がないんですね。)
と言い、そのまま本題の面接へと進みました。
面接自体は問題なく終わり、結果も無事に合格でした。
ただ、この短いやりとりが、今もずっと心に引っかかっています。
「日本語教師です」と話すと「じゃあ、英語が得意なんですね」と言われることは、今回に限らずこれまでに何度もありました。
そのたびに、
「どうしてそういう理解になるんだろう?」
と少し不思議に思います。
私が話しているのは、
「様々な国から来た英語が母語ではない学習者が集まるクラスで日本語を教えている」
ということです。
そこから、
「英語で教えているに違いない」
「英語が得意に違いない」
と結びつくのは、少し飛躍があるように感じます。
今回の場合、相手が言語教育に関わる方だったので、なおさら印象に残りました。
「日本語教師=英語ができる」と思われやすいのには、いくつか理由があるように思います。
外国人と話すときは英語が共通言語になるというイメージ。
義務教育において日本語で英語を教わった経験。
そうした感覚が重なって、
「外国人に日本語を教える=英語で説明する」
というイメージにつながっているのかもしれません。
しかし、実際の日本国内の日本語学校の教室は、もう少し複雑です。
例えば、私が担当しているクラスには、ネパール、中国、ミャンマー、スリランカ、タイ、モンゴル、フランス、ウクライナなど、本当に様々な国の学習者がいます。
英語が得意な人もいれば、そうでない人もいます。
そうした環境で共通言語となるのは「日本語」です。
授業中だけでなく、休み時間の学習者同士の雑談も、日本語でやりとりされています。
ちなみに、私自身、以前は日本国内の大学で英語を使って日本語を教えていたこともあります。
その大学では一定レベル以上の英語力が入学要件になっており、その留学生たちが所属している課程は「英語で学ぶこと」を特徴としていました。
つまり、英語を使うかどうかは、「教師の能力」ではなく、「所属機関の方針」や「学習者のニーズ」によるところが大きいと思います。
直接法(日本語で日本語を教える方法)と間接法(英語などを使って教える方法)。
どちらも経験してきましたが、それぞれにメリットとデメリットがあり、異なる難しさがあると感じています。
ただ、「日本語で日本語を教えています」と言うと、
「それなら私にもできそう」と言われることがあります。
一方で、「英語で日本語を教えています」と言うと、
「すごいですね」と言われることもあります。
評価の基準が、日本語教育の専門性ではなく、「英語を使っているかどうか」になってしまうことに、違和感を覚えています。
「日本語で日本語を教える=母語話者なら誰でも教えられる」ではない。
「英語で日本語を教える=英語ができるからすごい」ではない。
短絡的に捉えられがちな日本語教育の専門性について、これからも少しずつ言葉にしていきたいと思います。
