人生の最後に、人は何を食べたいと思うのだろう
管理栄養士として、
今も答えが出ないことがあります。
今まで、老人施設で働いてきて、
何人の方を見送ってきたのでしょう。
病院へ行かれた方。
施設で最期を迎えられた方。
念願だったご自宅へ帰られた方。
そして、別の施設へ移られた方。
施設へ入所されたばかりの頃は、とてもお元気だった方が、季節をひとつ、またひとつ重ねるうちに、少しずつ変わっていく。
そんな姿を、何度も見てきました。
きっと、教科書に載っている食の知識だけでは書けない話です。
数字や栄養価だけでは語れないこと。
現場で出会った人たちから、教えてもらった、大切な記憶なんです🙂↕️
「人生の最後に、何を食べたいですか?」
そう聞かれたら、皆さんは何と答えるでしょう。
正直なところ、今の私には答えられません。
死がまだ遠い場所にあるうちは、最後の一皿なんて、なかなか想像できないものなのかもしれませんね。
ですから、利用されている方にこの質問をすることも、簡単にはできませんでした。
皆さんも人生の最後に何を食べたいか、
考えながら読んでいただけたらと思います。
食べたいものを食べられるという幸せ
施設では、毎日三食とおやつが出ます。
栄養バランスを考えた食事。
体のことを思って作られた食事です。
もちろん、それはとても大切なこと。
でも、毎年行う嗜好調査では、
時々こんな声が聞こえてくるんです。
「お寿司が食べたいなぁ。」
「たまにはステーキがいいね。」
「かにも食べたい。」
この言葉を聞くたびに、少し切なくなりました。
本当は食べたいものがある。
けれど、年齢や病気、体の状態などによって、だんだんと食べられなくなっていく。
施設の経済面での限界もあります。
ご家族の方が好きなものを持ってきてくださることもあります。
でも、安全面を考えると、何でも持ち込めるわけではありません。
外食に行ける方もいますが、すべての方にその環境があるわけでもないんですよね。
また、感染症の流行が起これば、外出も面会もあっという間に難しくなってしまいます。
そう考えると、「食べたいものを食べられる」ということは、実はとても幸せなことなのかもしれません。
さらに切ないのは、飲み込む力、
つまり嚥下機能が弱くなってしまったときです。
普通の食事が難しくなり、やがてミキサー食へ。
もちろん、安全に食べていただくために必要なことです。
それでも、形がなくなった食事を前にして、食べる意欲が落ちてしまう方を、私は何人も見てきました。
「食べる」ということには、
味だけではない何かがあるのでしょうね。
香りや見た目。
噛む感覚。
そして、「これを食べたい」という気持ち。
それら全部が合わさって、食べる喜びになっているのだと思います。
忘れられない利用者さんの話
ここでは、Aさんとします。
飲み込む力が少しずつ弱くなり、ミキサー食も難しくなっていきました。
お腹に小さな穴を開けて栄養を入れる「胃ろう」にするかどうか…
選択を迫られる時期になっていました。
ご家族の方は毎日のように、
食事の時間に来られていましたね。
「少しでも食べてほしい。」
その一心で、優しく声をかけながら、
ひと口、またひと口と介助をされていました。
ご家族の方のひたむきな姿を、今でも忘れられません。
食べることは、ただ栄養を摂るだけではない。
そこには愛情があり、願いがあり、その人の人生そのものがある。
そんなことを、Aさんとご家族の方から教えていただいた気がしています。
そして、人の身体って本当に不思議なんです。
普段はむせ込みやすい方でも、ケーキやお刺身など、特別なものが出ると、驚くほどしっかり食べられることがあります。
もちろん、見守りや小さく切る工夫は必要です。
でも、「食べたい」という気持ちがあると、
表情が変わるんです。
背筋が少し伸びる。
目が輝く。
そして、いつもより上手に食べられることがある。
人の力って、本当にすごいですよね✨
もうひとつ、忘れられない出来事
あるとき、利用者さんに「今、一番食べたいもの」を聞いてみたことがありました。
すると、意外な答えが返ってきたんです。
「カップラーメン。」
正直、驚きました。
「和食がお好きな方が多いから、どうかな?」
そんなふうに思っていたのです。
そこで、後日レクリエーションでカップラーメンを食べる時間を作ってみました💡
するとー
「おいしいね。」
「久しぶりだね。」
皆さん、本当にいい笑顔で召し上がっていたんです。
普段あまり食が進まない方まで、きれいに食べてくださいました。
あの光景は、今でも忘れられません。
最後に
栄養バランスの整った食事は、とても大切です。
それは間違いないと思います。
でも、それだけでは語れないものが、食にはあるのかもしれません。
人生の最後に、本当に食べたいものって何なのでしょう。
高級な料理でしょうか。
懐かしい家庭の味でしょうか。
それとも、
誰かと一緒に食べる、いつものごはんなのでしょうか☺️
何人もの方を見送ってきた今でも、
答えはまだ見つかっていません。
きっと、この先も簡単には見つからないと思います。
それでも私は、これからも考え続けていきたいと思っています。
今日の夕ごはんを食べながら、少しだけ考えてみてください。
「人生の最後に、あなたは何を食べたいですか?」
そんな答えのない問いを抱えながら、
今日も利用者さんからたくさんのことを教えていただいています。
こちらのエピソードも、私にとって大切な宝物のひとつです。
よろしければ読んでいただけると嬉しいです😌
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有料記事になりますが、介護施設での忘れられないエピソードを書いています。
ご興味のある方は、ぜひ読んでいただけると幸いです😌
