メトロンズ #10 『事故か、事件か、同窓会か』
気がつけばメトロンズを最初に知ってから丸5年。あっという間に10回公演。
今回はフルメンバー+客演2名というキャストで、10回記念の特別感があったように思います。
今回も、東京に宿泊して土曜2公演と翌日の千穐楽を観劇し、後日配信を観ながら書いたメモを基に、備忘録兼感想文として記入していきます。
今回はセットでのネタバレがないということで2公演ぶりに撮影可になりました。

少し古びた温泉旅館の一室を模したセット。
とあるシーンが複数挟まることによって、裏側がどうなっているのかが今までで一番気になるセットだった気がします。
そして、そんな見えない部分の仕組みや裏側について、アフタートークでお聞きできたのも非常に興味深かったです。
「安全に」と共に、「音が出ないように」という配慮も必要だったとは。
【追記】
FANY先行開始のタイミングで裏側動画が公開。
こういうのが見たかったんだよなと思うような内容でした。非常にありがたいです。
メトロンズ第10回公演
「事故か、事件か、同窓会か」
2026/03/11(水)~03/29(日)
赤坂RED/THEATER
あらすじ・登場人物
旅館の一室に、40代の男が落ち着かない様子で入ってくる。今日は大学時代の同級生たちと、同窓会を兼ねた温泉旅行。彼はみんなより先に到着し、驚かせるための隠れ場所を探していた。しかし、うっかり足を滑らせ、ベランダから転落。搬送。
数時間後、刑事が同級生たちを部屋に集め、重々しく告げる。
「この中に犯人がいます」
存在しない犯人をめぐり、アリバイの有無や動機の詮索が繰り広げられる。
新ジャンル「ノンクライムサスペンス」。
言い切ります。
悪いのは、落ちた奴です。
舞台は温泉旅行を兼ねた同窓会が行われる予定だった、旅館の客室。
冒頭のシーンでこの客室にいるのは、いの一番にやってきた横山(児玉さん)のみ。ワクワク感が全身から滲み出ている彼は仲間たちを驚かせようと、ちゃぶ台の下や押入れの中など、隠れ場所を探している。そしてそのままあらすじ通り、隠れ場所の案の一つとして窓枠に足をかけ、足を滑らせて転落。
「わああああ!」と叫びながら落ちていく姿を最後に、先ほどまでの彼の笑顔は見ることができなくなり、次に彼が出てくるのは約1時間後、頭に包帯を巻いて意気消沈した姿でのことある。
横山の転落、悲鳴とともにタイトルを書いた旗が落ちて、次に明転する所から物語が本格的にスタートする。
明転直後から客室にいるのは、同窓会参加者の新沼(関町さん)、戸田(池田さん)、沢木(純さん)。そして遅れて、同窓会の発起人でありこの旅館の女将である荒川(長尾さん)がやってくる。
そして本来いるはずだった横山の代わりに、捜査一課の刑事である小野(赤羽さん)、山下(田所さん)、東堂(辻さん)が客室にいる。
横山の転落には事件性があること、同窓会メンバーにその疑いがかかっていることを告げられる重苦しい空気。
新沼は横山の無事に安堵しながら前のめりに刑事たちの話を聞こうとし、
戸田は部屋の空気に潰されて口数が少なくなる一方で、絶対音感で人の嘘を見抜けられる特質から、恐怖が限界に達すると突然部屋から逃走する。
沢木と荒川は仲間には極秘で付き合っており、その秘密を守るためにアリバイを話すのを拒否する。そのため、彼らは刑事に対して反抗的で、沢木は時折理屈で刑事(主に山下)を論破しようし、荒川は毅然とした態度でシラを切り続け、やがて2人とも黙秘権を勝手に行使する。
「全員犯人じゃない」と分かっていながらも、それぞれの態度が「結果を知らなかったら怪しく見えたかも」と思える不審なものであった。
刑事の小野・山下・東堂は非常にバランスのいい3人組だなと思った。
