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アドラー心理学で解く悩み相談 /アメリカのイラン攻撃とホルムズ海峡の封鎖

青年は悩んでいました。それは、アメリカのイラン攻撃で、ホルムズ海峡がイランによって事実上封鎖され、

原油の運送が滞り、世界、特に東南アジアへの原油や、ナフサの搬出が困難になり、原材料の高騰から、多くのモノやサービスが値上がりしていることでした。

このままでは、世界はどうなってしまうのか、国民の暮らしはどうなるのかと。そこで人生の師である哲人に、その答えを求めたのです。


書斎の夜:世界の混沌と個人の平穏

【青年】
(憤慨した様子で、部屋に入るなり声を荒げる)
先生! 私はどうしても納得がいかない、いや、絶望していると言ってもいい! 情報を見るたびに胸が締め付けられる思いです。

アメリカによるイラン攻撃、そしてホルムズ海峡の事実上の封鎖……。

このせいで原油の調達は困難になり、私たちの生活用品から食品まで、ありとあらゆるモノの値上がりが相次いでいます!

なぜ何の罪もない一般の私たちが、遠く離れた国の権力争いのせいで、こんな苦しみと不安を強いられなければならないのですか!?

私の心はすっかり荒んでしまいました。どうか、私の心の安寧を保つ言葉を、救いを授けてください!

【哲人】
(静かに紅茶をすすり、青年を穏やかな目で見つめる)
なるほど、海の向こうの戦火と、それによって引き起こされた物価高騰に、激しく心を痛めておられるのですね。

あなたの感受性の豊かさと、不条理に対する怒りはよく分かります。しかし、単刀直入に申し上げましょう。

アドラー心理学の観点から言えば、あなたが今すべきことは、その問題から「課題の分離」を行うことです。

問題からの課題の分離

【青年】
(目を見開いて) ……課題の分離、ですって?
先生、あなたという人はどこまで冷酷なんだ! 今、世界は危機に瀕しているのですよ?

私たちの財布から日々お金が奪われ、未来が見えなくなっている。これは私の人生に直結する大問題だ! それを「分離しろ」などと、突き放すおつもりですか!

【哲人】
冷酷なのではありません。逆ですよ。あなたが健やかに生きるための、極めて実践的な知恵です。

では、お尋ねします。「アメリカの軍事行動」や「イランによる海峡閉鎖」、そしてそれに伴う「世界的な物価の高騰」は、あなた個人の力で今すぐコントロール出来ることですか?

【青年】
そ、そんなわけがないでしょう! 私が一介の市民に過ぎないことくらい、自分が一番よく知っていますよ。

大統領でもなければ、最高指導者でもない。だからこそ、無力感に苛まれているのです!

すべては人間関係の悩みである

【哲人】
そう、それこそが「他者の課題」であり「世界の課題」です。それは、あなたがコントロールできない領域の出来事です。

アドラーは「すべての悩みは、人間関係の悩みである」と断じました。

一見、今回の件は「経済や戦争の悩み」に見えるかもしれない。しかし本質は違います。

あなたは「予測不可能な他者(国家や権力者)」の動向に振り回され、彼らとの関係性の中で、自分の安心を脅かされていると感じている。

いいですか、他者の課題に土足で踏み込むこと、あるいは他者の課題を自分の肩に背負い込むことは、自らを苦痛へと追い込む行為です。

あなたがいくら心を痛めても、ホルムズ海峡は開きません。

【青年】
(言葉を詰まらせるが、すぐに反論する) では、何ですか?

世界がどうなろうと、モノの値段がいくら上がろうと、私はただ目をつむり、耳を塞いで、自分のことだけを考えていろと? そんな利己的な生き方が、アドラーの言う「幸福」なのですか!

自分の課題に集中しろ!

【哲人】
いいえ。むしろ逆です。私たちが目を向けるべきは、「これほどの逆境の中で、自分に何ができるか」と言う「自分の課題」だけなのです。

どれだけ物価が上がろうとも、あなたの目の前には、今日も変わらず「あなたの人生」があります。

今日食べる食事、今日交わす友人との会話、今日取り組むべき仕事。それらを丁寧に、誠実に生きること。それだけが、あなたに許された特権であり、義務なのです。

【青年】
(うつむき、拳を握りしめる) ……分かっていますよ。目の前の生活を大事にすべきだなんて、綺麗事としてはね!

でも、世界がこんなに不条理で満ちているのに、自分一人だけ平穏でいるなんて、なんだか罪悪感がある。世界と自分は、繋がっているはずだ……!

目指すゴールは「共同体感覚」

【哲人】
(立ち上がり、青年の肩に手を置く) 繋がっていますとも。アドラーの目指すゴールは「共同体感覚」、つまり他者を仲間と見なすことです。

しかし、他者を仲間と見なすことと、他者の課題に巻き込まれて自滅することは、全く異なります。

あなたが不安に怯え、心を荒ませた状態で、身近な人に優しくできるでしょうか? 目の前の仕事に全力を尽くせるでしょうか?

【青年】
それは……、難しくなるかもしれません。どうしてもイライラしてしまいますから。

身近な人を笑顔にすること

【哲人】
そうでしょう。あなたが世界の不条理に怒り、心を痛めることは、一見すると正義感の表れに見えますが、

結果としてあなたの身の回りの小さな共同体(家族や友人、職場)に悪影響を及ぼしてしまう。これこそ本末転倒です。

あなたが今、世界の平和や安定のためにできる最大の貢献は、「私自身の心の平穏を保ち、自分の手の届く範囲の人々へ、貢献すること」です。

マクロな経済を動かすことは出来なくても、身近な人を笑顔にすることは出来る。

【青年】
(深くため息をつき、少し表情を和らげる) ……世界を変えようとするのではなく、まず「自分の足元」を固めろ、ということですか。

【哲人】
その通り、世界がどれほど混沌に包まれようとも、あなたの幸福の責任は、アメリカの大統領でもイランの指導者でもなく、あなた自身にあります。

物価高騰と言う不条理な「与えられた環境」を変えることは出来ない。

しかし、「与えられた環境をどう解釈し、どう生きるか」は、今この瞬間から、あなた自身が選ぶことが出来るのです。

外の嵐に惑わされてはいけません。あなたの書斎の灯りを、まずは静かに灯し続けるのです。それこそが、あなたの心の安寧を保つ、唯一無二の道なのですから。


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