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己の立ち位置

 はじめましての人も、前から知ってる方も、ごきげんよう。
 岡埜 由木古です。

 この記事は

 です。
 地図になんか載っていないよ。

2025年8月4日
(文字数:約700文字)


 路地裏の、更に奥まった暗がりに、人知れずひっそりと店を開けている、立ち飲み居酒屋。

 誰かがいつか置き忘れた品を、持ち主も名乗り出ないので始末に困るように、カウンターの隅っこに立て並べられている文庫本は、油と酒と涙に汚れて表紙もふにゃふにゃドロドロだ。

 そうした文庫本の並びこそが、私。
 より正確に言うなら、私が書き上げ公開してきた小説群。

 日々の鬱積に押し潰されかけての酩酊状態でもなければ、まず手に取ってページをめくってみようとも思わない。そうした方々もまぁ十人中八、九人は、「なんじゃこりゃ」とか「つまらない」とか「よぉ分からん」とか呟きながら放り捨てる。
 店の親父が拾ったゴミを今忙しいのでとりあえずみたいに、また元の隙間に押し込め戻す。

 そうした十人中のたった一人くらいは、ページをめくっていくうちに目頭を抑え出し、涙が滲み出し果てはカウンターに突っ伏して号泣する。
 泣き疲れて寝入り込んだ翌朝には、本の内容はおろかタイトルも作者も、ケロッと忘れてしまうのだが。

 店の親父は時折理由も言い置かず表に出るので、その合間の開け放たれた戸口から、覗き見る路地裏がすでに店の内にいる者たちの目には華やかだ。

 路地裏の長であるコニシ木の子氏は、心優しく表通りへの帰還を促し続けてくれているが、路地裏に入り浸る者の中には、表通りに帰る家も居場所も無い者もいる。

 私はそうした者たちにこそ読まれたい。他は任せた。


以上です。
ここまでを読んで下さり有難うございます。

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