「面倒だからさっさと切り上げたい」というスタンスの山下と東堂が、何かと身勝手な4人を抑え込みながら捜査を進めていく。基本的に語気が強く迫力のある山下は、冷酷なようで、苛立ちを捜査に持ち込んだり恋愛に熱い一面があったりと、実はかなり感情ベースで動く人間である。対して、ズバズバと関西弁で場を切り裂き、一番真っ当で冷静な視点で捜査を進めていくのが、おそらく登場人物で一番若い東堂であった。
そしてそんな2人の上司が小野である。
山下と東堂は、沢木や荒川に詰め寄るなど相手の感情を逆撫でしてしまうような行動に出る。しかし小野は、新沼と2人っきりの時に落ち着いて交友関係の聞き込みをしたり、荒川に寄り添いながら言葉巧みにアリバイを聞き出そうとしたり、部屋で1人になったときに部屋の隅々まで確認したりと、捜査の大筋は部下の2人に任せつつも、彼らの取りこぼしはうまくリカバリーしている。ベテラン刑事、そして上司という自分の役割をキチンとわかっていい仕事ができる存在だなと感じた。
不憫な人たち
仲間には内緒で付き合っている恋人とイチャイチャすることしか頭に無い沢木と荒川や、それを知らずに荒川との20年越しの思いが実るのを狙って秘宝館で願掛けまでした新沼など、今回の同窓会は邪な気持ちで楽しみにしている人が多い。
実は不憫な横山
そんな中、横山はどうか。
いの一番に会場入りし、久々に会う友人たちを驚かせようと、少年のような屈託のない笑顔で隠れ場所を探している彼は、下心もなく純粋にこの同窓会を楽しみにしていたに違いない。
そしてそのワクワクは見事に空回りしてしまい、ベランダから転落し、搬送される。「自分で落ちた」とは言えない恥ずかしさや、40歳のいい大人としてのプライドから出た嘘はどんどん大ごとになっていき、旅館に戻ることには取り返しのつかないことになる。
さらに物語の中盤の60分間に旅館で起きたことを知らない横山は、客室に戻るなり同級生の荒川と沢木が内緒で付き合っていたことを突然知らされ、最後には同級生の中で唯一、プロポーズのシーンに立ち会わされる。彼にとってはあまりにも急展開だったであろう。
しかもそれは、自分の身勝手な嘘が作り出した大きくなりすぎた事案を、友人である新沼に罪として背負わせてしまった罪悪感を一生背負っていかなければならないのだと確信させられたタイミングでもある。同級生の「人生一番の幸せのタイミング」で、自分は対極の感情でいっぱいになっている。
ラストシーンでも、沢木たちと共に横山にもスポットが当てられて、彼らの対比が描かれたまま、物語が終わっていく。頭の中で話が追いつかないにも程があるだろう。
純粋に同窓会を楽しみにしていただけなのに、彼は転落を機に不幸のどん底へと落ちてしまう。でも全ての原因は彼にあって、ただの自業自得でしかないのである。不憫だけど被害者ヅラをするのは違うし、可哀想にとは思えないのである。
最も不憫な新沼
そんな横山に比べて、もっと不憫なのが新沼である。
長年想い続けたマドンナとの“ワンチャン”を狙って秘宝館で願掛けをするという、非モテを拗らせた面もある彼だが、裏を返せば20歳頃から40歳まで1人の女性に対して恋心を抱き続ける一途さがある。また、横山の安否を1番心配するなど仲間を大事にしている姿勢も見て取れる。おそらく彼も横山と同様に、この同窓会メンバーで集まれることを楽しみにしていたはずだし、何よりも仲間や友人を大切にする人だ。
そんな優しく穏やかで、横山よりは落ち着きのある新沼は、失恋を機に徐々に狂い始める。
20年思い続けた恋人は、実は仲間と付き合っていて、まさに先ほどこの旅館で「イチャイチャ」していた。
