それは本当に「我が国」か?
例えば「早起きは三文の得」ということわざは、
小学生くらいまでの誰もが知っているものとして、
その教訓も分かりやすいものに思われている、
気がするのだが、
私が初めて大阪に出張したその日は、
九州より二時間も早く日が傾き沈んでいく様子に驚いたし、
大阪に移り住んで後もしばらくの間は、
日が早く沈むのだから知識としては分かっていたはずだが、
毎朝二時間も早く夜が明けて、
外に歩き出せるほどに近所が明るくなる様子に驚いていた。
冒頭の「早起きに三文の得」とは、
日の出・日の入り時刻がさほど変わらない、
せいぜい一時間程度の範囲内に、
暮らしている者同士に成り立つ言葉であって、
文、という貨幣単位が機能していた時代に、
江戸から近畿、更に九州を旅した者の感覚では、
西側に暮らす者は随分と、
朝寝坊かつ夜更かし好きな気質に思えただろう。
今現在でも全小学生に取らせた生活記録を、
大量に情報分析にかけたならば、
単純に時間だけを基準にして似通った結果が導き出され、
実態にそぐわない生活指導が行われそうな気がする。
現実に私が小学生の頃には行われていたような、
行われてはいないまでも、
「九州の人間は時間にルーズ」的なイメージが、
形作られていたような気がする。
余談だが、
言葉の乱れの中でも特に、
敬語の間違いが、
とりわけ新入社員を迎える時期には多く取り沙汰されるが、
九州方言の複雑な敬語体系に階層意識を、
どうにか標準語に直そうとしたなら、
二重敬語は当たり前に存在するし、
九州においては使いこなせなければ暮らしていけない。
ことほど左様に、
「伝統」や「常識」といったものは、
しかもある程度の「正しさ」を持って主張される時には、
実際のところ首都や都市圏に暮らす者達にとっての、
共通認識でしかない場合が多い。
何も「我が国」に限らない。
中国人は北京人に限らず、
フランス人はパリ人に限らず、
ロシア人はモスクワ人に限らず、
日本人は東京人に限らず、
トルコ人はイスタンブール人に限らず、
アメリカ人はニューヨーク人に限らない。
今更指摘されるまでもなく分かり切った事に思われた方は、
自らの言動が、
それらの事実を把握したものとなっているかどうか、
吟味する必要がある。
無論、私も含めて。
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