同じ本を、同じようには読めなくなった日
5年くらい前に買った一冊の本を、久しぶりに引っ張り出しました。
稲盛和夫氏の『経営のこころ』です。
買った当時も、もちろん真面目に読んだつもりでした。ただ、正直に言えば、そのときは「なるほど、そういうものなのだろうな」という程度の受け止め方だったと思います。
良いことが書いてある。大事なことが書いてある。
でも、それが自分の胸の奥まで入ってきていたかというと、たぶんそうではありませんでした。
先日、久しぶりにその本を開き直しました。
すると、5年前にはそれほど引っかからなかった言葉で、手が止まりました。
経営とは何か。
経営者は何を見て、何を大切にして、どう会社と向き合うのか。
そこに書かれていることは、とてもシンプルでした。
でも、今の私には、そのシンプルさが重く感じられました。
同じ本であり、同じ文字です。
書いてある内容が変わったわけではありません。
変わったのは、読む側の私でした。

5年前の私は、まだ今ほど「自分が経営する」ということを、自分の体で受け止められていなかったのだと思います。
もちろん、当時も仕事はしていました。責任も感じていました。事務所を良くしたいという思いもありました。
それでも今振り返ると、どこかでまだ、経営というものを「知識」として読んでいた気がします。
けれど今は違います。
人を採用すること。
職員と向き合うこと。
組織をどう育てていくか悩むこと。
地域の経営者に対して、自分たちは何を提供できるのか考えること。
そして、自分の判断が会社の未来に影響すること。
そうしたものを日々感じるようになると、同じ言葉が、まったく違って読めるようになります。
昔は読み流した言葉が、今は自分に向かってくる。
昔は「正しいこと」として読んでいた言葉が、今は「自分は本当にできているのか」という問いに変わる。
本を読み返しながら、そんな感覚がありました。
同じ本を、同じようには読めなくなっていました。
これは、本の読み方が上手くなったという話ではありません。
経営者として、自分がまだまだ未熟だと分かるようになった、ということなのだと思います。
5年前には分からなかったことが、今は少し分かる。
でも、今分かったつもりでいることも、5年後に読み返したら、また違って見えるのかもしれません。
そう考えると、経営者にとっての学びは、一度読んで終わるものではないのだと思います。
同じ本を読み返す。
同じ言葉にもう一度触れる。
以前は素通りしたところで、今の自分が立ち止まる。
そこに、自分の変化が表れるのだと思います。
最近の私は、HIDAKI-KAIKEIをこれからどんな事務所にしていくのかを、ずっと考えています。
20人ほどの組織を、どう育てていくのか。
地域の経営者にとって、私たちは何であるべきなのか。
ただ申告をするだけではなく、経営者が挑戦し続けられる環境をどう整えていくのか。
問いは増えています。
答えがすべて見えているわけではありません。
だからこそ、昔読んだ本を、今もう一度読む意味があるのだと思います。
新しい情報を追いかけることも大切です。
新しい場所に行き、新しい人に会い、新しい学びを得ることも必要です。
でも同時に、過去に出会った言葉に、今の自分でもう一度向き合うことも大切なのだと感じました。
経営者としての立場が変われば、同じ言葉の重みも変わります。
5年前には受け取れなかったものを、今なら受け取れることがあります。
今はまだ受け取れないものを、5年後の自分なら受け取れることもあるのかもしれません。
そう考えると、経営とは、答えを一度見つけて終わるものではなく、何度も立ち返りながら、自分自身を深めていくものなのだと思います。
HIDAKI-KAIKEIも、まだ完成された事務所ではありません。
私自身も、まだ答えを探している途中です。
それでも、地域の経営者がもう一度自分の原点に立ち返り、考え、学び、挑戦し続けられるような場所でありたい。
そのためにも、まず私自身が、学び続けなければならないのだと思います。
HIDAKI-KAIKEIは、経営者が本物の価値を発揮し、その価値がきちんと伝わるよう、数字を整え、対話の場をつくり、経営環境を整え続けます。
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