ただの失恋ではない。仲間だと思っていたのに隠し事をされていた上に、相手のことを知っているがために、彼女が自分ではない男と「イチャイチャ」する姿が、否が応でも想像できてしまうのだ。突如カミングアウトされたところで、当然なかなか受け入れられないだろう。その結果、彼は居心地の悪いモヤモヤを抱き、その気持ちを誰かにぶつけて発散しようとする。
しかし、別に仲間内で付き合うことも、それをひた隠しにすることも決して悪いことではなく、新沼が抱いてしまった居心地の悪さをぶつけられる対象は存在しない。
それでも彼は、中盤では沢木と荒川が犯人だとあらぬ罪を擦りつけようとし、最終的には横山に「自分の嘘で他人の人生を狂わせた」という、一生つきまとう罪を背負わすために自ら罪をかぶる。まさにこの物語の大半の時間を、新沼は失恋による自暴自棄で、どうにか自分以外も不幸な目に遭うように大暴れするのである。
人間には「下方比較」という、自分よりも不幸な人を見ることで自尊心を保とうとする心理傾向があるというが、失恋から立ち直れない新沼は、まさにその比較相手を作り出そうとしていたのかもしれない。
怖いもの知らずで大暴れをする狂気的な新沼の姿を見ていると、恋愛というのはここまで人を変えてしまうのかと少し怖くなる。
横山と違って、彼は悪いことは何もしていない。ただ長年1人の女性を想い続け、仲間を大事にし、同窓会を楽しみにしていただけだ。それにしては降り注ぐ不幸の量と心理的負担が多すぎる。新沼はこの物語でもっとも不憫な男である。
「最初に落ちる」構成
あらすじでも伝えられ、冒頭に見せられる「横山が自分で転落する」というシーン。
かなり衝撃的なシーンであるが、横山の落ち方が間抜けだったこと、それから事前にあらすじで伝えられていることもあって、恐怖や不安を感じることなく落ちるところを見ることができた。
それどころか、そのようなシリアスなシーンを見てしまったにも関わらず、今回は90分間ずっと面白かったな、笑いどころが多かったなという印象だった。
きっとこれは最初に「落ちる(=答え)」シーンを見せた構成によるものであろう。
通常であれば、物語が進んでいき、舞台上の熱量が上がっていけばいくほど、観劇している側も引き込まれたり、感情移入をして登場人物の誰かに自分を重ね合わせたりして、笑いよりも怒りや悲しみ、切なさなどの感情が大きくなることも少なくない。
しかし今回、観客はこの事件の答え(そもそも厳密には事件でも事故でもないこと)を知っている。あの劇場内で真相を知らないのは、横山以外の同級生と刑事の7人だけだ。だからこそ、この7人は真剣に犯人を探すために互いを疑い合い、様々な方法で推理を行う。
ただ、観客は真相を知ってしまったが故に、舞台の熱量が上がるにつれて、「横山が勝手に落ちただけなのにな」という感想が頭を掠めていくようになる。7人が真剣な話やそれらしい推理をすればするほど、真実との乖離、そして「浮かれて落ちた」と言う真実の馬鹿馬鹿しさが浮き彫りになっていき、彼らがどんどん滑稽に見えてくる。
彼らが本気になればなるほど、心の中では真実との差に対する笑いが増幅されていったように感じたため、結果として「今回はずっと笑えたなあ」という感想に至ったのだと思う。
見える罪と見えない罪
今作では刑事たちを中心に「横山を落とした殺人未遂の犯人」探しが行われている。
その一方で、作中では「女将が客の財布から金を盗む」「小野がポケットに温泉饅頭を入れる」という2つの犯罪を観客は目の当たりにさせられる。
何かの伏線かとも思ったが、これらのシーンはこの後の何にも関係せず、なおさら謎が深まるばかりであった。
小野に関しては、彼は部屋で1人の時は推理のヒントになるようなものがないかと部屋の至る所を見て回るシーンがあること、饅頭をポケットに入れる前に匂いを嗅ぐこと、この饅頭は少し前のシーンで戸田と新沼が触ったものであることから、他の温泉饅頭と何か違うことに気づいた彼が、推理のヒントになるのかもと持ち帰ったのではないかと推測できた。
