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【創作小説】ミナとカナタ 第5話|また会う前提で考えている+初期イメージ曲【Suno】

ここまでのあらすじ



カナタは、ミナの背中が遠ざかるのを見ていた。

今回は、追わないという判断ではなかった。

ただ、追う理由がなかった。

それでいいと思った。

彼女の髪に入っていたピンクが、妙に記憶に残っている。

前回はなかった。

前回は、もっと無防備に見えた。
今日は少しだけ、自分を持ち直しているように見えた。

何かを足している。

そう思った。

でも、それが何なのかを勝手に決めるのは違う気がした。

カナタは海を見た。

もう一度ここへ来た。

偶然ではない。

そう認めるには、まだ少し抵抗があった。

けれど、少なくとも今日は、イヤホンのせいではない。
バッテリーが切れたからでもない。
コースを間違えたからでもない。

自分で、ここへ来た。

誰かに求められたわけではない。
仕事でも、演技でもない。

理由をつけきれないまま、それでも足が向いた。

それは、思っていたよりも静かな事実だった。

なぜ、あの声が残ったのか。

カナタにはまだわからない。

上手かったから、だけではない。
綺麗だったから、だけでもない。

あの声は、どこかで届くことを怖がっているように聞こえた。
でも、完全には閉じていなかった。

それが、引っかかったのかもしれない。

カナタは自分の手を見る。

今日は拍手しなかった。

必要なかった、というより、できなかった。

言葉で伝えたからかもしれない。

歌、上手かったです。

言ってから、その言葉が少し足りない気もしていた。

でも、今言えるのはそれくらいだった。

カナタはゆっくり息を吐いた。

朝日は、もう少し高くなっていた。


ミナは帰り道、何度か足を止めそうになった。

今の、変じゃなかったかな。

急に逃げなかった。
ちゃんとお礼も言えた。
少しだけ話した。

でも、何を話したのか思い返すと、ほとんど中身はない。

この時間によく来るんですか。
たまにです。
ランニングですか。
はい。

それだけ。

なのに、前回よりずっと頭の中が忙しかった。

歌、上手かったです。

その一言が、何度も戻ってくる。

ミナは小さく息を吐いた。

嬉しい。

そう認めるまでに、少し時間がかかった。

怖いのも本当。
恥ずかしいのも本当。
でも、嬉しいのも本当だった。

家に着いて、鏡の前に立つ。

髪のピンクは、少しだけ乱れていた。

ミナは指先でそこを整えた。

前回は、何も足せていなかった。
今日は、少しだけ足して行けた。

それで何かが変わったのかは、まだわからない。

でも、聞かれても、全部壊れるわけではなかった。

そう思えたことだけは、たしかだった。

ミナはふと、あの数字を思い出した。

774。

なんの意味なんだろう。

聞いてみたい、と思った。

すぐに、いやいや、と首を振る。

初対面みたいなものだ。
二回会っただけだ。
普通、聞かない。

でも、もしまた会ったら。

そこまで考えて、ミナは鏡の中の自分と目が合った。

また会う前提で考えている。

「……いや、別に」

誰に言い訳するでもなく、そう言った。

でも、声はあまり強くなかった。


カナタは部屋に戻ってから、イヤホンをテーブルの上に置いた。

今日は使わなかった。

充電はできていた。
音楽も流せた。
余計なことを考えないようにすることもできた。

でも、しなかった。

カナタは水を飲み、窓の外を見た。

朝の光が、部屋の床に細く落ちている。

マネージャーと話しても、まだ決めていない。

新しい役。
未経験の部分。
カナタならできるという言葉。

そこに、今日も別の音が混ざっていた。

前回よりもはっきりした声。

そして、細いピンクの髪。

あれは何だったのだろう。

聞くにはまだ早い。

そう思った。

でも、記憶には残った。

カナタはカップを置き、無意識に首元へ手をやった。

数字の縁に触れそうになって、途中で止める。

774。

彼女は前回、それを見た。

たぶん、今日も見ようとして、やめた。

そのことに、カナタは気づいていた。

聞かれたら、どう答えるのだろう。

カナタは小さく息を吐いた。

もし、また会ったら。
そう考えて、少しだけ顔を上げる。

また会う前提で考えている。

カナタはそのことに気づいて、少しだけ眉を寄せた。
理由は、まだつけられなかった。


最後に、ちょっとだけおまけです。

この曲は、小説を書き始める前に、ミナとカナタの空気感をつかむために作りました。

実はこの頃は、二人の役割を今とは逆に考えていました。
そこから少しずつ設定が変わって、現在のミナとカナタになっています。

物語が今の形になる前の、初期イメージとして聴いてもらえたら嬉しいです😄


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