問題は女将の窃盗である。
なんの躊躇いもなく他人の鞄と財布を開け、金を懐に入れ、慣れた手つきで財布を拭い、元の位置に戻して涼しい顔をする。そしてこれを繰り返す。下からバイクの音がしようとも冷静に盗みを続け、皆が部屋に集合してからも、誰も気づかずに話は進んでいく。
そう、この窃盗は「横山の転落」と同じく、観客は真相を知っていて、当事者以外の登場人物「だけ」が知らない事件なのである。
今回の登場人物は、横山以外の7人は全力で「横山の殺人未遂」という、「存在しない罪」の真相を追求しようとしている。存在しないのに、彼らにだけは見えている架空の罪だ。
対して、「女将の窃盗」は実際に行われていたのにも関わらず、目撃者も証拠もなく、誰も犯罪の存在に気づいていない。
存在しない罪を追いかける一方で、実際に起こっている「存在する罪」は誰にも見えておらず、見えていないが故に捜査もお咎めもない。
「殺人未遂」という遠くて大きく見える架空の罪に集中するがあまり、手元にある実在の罪には気がついていない。これも見方によっては先述の「滑稽さ」を感じる要素の一つになっているのかもしれないなと思った。
…のに、アフタートークライブを見ていたら「荒川は『そういう人』なだけ」だということが明らかになった。考えすぎだった。
その他思ったこと
関係性が気になる2組
荒川と戸田
みんなのマドンナ的存在の荒川。沢木と付き合い、新沼には20年間片思いをされ、横山とは大学時代に両片思い状態であったが彼が友情を選んだためにフラれてしまうなど、モテるがゆえに複雑な人間関係を作ってしまっている。しかし、そんな中で唯一、彼女との関係性が見えないのが戸田である。
戸田は、荒川が沢木と付き合っているのは知らなかったが、知ったところで新沼ほど驚かない。性格によるものかもしれないが、戸田はあまり色恋沙汰には興味がないのだと思う。
そんな戸田と荒川が2人で思い出話をするシーンがある。荒川は途端に声のトーンを上げて「戸田の絶対音感の実績」の思い出話をし、「大学の時に…なんか誰かが、なんか隠してて…」とかなりのヒントを出すものの戸田は思い出せず、荒川は明らかにトーンダウンする。
荒川はきっとこの話の全貌を覚えていて、その共通の思い出を戸田にも覚えていてほしかったのではないだろうかと思った。思い出させようとする荒川の行動はどこか思わせぶりな態度にも見え、わざとなのに戸田が振り向かないのか、天然でやっているからこそ彼女がモテているのか、そしてこの2人の過去も気になった。
山下と東堂
仕事上では荒い口調でズバズバと捜査を進めていく2人。山下は恋愛については熱い人間であるが、東堂は荒川に告白して涙を流す新沼に「くだらん!」と一蹴するなど、恋愛感情になびかない人物だった。しかし、自身が転落して記憶を失ってからは、沢木に「好き思たら、離したらアカンで!」と熱く語り出す。
記憶喪失になってからの東堂は素直で、健気で、それでいてどこか「食えない」愛らしさがあるキャラクターになる。
かつての彼女は、荒っぽい言葉や行動が目立つカッコいい女性であった。しかしそれは、戦場のような仕事場で自分を律するために、理性の鎧を纏っていたのではないか。記憶を失い、鎧が纏えなくなって現れた素直で健気な彼女こそが、ずっと奥底に隠されていた彼女の本当の「素顔」だったのだと思えてならない。
そうして素直になった東堂は、記憶を戻すことを名目に山下を飲みに誘うが、誘う時の口調に彼女の可憐さが出ている。誘われて満更でもなさそうな山下も、東堂の転落直後に真っ先に向かって懸命に介抱するなど、彼女を大切にしている態度が見てとれる。大切にしているのは1人の後輩としてなのか、1人の人間としてなのかはわからないため、東堂が記憶を失ってからのこの2人の関係性が気になるところである。
気になったセリフやシーン
▼状況説明への興味度合い
新沼は山下との自己紹介が終わるや否や「横山は?」と彼を心配し、助かったことを知ると「良かったぁ…」と安堵する。同じく部屋にいた戸田は山下と新沼が窓辺に移動すると同じく立ち上がり窓を見るが、窓席に1番近い沢木は窓を見る素振りさえもせず、スマホを触り続ける。20年来の友人が転落したというのに全く興味を示さない割に、荒川の元へは無理矢理でも向かう。沢木はつくづく友情より恋愛が大切な人なのだなあと思うし、作中に登場するキザなセリフや動きから、「マドンナを手にすることができた自分」「恋愛している自分」に酔っているのかもしれない。
▼山下「そもそも40歳にもなって、自分でベランダから落ちたって考える方が無理があるでしょ」
山下の言い分はそのとおりなんだけども、現実はこのセリフのとおりなのだ。ただ、現時点では誰もまさかそうだとは知りもしない。
▼新沼の2択
・「秘宝館に1人で行く男と行かない男、どっちと付き合いたいですか?」
・「踏切で止まる人と止まらない人、どっちがいいですか?」
新沼はなぜか会話の中に2択を出してくる。1つ目はあまりに極論だし、1つ目も2つ目もどちらも答えは明白であるが、なぜか改めて問いただしてくる。
▼東堂「入ってくんなや!好きなんか、鬱陶しい!」
新沼が荒川のことを好きだと小野に明かした直後のセリフなので、笑うポイントのようになっているが、学生時代に先生に怒られている人に変な助け舟を出した人が、こんなことを言われてさらに怒られていた気がする。
東堂の関西弁はイントネーションこそおかしくないが「若い女性にしては強くてくどすぎる」という違和感がある。その一方で、このようにわざとらしいようで自然なセリフもあったのが面白い。
▼沢木「本当に…大切な人だから」
荒川のことを本当に大切にしているのであれば、なおさら「イチャイチャ」を動画に残してあげないでほしいなと思う。
沢木は踏切の一旦停止をしなかったことで切符を切られたことに腹を立ててパトカーに石を投げるなど、自分の意向を貫くためにはアブノーマルなことをしてしまう危険な人物だなと思う。
▼恋愛に熱い山下
上記の沢木と荒川を見た途端に「本当に愛しているんですね」と口調が穏やかになり、珍しく「すいませんでした」と素直に謝る。その後も失恋したことを明かした新沼に優しく寄り添い、学生時代に沢木と横山で荒川を取り合っていたことに「遊びで恋愛してたのか」と怒ったりと、山下は冷酷そうに見えて、恋や愛に対してだけは異様に熱いところが面白いなと思った。
山下が冷静な口調で「沢木さんは確実にイチャイチャしていましたよ」と言っていたのもなんか面白かった。「イチャイチャする」は公式な表現なのか。
▼東堂「お前は無駄にイラつかせる態度取んな!」/「なんでムカつく奴しかおらへんねん!」/「なんでこんな奴と仲良くできるん?」
基本的に納得のいくセリフばかりの中で、強く頷きたくなった東堂のセリフシリーズ。
▼メトロンズの女は強い
ベランダから転落する4名の中で唯一落ちずにベランダの縁を掴んでとどまる荒川。
最年少にして関西弁でバシバシ突っ込んでいく東堂。
前作の旦那を引っ張り上げるヤンキーの貴子や、誰よりもエネルギッシュな聖も含め、メトロンズに出演する女性はみんな強くてパワフルだ。クヨクヨした人やお淑やかな人が全く出てこない。
▼山下「人の気持ちがわかんないようじゃ、刑事は務まんねえんだよ」
恋愛が絡んでいるのだと知るまでのあなたは、結構人の気持ちを無視してましたよね…?
▼横山「俺40で子供いんだぜ!?」
同級生だが横山は妻子持ちで、新沼は恋愛経験なし。人生って色々だなと思った。
社会的には横山の方が真っ当に見えるのかもしれないが、この話においては新沼の方がよっぽどまともなのも皮肉だなと思う。
▼横山の演技
「思い出すと痛くなる」という演技はあまりにも下手すぎるが、シラを切る演技は上手いのはなんなんだ。今までも似たようなことをして、慣れているのかもしれない。
▼新沼「全部お前のせいだからな」
自分が犯人だと言い出した新沼のセリフ。「お前のせいで『俺は捕まる』んだよ」と彼は告げるが、それ以外にも『大事になったこと』『20年来の友情関係が崩れたこと』『横山は今後一生罪悪感を背負うこと』など、「お前のせい」に含まれるものが多すぎる。
▼人の悲鳴とトンビの鳴き声
冒頭には人の悲鳴が、最後にはトンビの鳴き声が聞こえる。
最初は横山が「飛び降りた」ことによる横山の自業自得の物語の始まりを示し、最後は横山が『嘘ついた」ことによる新たな自業自得の物語がこの先続いていくのを示しているようだった。
過去作の踏襲と新たな試み
公式に謳ってはいないが、今作は10周年の記念公演だと思っている。
そう思ったのは、今回は女性客演がいることによるメトロンズ作品の新たな一面が見れ、その一方で過去の作品の描写が思い起こされる場面も見られたからである。
女性客演が入ったことで、今作では「恋愛」が作品に登場する。
女性は前作でも出演していて、2組の夫婦像とちょっとした恋愛模様(勢いで離婚し、勢いで付き合い、勢いで別れて夫と復縁)は描かれていたが、どこか非現実でコミカルさのある要素であった。今回はセリフや動きなどがもっと具体的で真剣な描写であり、その試みは沢木と荒川が担っていた。作中にも何度も愛を囁くようなセリフが交えられ、ラストシーンの笑いのない真剣なプロポーズシーンは非常に印象的だった。
その一方で、恋愛シーンを担わなかった残りのメンバーは登場人物の関係性やシーンなどに過去作(特に初期の作品)をなぞるような部分があったように感じた。
一番わかりやすいのは自分で落ちたことを告白した時の横山と新沼の2人が取っ組み合いの喧嘩を始めるシーンで、児玉さんと関町さんの歪み合いは#1「副担任会議」でも見られ、今回のような喧嘩は#3「僕の大好きな最悪な飲み会」でも描かれている。そしてついでに言うと、関町さんが童貞の役を演じるのも#1以来2回目である。
さらに小野と山下のように、赤羽さんと田所さんは#3では先輩・後輩の関係にあり、#2「ミスタースポットライト」では仕事のタッグを組んでいる(どちらも上下関係は今作と逆)。
また池田さんの演じる役が、口数が少なく、若干蚊帳の外の感じがするのも#5「ホームルール」に似ている気がした。
メトロンズは当て書きではないようなので、勿論これも考えすぎなだけなのだろうけれども、節目の公演で過去作が想起できたのは個人的にすごく嬉しかった。
…9000字越え。
我ながら、もっとギュッと縮めることはできないのだろうかと思ってしまうほど、今作も長文になってしまいました。読み返すのも一苦労です。
次回は9月。1年4ヶ月ぶりにメトロンズ6名のみの公演です。
客演や魔法の世界を経てさらにパワーアップした6名だけの舞台が今から楽しみです。無事に行けますように。

